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「家に帰ったらVR」がはかどりそう

リアルに帰ってきたくなくなる──VR内デスクトップ表示が示す未来はユートピア? ディストピア?

2016年08月28日 10時00分更新

文● 広田 稔 編集●飯島恵里子/ASCII.jp

VR業界の動向に日本一詳しいと自負するエヴァンジェリスト「VRおじさん」が、今週のVR界の出来事をお知らせします!

リアルとバーチャル、居心地がいいのはどっち?

 どもども! VRおじさんことPANORAの広田です。VR業界における今週のニュースといえば、ゲーム開発者向けのイベント「CEDEC 2016」が目立っていましたね。PANORAもメディアパートナーとして参加し、いくつか記事を投稿してきましたが、広田的には、バンダイナムコエンターテインメントさんの「『VR ZONE Project i Can』の知見、全部吐き出します!」という講演がヤバかった。これは全人類に読んでほしい知見です。

 そのVR ZONEさんも、新アクティビティーとして、今週26日より「ガンダムVR ダイバ強襲」をスタートさせました。ガンダムを操縦できる……のではなく、アムロが操縦するガンダムの手のひらに乗って、襲いかかるザクから守ってもらうという内容で、メチャ楽しい。

 ほかにもDMM GAMESがVR版の「刀剣乱舞」を9月の東京ゲームショウで展示したり、グリーとアドアーズが提携して渋谷にVRアミューズメント施設の開設を目指すことを発表したりと、なかなか盛りだくさんでした。そんな中から、今週は、VR中のデスクトップ表示について語っていきましょう。


好みのキャラを脇にウェブブラウズできる!

 今週、PANORAに掲載した記事でTwitterでの反響が大きかったものは「 バーチャルメイドと仕事も可能!「カスタムメイド3D2 VRβ」最新パッチでデスクトップ表示を実現」というニュースでした。

 カスタムメイド3D2は、見た目を自分好みにカスタマイズしたメイドといろいろできちゃうというアダルトゲームです。髪の毛、目の色、顔の輪郭……と設定項目がとにかく多く、自分が好きなキャラクターに似せるためにひたすらカスタマイズを突き詰めるという「紳士」も少なくありません。

 そこまで時間をかけたキャラクターなら、やっぱり本当に実在するように感じたい──。もともとカスタムメイドはVR対応に積極的で、Oculus Riftの第2世代開発キット(DK2)に対応していたうえ、今年5月の無償アップデートでさらにOculus Riftの製品版やHTC Viveでも利用可能になりました。「俺の嫁」をバーチャル空間で目の前にして、次元の壁を超えて存在を確かめられるようになったわけですね。

 さらに今回のアップデートで、現実のPCディスプレーなどで見ているデスクトップをミラーリングしてバーチャル空間の中に表示できるようになりました。例えば、VRHMDをかぶったまま、バーチャル空間の部屋でだらだらとウェブを巡回したり、動画や音楽を楽しんだり、Officeアプリで仕事をしたりといったことを実現してくれます(手元のキーボードが見えないのが難点ですが)。

隣で応援してくれたらハードな仕事も乗り切れそう?

「ん、それって意味あるの? リアルでやればいいのでは?」と思ったアナタ。それは、いくらでもカスタマイズできる部屋とメイドがいるのが大きな違いなわけです。巨大なスクリーンを用意して、映画館気分で「俺の嫁」と一緒に動画を見るもよし。癒しの「俺の嫁」に秘書のように隣にいてもらいながら、バリバリ仕事するもよし。リアルと同じことをしながら、リアルとは違った体験を得られるわけです。

 まだメイドのインタラクションが少なく、視線でこちらを見つめてくれるぐらいしか反応してくれませんが、近い未来には「りんな」のような人工知能が発達してそれっぽい返しをしてくれるようになるかもしれません。「学校や仕事から家に帰ったら大体PCの前にいる」という方なら、食事やトイレなどのとき以外はVRHMDつけっぱなしのほうが楽しい生活が送れるかも? 引きこもりがはかどりますね。



VR Readyな周辺機器でさらに帰ってこられなく

 このVR内のデスクトップ表示は、ほかのVRアプリでも活用が注目されていて、マルチモニターに対応した「Virtual Desktop」や、他のユーザーとオンラインで同じ空間に入れる「Bigscreen Beta」など、いくつかリリースされております。SNSサービスの「AltspaceVR」も、バーチャル空間にスクリーンを出現させて、例えばYouTubeなどをみんなで見ながらボイスチャットが可能です。

 すでに活用している人もいて、筆者の周辺ですと、ファミ通にインディーやVRの記事を寄稿されてるミル☆吉村さんが、Virtual Desktopで原稿を執筆したり、Bigscreen BetaでVR内のデスクトップをみながら打ち合わせしたりとアツい感じです。打ち合わせの様子は後日、ファミ通.comの連載「BRZRKの『うるせー洋ゲーこれをやれ(仮)』」で詳しく扱うとのことで要チェック。


 日本国内でも個人開発者のわっふるめーかーさんが「ペンタVR」をリリースしています。VRのお絵描きソフトというと、周囲すべてに絵をかけてしまうHTC Vive向けの「TiltBrush」が有名ですが、こちらは筆ノリするような環境にダイブして、実際のペンタブレットを握って四角いキャンバスにお絵描きできるものになります。

ペンタVR

 実際問題として、例えば、装着感などVRHMDを長時間利用するための課題は残っていますが、もちろん工夫も進んでいて、例えば、HTC Viveではスマホアプリをリリースしていて、通話やテキストメッセージ、カレンダーイベントなどをバーチャル空間に通知してくれます。

 さらにValveやHTCが、サードパーティーに位置トラッキングシステムの「Lighthouse」をロイヤリティーフリーで解放したのも大きいです。マウスやキーボード、ヘッドホン、マグカップなど、PCを操作するアイテムをトラッキングできるようにして、バーチャル空間に出現させられるわけです。四隅にタグを貼れば、自宅の家具をバーチャル空間に……というソリューションも出てくるかもしれません。

 デスクトップ表示に対応したVRアプリが増え、さらにVR Readyな周辺機器がリリースされていけばいくほど、なかなか素敵な未来が待っていそうです。


 ちなみに未来といえば、PANORAでもキッズプレートと共催で、10月23日に「Hack the Future」というイベントを実施いたします。NASAでHoloLens活用を進めているヴィクター・リュオ氏をはじめ、人工知能、AI、VR、ARといった分野で時代の最先端を切り開いている方々に語っていただくアツい内容ですので、ぜひぜひお越しください。



「HTC Vive」を楽しむ著者近影

広田 稔(VRおじさん)

 フリーライター、VRエヴァンジェリスト。パーソナルVRのほか、アップル、niconico、初音ミクなどが専門分野。VRにハマりすぎて360度カメラを使ったVRジャーナリズムを志し、2013年に日本にVRを広めるために専門ウェブメディア「PANORA」を設立。「VRまつり」や「Tokyo VR Meetup」(Tokyo VR Startupsとの共催)などのVR系イベントも手がけている。


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