週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

すごく怖かった……

VRとホラーはなぜ相性がいいのか? 超会議で感じたVRの未来

2016年05月01日 11時30分更新

文● 広田 稔 編集●飯島恵里子/ASCII.jp

VR業界の動向に日本一詳しいと自負するエヴァンジェリスト「VRおじさん」が、今週のVR界の出来事をお知らせします!

VRの祭典でもあったニコニコ超会議2016

 どもども!! VRおじさんこと広田です。4月末週もVR業界はイベント続き! 米国サンノゼでは現地時間の27〜29日にVRイベント「SVVR 2016」、28日は筆者も参加するPANORAが運営しているVR専門の連続セミナー「Tokyo VR Meetup #04」、そして4月29、30日は幕張メッセで「ニコニコ超会議2016」——と目白押しでした。

 その中でホットな話題といえば、超会議のJALブースにてマイクロソフトのARゴーグル「Hololens」が一般に向けて初お披露目されたこと。コンテンツも多く出てきた週で、モバイル向けVRゴーグル「Gear VR」版のサンドボックスゲームの「Minecraft」が登場したり、8月25日に発売されるPS4ソフト「初音ミク -Project DIVA- X HD」が10月発売予定のPlayStation VR対応のアップデートを用意することを明らかにしたりと、話題に事欠きません。そんなVRコンテンツから、超会議で話題になっていたホラーVRについて語っていこうと思います。

今年も大盛況だった超会議の会場


恐怖に立ち向かうしかない

 幕張メッセを貸し切って開催した超会議では、ホール10に「超VRアトラクションズ」というブースを用意し、インディー・企業を問わずVR・ARコンテンツを30種類ほど展示していました。大型筐体を併用して「あちら側」にいる感覚を高めているものも多く、これほどの質と数を備えたAR・VRの展示会はかつてなかったのでは?と思わせるほどの充実ぶりでした。

 しかも、お客さんはコンテンツをつくっている「プロ」ではなく、「VRって何?」という方も含む一般人の方々がほとんど。超会議は間違いなくVRの一般化に一役買っています。一方、あまりに人気すぎて、整理券が配布されるとなると鬼のような長蛇の列ができて一瞬ではけてしまったりと、なかなか難しい面もありましたが……。

 その中で印象的だったのが、ホラーコンテンツでした。なぜかといえば、みんな本気の絶叫をあげるから。VRコンテンツを体験する際は、VRゴーグルで目隠しされてヘッドホンをつけるので、周囲の状況がわからなくなります。周りにいる人の声が聞こえないと、人間は自然と大声で話してしまうもの。

 そんな状態でホラーコンテンツを体験した日には、「キャー!!!!!!!!!!」や「やめてー!!!!!!!!!!」というフルボリュームの絶叫が飛び出すわけです。超会議はステージイベントも入り乱れているため、かなりうるさい環境ですが、それでも通りがかりの人が「なんだ?」とよってきて、自然と人だかりができていることも。

 コンテンツとしては、先週も紹介したバンダイナムコエンターテインメントの「VR ZONE Project i Can」から「ホラー実体験室 脱出病棟Ω」、映画からのスピンアウト作品である「PARANORMAL ACTIVITY」、VR系ベンチャー・DVERSEが手がけた「HOSPITAL」という3つがホラーでした。しかもわりと近い場所に固まっていたため、特定のエリアだけ謎の地獄絵図が展開されることに。筆者は心の中で「絶叫通り」と呼んでいました。

こんな感じ

 なぜこんなにも怖いのかといえば、まずVRゴーグルならではの「映像の中に入った感覚」という特長が挙げられるでしょう。普段我々がいるリアル世界と同じで、視界いっぱいに映像が広がり、頭を動かすと見ているところが自然と切り替わるため、ホラーの世界に本当に自分がいると錯覚してしまいます。ディスプレーの「あちら側」で展開されのではなく、お化け屋敷に入る感覚と近いでしょうか。ただ、大量の血しぶきなど、現実では困難な演出が目の前でバンバン展開されるというのは、リアルでなかなか真似ができないことでしょう。

 そして恐怖に向き合うしかないというシチュエーションです。テレビや映画では、最悪目をつぶって耳を塞げば怖いシーンはやり過ごせますが、VRではヘッドホンをつけているため耳が塞げない! しかも映像作品とは異なり、今回展示していた3作品はプレイヤーが何かアクションを起こさないとストーリーが先に進まない! 鬼か! 1プレーが終わった後には、まるで運動でもしたように、顔や手が汗でぐっしょりとなってしまう人も多いです。

脱出病棟Ωの画像。明らかに何かが起こりそうなシチュエーションで、何かが起こるのです。怖い!!

PARANORMAL ACTIVITY体験中で及び腰の筆者

 そうした「絶叫通り」を取材していたところ、人はホラーVRの怖さを打ち消すために、さまざまな反応をするというのが大変興味深かったです。例えば、怒ってしまう人。コスプレをしたかわいい女の子が、「オラ!いるのはわかってんだ!! 出てこい!!」と大声を張り上げている光景は、なかなかの衝撃でした。怖さのあまり言葉を失って、体だけ怖いシーンで「ビクッ」とする人。冷静になりすぎて無反応な人。かくいう筆者は、「ここ絶対に何か出てくるだろー! キターwwwwww」と延々笑いながらプレーするタイプですね。

 そうした誰かが見せる意外な一面というのは、最高のエンターテイメントでもあります。一人で遊ぶものとして誤解されがちなVRですが、リアルの場における新しいコミュニケーションのきっかけを切り開いてくれる可能性を改めて実感しました。ぜひ機会がありましたら体験してみてください。


広田 稔(VRおじさん)

 フリーライター、VRエヴァンジェリスト。パーソナルVRのほか、アップル、niconico、初音ミクなどが専門分野。VRにハマりすぎて360度カメラを使ったVRジャーナリズムを志し、2013年に日本にVRを広めるために専門ウェブメディア「PANORA」を設立。「VRまつり」や「Tokyo VR Meetup」(Tokyo VR Startupsとの共催)などのVR系イベントも手がけている。


この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事