2016年06月02日18時00分

カシオは普通の腕時計もネットにつなぐ

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 カシオ計算機は「時の記念日」6月10日から、樫尾俊雄発明記念館の時計展示室を公開。世界初のオートカレンダーつき腕時計「カシオトロン」を始めとした時計を展示する。データバンク、G-SHOCKなど歴代の名機が集まっていて楽しい。

 なお記念館ではカシオ最初の製品である世界初の小型純電気式計算機「14-A」を始め、電卓、電子楽器など同社の代表製品を展示中。館内は瀟洒で気持ちいい。

 今年は2004年から展開してきたアナログ腕時計も展示する。

 カシオ計算機 取締役 増田裕一専務は「デジタルの市場をやってアナログ市場を変えようと思っていた。当時いろいろ機能を入れたが、お客さんが必要とする必需機能が見出せなかった」と1980~1990年代のカシオ腕時計をふりかえる。

腕時計と“精度”の歴史

 「操作やデザインも特殊になる。結果的には機能好きの層にとどまって消費者の本流にはいかず、事業は年間700~800億円どまりで伸びなかった」(増田専務)

 現在のスマートウォッチ、フィットネスデバイス、スポーツウォッチについても、事情はデジタル時代のカシオとおなじ「必需機能」ができていない状態ではないかと見る。単純にいえば、まだ趣味の域を出ていないということだ。

 デジタル時代の反省をふまえて、2004年からカシオはアナログ腕時計の高機能化に進んできた。針をゆるやかに動かせるアナログの表現力をもちながら、デジタルの正確性を心臓部に兼ね備えた時計をつくろうということだ。

 なぜ正確性なのか。増田専務は歴史をたどる。

 腕時計の歴史を変えたのは1969年のセイコー・クオーツ時計。スイスが熟練した職人技と切削技術で作りつづけてきた時計の世界に技術革新を起こし、当時のスイスブランドは3分の1まで縮小したとさえいわれた。しかし1982年にシチズンがクオーツの外販を始め、中国製の腕時計が普及してからは、腕時計のコモディティ化が進んだ。逆にスイス高級時計ブランドはグループ化を進め、腕時計世界市場の7割近くはスイスブランドという結果に。日本は差別化が難しくなり、高付加価値化のため「精度」をきわめる方向に進むことになった。

 精度を高めるため使われてきた技術はGPSと電波。電波は日本でいえば福島と北九州にある電波塔から、時計が受信機となって標準時刻の電波を受信するもの。もう1つはGPS。衛星から情報を取得するため世界中どこでも正確な時刻を反映できる。極端に言えばサハラ砂漠のどまんなかでも正確な時刻がわかる仕組みだ。

 しかし電波もGPSも欠点はある。

 電波の場合は電波塔の数が限られるために受信できるエリアが限られる。GPSの場合は空港など屋内で受信ができず、価格も高くなりがちだ。いわゆるGPS電波ハイブリッド腕時計は一般に20万円以上。樹脂製のG-SHOCKでもGPS電波ハイブリッドモデルは実売価格で10万円を超えてしまう。

カシオはスマホを電波塔にした

 そこで現在カシオはスマートフォンを電波塔として使う「Smartphone Link」を開発している。スマホとアナログ腕時計をBluetoothペアリングして、専用アプリ「カシオウォッチプラス」から時刻を腕時計側に送るものだ。

 カシオがつくっているオンラインの「タイムサーバー」に接続、時刻を取得する仕組み。屋内外無関係に使えて、受信エリアもグローバルになる。

 今年5月にはアプリをバージョンアップ、「Accurate Time System」機能を導入。標準時を取得すると同時に、位置情報をもとにタイムゾーンを判定し、サマータイムが実施されているのかを判別、より正確な時刻を表示できるようになった。

 同機能を備えているのは「EDIFICE」シリーズの「EQB-500」(2014年9月)、「EQB-510」(2015年4月)、「ECB-500」(2015年5月)。今秋には女性向けの腕時計「SHEEN」シリーズ「SHB-100」にも同機能を搭載する。EDIFICE、SHEENともに価格は3~4万円程度、中間価格帯におさえられている。

 カシオがいま絵を描いているのはあらゆる腕時計が「直接ネットにつながるようになる」(増田専務)ような未来だ。アナログ時計がカシオのタイムサーバーにつながり、つねに標準時刻を表示する。いわば“ネット時計”をGPS電波ハイブリッドの次の技術として普及させるトップランナーになろうと考えているわけだ。

 現在、腕時計市場はあまりいい状況にない。中国消費の伸び止まりを受け、昨年スイスの腕時計出荷額は経済危機以来5年ぶりとなる前年比マイナスを記録した。今年の腕時計展示会バーゼルワールドでも、昨年大量に発表されたスマートウォッチのような挑戦的なモデルより、人気製品のバリエーション、超複雑機構を備えた機械式時計のように、安定した客が見込める製品が目立っていた。

 スマートフォンでも時刻がわかる今、時計は見栄やTPOの一種で身に着ける社会的なアクセサリーとしての意味合いが大きくなっている。

 今後は数万円台の中間価格帯が薄くなり、格安時計と高級時計の二分化が進むことも考えられるが、それでは面白くない。今回のような技術革新が中間層を盛り上げ、カジュアルな格安時計→とにかく正確で仕事に使える中間価格帯→こだわりが光る高級時計、というグラデーションが生まれたらいいと個人的には思う。

 うっかり長くなった。6月10日、時の日には成城学園前駅へどうぞ。


樫尾俊雄発明記念館
時計展示室一般公開

住所 東京都世田谷区成城4-19-10
公開日 6月10日から一般公開
開館時間 9時30分~16時30分
休館日 土日祝、年末年始、夏季休暇(Webサイトに掲載)
入館料 無料(Webサイトから予約が必要)
http://kashiotoshio.org

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