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ソシャゲ課金マンガプロジェクトの裏側を探る(前編)

「エロゲの太陽」作者がクラウドファンディングでマンガを描く理由

 “美少女ゲーム業界”の裏側を描いたマンガ「エロゲの太陽」(週刊ビッグコミックスピリッツ)の作者、はまむらとしきり氏と村正みかど氏が、クラウドファンディングサイト「FUNDIY(ファンディー)」で新作漫画の募集をしている。新作のタイトルは「スマホゲームの大地」。スマートフォンゲーム(いわゆる“ソシャゲ”)業界の裏側を描くマンガだ。

FUNDIY(ファンディー)で資金調達中の「スマホゲームの大地」

 彼らが募集をスタートしたのは2016年3月16日の正午。ちょうどこの時期、世間ではソシャゲのニュースが話題だったこともあり、新作ソシャゲマンガプロジェクトの情報はいくつかのニュースサイトやブログにも取り上げられ、瞬く間に話題になった。その効果もあり、なんと12時間43分という短時間で目標金額の70万円を達成した。その後も支援者の数は増え続け、第二目標の130万円、第三目標の200万円も達成している。

 募集を行なった「はまむらとしきり氏」と「村正みかど氏」はどんな人物なのだろうか。彼らは「武礼堂」というコンビ名でも活動しており、約20年前からいくつものマンガやイラストの執筆、ゲーム開発を行なってきた。現在ではウォーゲーミングジャパンのオンラインタンクバトル「World of Tanks」とオンライン海戦ストラテジー「World of Warships」のイメージキャラクターも手がけている。

脚本担当のはまむらとしきり氏と作画担当の村正みかど氏

小学館ビッグコミックスピリッツ連載の「エロゲの太陽」は単行本化された

「World of Warships」公式サイトにて連載中の「ぷかぷか艦隊」 (C) Wargaming.net

 漫画家がなぜクラウドファンディングでサポーターの募集を開始したのか、その理由と漫画家という特殊な職業にも迫っていく。

出版社に持ち込むアテがあるのに
クラウドファンディングを始めた理由は

 はまむら氏と村正氏は20年もマンガ業界で仕事をしており、小学館だけでなくKADOKAWAなど、いくつもの出版社にマンガの持ち込みができる。そんな彼らが、なぜ新作マンガをクラウドファンディングでスタートさせたのだろうか。

――クラウドファンディングでマンガを描く決心をした理由は?

 はまむらとしきり(以下、はまむら):小学館で「エロゲの太陽」の連載をしていたとき、ゲーム関連ということでソーシャルゲームについてもたくさん取材していたんです。ソシャゲっておもしろいんですよ。みなさんご存じかと思いますが、今までのゲーム業界にはなかった「課金」や「ガチャ」とか、ネタの宝庫なんです。

――いい意味でも、悪い意味でも話題ですね

 はまむら:そう! 特に“悪い意味で”おもしろい。裏側の黒いトコロを知ってしまうと、僕らの性分でマンガに描きたくなっちゃったんです。でも、そんなマンガは雑誌には持ち込みにくいんです。

――なんとなく予想はつきますが、あえて聞きます。なぜ?

 はまむら:雑誌は売上と広告で成り立っているモノが多いです。当然、今の雑誌にはソシャゲの広告がたくさん掲載されています。そんな雑誌で、ソシャゲの黒い世界のマンガを掲載できるワケがないですよね。

――なるほど

エロゲの太陽 4巻」のこのシーンは、一時期あちこちのウェブサイトに転載された。このころから、はまむら氏は「マンガネタとしてのソシャゲ」に興味を持ちはじめた

 はまむら:おそらく持ち込んだとしても、企画段階でボツになるでしょうね。僕らは売れっ子じゃないから(笑)。きっと世界観の説明をしている最中に、担当編集者に逃げられちゃう。どんなにおもしろいと思っていても、話の展開を聞いてもらえないワケです。

――厳しい世界ですね

 はまむら:でも、僕らはアイデアが思いついちゃったら、もう描くしかない。だったら「きっちり描いてからダメ元で持ち込もう」と思ったんです。そうしたら、どこかの優しい編集者さんが「ここまで描かれちゃったら仕方ない……話だけでも聞いてやるか」って言ってくれるかなぁって。これが僕らのような中堅漫画家の生き残り術です。

はまむら氏はアイデアが浮かぶと、すぐにスマホや愛機「ポメラ」にメモを残すという

――実力行使ですか

 はまむら:それともうひとつ理由があります。「エロゲの太陽」の連載が終わってから、ファンの方から「もうゲーム業界の漫画は描かないの? もっと読ませて」というメッセージをたくさんいただいたんです。期待されちゃったら描くしかない!

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