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岐阜で初開催!Pepperから真鍋大度まで登場した音楽&TECHフェスPOSTレポ

2015年10月16日 17時30分更新

 みなさん、こんばんは。週刊アスキー/ASCII.jp編集部の吉田でございます。さて先日の11日日曜日、岐阜県大垣市にあるソフトピアジャパンセンターにて、音楽とテクノロジーを融合した「POST」と呼ばれるフェスが開催されました。

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今回が初開催となるPOST

 「なんで岐阜?」「なんで大垣?」と思われる方も多いかと思いますが、ソフトピアジャパンセンター内には、IAMAS(情報科学芸術大学院大学)があるほか、スタートアップ段階のベンチャー企業にオフィスを安価で貸し出したり、一般人向けの各種セミナーやハッカソンなどを実施していたりと、テクノロジーとの相性がいい場所なんです。

 POSTは、ソフトピアジャパンセンター内のセンタービルとアネックス、センタービルの地下駐車場を使って開催されました。センタービルでは、企業や教育機関によるサービスやソリューションの展示とアーティストのライブ、アネックスでも企業や教育機関によるサービスやソリューションの展示があったほか、クリエーターなどを招いた講演やパネルディスカッションが開催されました。

 また、2つの建物をつなぐ通路脇にフードコートが併設されており、岐阜のB級グルメやおでんやモツ煮などが販売されていました。

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みたらしだんごや焼きそば、唐揚げ、モツ煮、サンドイッチなどが販売されていました
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フードコードで販売されているものは5枚綴りの食券を使って購入します
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こちらはたじみ焼きそば

Pepperや静電インクを使った不思議プロダクトを展示

 展示ブースで気になったのが、(株)デンソーが出展していたドライバー向けのスマホ操作ソリューション。車のハンドル部分に取り付ける小型コントローラーを利用してiPhone上のアプリを操作するというもの。コントローラーに備わっているジョグダイヤルでアプリを切り替えられるほか、タップやホームボタンの機能を割り当てられたボタンを使って操作します。利用できるアプリは、同社が提供しているアプリ「NaviCon」との連携に対応したもので500本程度あるそうです。

 NaviConは、iPhoneなどのスマホで検索して目的地などをカーナビに転送する機能を備えたアプリ。対応カーナビは、同社製はもちろん、アルパインや富士通テン、クラリオンなどの有名メーカー、2013年以降に発売された国内メーカーやアウディ、ポルシェなどの備え付けのものに対応しています。非対応のカーナビであっても、NaviCon上に表示されるマップコードを打ち込むことで連携することが可能です。

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ハンドルの下方に取り付けるデバイス。ドライバーが視線をそらすことなく操作できます

 NaviConでは、地図画像を含んだ2次元バーコード「MapQR」にも対応しています。これは目的地周辺の地図画像の周囲にQRコードを配置したもの。通常のQRコードはスマホなどで読み取るまでなんの情報か判別できませんが、地図画像が入っているMapQRであれば見るだけである程度の情報を把握しやすくなりますね。

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MapQRを利用した例。QRコードの中央に地図画像を含められます

 次に、愛知県犬山市にある博物館明治村に導入されているPepperを取材。これは(株)メイテツコムが手がけているサービスで、Pepperが明治村をナビゲートしてくれるとのこと。ナビゲート自体はPepperの手振りとと音声とタッチパネルで実現しているのですが、Pepperの発音が聞き取りやすく、音声合成をチューニングしていると思われます。

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明治村のナビゲーション用Pepper

 最近ではビーコン系のソリューションで有名な(株)ACCESSでは、大塚製薬(株)のポカリスエットの雑誌広告を展示していました。この雑誌広告はページの一部をレコードの円盤状に切り取れるようになっており、切り取った部分をiPadに載せることで特定の音楽を再生可能にするという不思議なシステム。

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タブレット端末と組み合わせることで音楽を再生できるソリューション。仕組みを知っても不思議です

 この冊子広告には、POSTの運営を手がけた企業の1社である(株)Goccoが特許を持つ「静電インク」と呼ばれる特殊なインクが使われており、このインクがiPadのタッチパネルに反応して、特定の音楽を再生可能になるそうです。

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紙のレコードの裏側に塗布された静電インクとiPadのタッチパネルが反応することでさまざまな動作を実現します

 (株)サンメッセは、ダンボール製VRゴーグル「MilboxTouch」や「詠紙」と呼ばれる折り紙スピーカースタンドを展示していました。MilboxTouchは、導電性インクで側面に印刷されたパターンを触ることで、MilboxTouchに内蔵したスマホを操作できるというシロモノです。

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スマホを収納してVRを実現するダンボール製ゴーグル。側面のパターンとスマホのタッチパネルが連動しており、外側からコントロール可能

