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ドコモの新料金プラン拡充に見る「計算され尽くした」感

2016年04月19日 14時00分更新

 4月14日、NTTドコモは2年契約の途中でも解約金がいらない「フリーコース」を含む、新料金プランの拡充を発表。長期割引の範囲拡大や増額も相まって、「無意味」と評価された他キャリアを上回りつつ、総務省もユーザーも納得させるプランとして高評価を得ているようです。

ドコモは新たに解約金の設定がない「フリーコース」を設置、最初の2年の契約後に選択可能とした。

 一方、この発表を見て「あまり値下げされた気がしない」と感じたドコモユーザーも多かったのではないでしょうか。おそらく、それが正しい感想だと筆者も考えています。

ドコモが「値下げしなかった」部分に注目

 今回、ドコモは解約金も長期割引もない「フリーコース」の新設にあたり、ユーザー引き留め策として「ずっとドコモ割」の長期割引を強化しています。

 説明会でドコモは、新旧の比較表を示し、「ここを見てほしい」とセルを着色して示しました。

ドコモがアピールしたい部分は、目立つ色で着色されていた。

 逆にドコモが着色しなかった部分、つまりこれまでと変わらない部分に注目すると、以下のようになります。この着色されなかった部分は、ドコモがあまり割引をしたくない部分であることが予想できます。

着色されなかった部分に注目してみた。「シェアパック10」のユーザーは特に変化が少ないことが分かる。

 ドコモ側はユーザーの詳細な比率などは公表していないものの、「15年以上でシェアパック30」といったヘビーユーザーはあまり多くないとしており、どちらかといえば「シェアパック10」や単身者用のデータパックを使っている人が多数を占めるものと考えられます。

割引額の増え方が興味深い「ずっとドコモ割」

 ドコモの長期割引「ずっとドコモ割」は、あらためて見ていくと、実に興味深いプランになっています。

 普通に考えて、長期割引を導入するならば、2年ごとに割引額を増やすようなプランにするはずです。多くのユーザーは2年ごとにやってくる解約金不要のタイミングでMNPや解約を考えるので、そこを割引で引き留めるのが効果的と考えられます。

 しかしドコモの長期割引は、単純な2年ごとの割引ではありません。最初の割引は契約から「5年」後、その次は3年後の「8年」、その次は2年後の「10年」、最後は5年後の「15年」と、等間隔になっていないのです。

なぜか割引額が増えるタイミングは等間隔ではない。

 つまりドコモは何らかの理由により、等間隔にするよりも緩急を付けていくほうが利益になると考えていることが分かります。たとえば8年と10年の間には2年しか間隔がなく、このあたりで転出を考える人が増えるのかもしれません。一方、10年から15年までは5年の間隔があり、この間はほとんど解約がないのかもしれません。

 今回発表した新プランでは、最初の割引が「5年」から「4年」に1年前倒しされ、ちょうど2回目の更新時に割引が始まるようになりました。これもまた、綿密な計算のもとで決定されたのではないかと想像できます。

フリーコースの魅力が色あせる「2年ごとの3000ポイント」

 今回は、新たに2年ごとに3000ポイント分のdポイントを付与する施策も導入されました。このポイントはフリーコースではもらえないので、「ずっとドコモ割コース」で継続する動機付けになりそうです。

「ずっとドコモ割」継続で、2年ごとに3000ポイントを獲得できる。

ただし期間や用途が限定されているなどの条件がある、特殊なdポイントだ。

 他キャリアの場合、MNPの手続きのために電話をしたところ「ポイント付与と引き替えにMNPをやめるよう説得された」という話をよく聞きます。ドコモの3000ポイントは、この引き留めポイントを一律に制度化したような印象を受けます。

 これを単純に「1ポイント=1円」と考えれば、4年目には6000ポイント、6年目には9000ポイントを、累計で得られることになります。フリーコースの特徴であるはずの「9500円の解約金が不要」というメリットは、徐々に薄れていくことになります。

 ドコモは更新期限の前にメールで通知するなど、ユーザーに「選べる自由」があると主張するものの、「確実にドコモを解約する」と決意した人でもない限り、フリーコースを選ぶことはないでしょう。なにも意思表示をしなければドコモ割コースが継続されることもあり、ドコモはフリーコースを選ぶ人の割合が全体の1~2割にとどまるものと見積もっています。

 このようにドコモの新プランは、フリーコースの新設や長期割引の強化によりユーザーや総務省の要求に応えつつも、肝心のドコモの利益はしっかり守るという、計算され尽くしたものであることがわかります。

【15:00】画像の順番が一部入れ替わっておりました。お詫びして訂正いたします。

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