 名古屋理研電具(株)は、鍵の開閉を磁力で判別してBluetoothでiPhoneなどに飛ばすというシステムを参考展示していました。この装置は、フリスク程度の小さなケースに収められており、既存の扉に備え付けるだけで利用可能になります。扉の開閉というと最近はスマートロックが話題ですが、担当者によると「スマートロックの方向へ向かうのではなく、シニアや女性の一人暮らしなどの見守りサービスなどで活用できれば」とのことでした。

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Bluetoothを内蔵した小型モジュールを扉に取り付けることで、磁力によって扉の開閉を感知できるデバイス

 (株)トヨタマップマスターは、トヨタ自動車(株)が提供するT-ConnectやLexus G-Linkなどへの導入実績があるマップソリューションを展示。マップと言えば、Googleマップのストリートビューを撮影する車を思い浮かべますが、トヨタマップマスターではGPSや3軸ジャイロ、距離計、広角カメラを搭載した専用の計測車を開発しており、道路周辺の変化や上空遮蔽物の調査、道路や立体駐車場の勾配の計測などを実施しているそうです。

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ストリートビュー車と思いきや、勾配や遮蔽物など道路周囲の状況をチェックする調査車

 AED(自動体外式除細動器)の配置場所と必要とする人、届ける人を結ぶ救命支援システムを開発しているCoaido(株)は、愛知県の尾張旭市で実施中の実証実験で利用しているアプリを展示していました。尾張旭市は、市内すべてのコンビニにAEDが導入されている自治体。10月から始まった実証実験は尾張旭市消防本部と連携したもので、救急車の要請があった場合に、現場近くにあるAEDの場所とその近くに居る人を結びつけ、救急車が到着するまでの一次救命措置を実現するという内容です。11日現在、2件の事案が発生したそうですが、1例目の事案でAEDを現場に運んだのは、なんと尾張旭市の水野市長。実際にはAEDより先に救急車が到着してAEDの出番はなかったそうですが、市内全域のコンビニだけでなく市内の142施設にあるAEDの場所を行政が管理しているため、それを活用するアプリとの連携が容易になるわけですね。

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AEDを必要とする人がいる場所でアプリからSOSを発信すると、付近のAEDを自動的に検索。このアプリをインストールしているユーザーに、AEDの場所と届け先が通知されます

 (株)サイバーエージェント・クラウドファンディングが運営するクラウドファンディング「Makuake」のブースもありました。ワタクシがMakuakeを利用して手に入れた、「雰囲気メガネ」や「Qrio SmartLock」のほか、Ingressやダンボーのバッテリーで有名なcheeroが資金募集中の「Sleepion」も展示されていました。

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Makuakeでは、クラウドファンディングで成功して製品を展示。「雰囲気メガネ」や「Qrio SmartLock」のほか、クラウドファンディング中の「Sleepion」(すでに目標金額達成)もありました

ものづくりの話題が満載のビジネスシンポジウム

 ビジネスシンポジウムでは、「テクノロジー×未来のものづくり」「テクノロジー×エンタテイメント」の2つのセッションを取材しました。

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アネックスビルの5Fホールではビジネスシンポジウムが開催されました

 「テクノロジー×未来のものづくり」では、IAMASで産業文化センター教授を務める小林 茂氏の司会で、ビーサイズ(株)の八木啓太氏、(株)UPQの中澤優子氏とのパネルディスカッションが開催されました。

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左から、ビーサイズ(株)の八木啓太氏、IAMASの産業文化センター教授の小林 茂氏、(株)UPQの中澤優子氏

 八木氏は「ひとりメーカー」として話題となった人物。大手企業を辞めたあとに、製品の企画、デザイン、製造、流通までを一人でこなしたことで知られる人物です。グッドデザイン賞を受賞したLEDライト「STROKE」が有名ですね。「富士フイルムでは医療機器系を開発していたのですが、そのときに業者から持ち込まれた自然光に近い高輝度のLEDライトに出会ったのが、独立起業してSTROKEを開発したきっかけ」とのこと。「業者さんは手術灯用として紹介してくれたのですが、富士フイルムでは手術灯を作っていなかったので採用するには至りませんでしたが、このLEDをなんとか応用できないものかと思った」そうです。

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最初のオフィスは格安のアパート。退職金をつぎ込んで製品を開発していたそうです

 「そこで、週末を利用して鉄パイプを折り曲げてSTROKEのプロトタイプを作ったところ、『これは売れる』と思い、退職金を元手に起業したとのこと。実は初期ロットの100台は、八木氏自身が製造、検査、梱包、発送までを一人で手がけたそうです

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初期ロットの100台は設計から発送まですべて八木氏一人で手がけたそうです
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ビーサイズの第二弾製品は、無線充電規格Qiに対応した充電器。木のぬくもりを感じられる製品です

 UPQの中澤氏も「ぼっち家電」のメーカーとして話題になった人物。最近では、同社が販売したSIMフリースマホが技適を通過していなかったということでも注目されましたね。中澤氏は、大手企業でスマートフォンの商品企画を担当していたそうですが、事業撤退により部署が解散したあとは、退職してカフェを経営していたそうです。「会社を辞めてからも、ものづくりに関わりたいという気持ちはずっと持っていました。昨年秋にカフェの近くで開催されていたハッカソンに参加したことで『自分でもできる』と思い、UPQを立ち上げた」とのこと。

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 会社設立から2カ月で24製品を同時発売という離れ業をやってのけた裏側には、アジアの優秀なOEM、ODM、EMSメーカーの協力が欠かせなかったそうです。「カシオ計算機時代にスマートフォンの製品企画を担当していたときは、厚さ何ミリ、画素数は何万画素など競合他社のスペックを少しでも上回らなければならないという熾烈な競争がありました。私だけでなく周りのエンジニアもそれが不毛であることは理解していましたが、結局は抜け出せなかった」とのこと。「UPQではスペック競争などからは離れた場所で、自分がいいと思った製品を作りたい」とのことでした。「価格が安かったり、デザインがよかったりと、スペックではない部分で人に自慢できるポイントがある製品を世に送り出したい。万人に受ける製品でなくてもよく、10人のうち1人だけにいいと思ってもらえる製品を目標にしています」とのこと。「会社設立2カ月で24製品をリリースしたわけですが、今後も数で勝負というわけではなく、適切なタイミングに適切な製品を送り出したい」と中澤氏。「今後は製品によって、OEM(相手先ブランドによる製造)、ODM(相手先ブランドによる設計・製造)、EMS(自社で設計して別会社に製造を委託)を使い分けていきたい」と語っていました。

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UPQの製品は、販売直後から大手量販店や蔦屋家電で専用スペースに展示されたことで話題となりました
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TVチューナーを省くことで7万5000円という低価格を実現した50インチの4Kテレビ
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スマホの商品企画時代に痛感した無意味なスペック競争から抜け出し、たとえ少数でも自分がいいと思ったプロダクトを愛してくれる消費者を大事にしたいということでした

 「テクノロジー×エンタテイメント」では、(株)ライゾマティクスでディレクターを務める真鍋大度氏が登壇しました。みなさんご存じかと思いますが、Perfumeの世界デビューのプロジェクトに関わった人物。2014年1月に公開されたAppleの「Macの30年」のサイトでも紹介されている有名人です。

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ライゾマティクスでディレクターを務める真鍋大度氏

 真鍋氏は、NHKスペシャル「NEXT WORLD 私たちの未来」で30年後の未来というテーマでサカナクションのライブの映像演出や、SXSWに出演したPerfumeのインタラクティブデザインを担当した際の舞台裏を明かしてくれました。「サカナクションもPerfumeも3Dスキャナーを利用してリアルな映像とバーチャルな映像をシームレスに融合しています。ステージや施設全体など動かないものは事前に3Dスキャナーで精密にスキャンしておき、人物についてはリアルタイムで3Dスキャンを実施しています」とのこと。「通常の映像だと複数台のカメラを切り替えて場面転換が必要ですが、3Dスキャンのデータを利用することで2台のカメラが映し出す映像をシームレスにつなぐことができる」と真鍋氏。ざっくりと解説すると、カメラの映像から3Dスキャンから生成した映像に瞬時に切り替え、生成した映像を別のカメラが映す映像に重ね合わせることで、あたかもカメラがそのまま移動したような効果が得られるようです。

 「舞台などは動かないのでかなりの精度で生成できますが、人物などは動きが読めないのでプリスキャンとリアルタイムスキャンを組み合わせるとどうしても映像が粗くなっていまします」とのこと。実際にサカナクションの映像は、髪型や輪郭はわかるものの、メンバーの画像は粗く表情までは判別できませんでした。しかし、そのあとで見たPerfumeの映像では、のっちもかしゆかもあ~ちゃんもかなり鮮明に写っています。「Perfumeのメンバーの映像を鮮明に生成できるのは、彼女たちがプリスキャン時とリアルタイムスキャン時で表情から手の動きまで寸分違わず同じように動けるから」とのことでした。このシステムを構築した真鍋氏やライゾマティクスのスタッフもスゴイですが、演者であるPerfumeもすごいですね。

 そのほか、3Dスキャンを利用した演出としてはモーフィングがあります。例として、正面方向から撮影したカメラの映像を利用して、Perfumeの3人をそれぞれアップにするという映像を見せてくれました。こちらも実映像と3Dスキャンによる合成なのですが、言われないと気付かないレベルの精度でした。ちなみに3Dスキャンによって収集したデータは、Mayaなどのアプリを利用して仮想空間として構築していくそうです。

 真鍋氏はIAMASの卒業生ということもあってか、なかなか聞けない内容も話してくれました。それは失敗談。ライゾマティクスは、ドローンがメジャーになる前から映像技術の手段の1つとして活用しており、数年前から各種イベントで利用していたそうです。例えば、イベントのセレモニーに複数台のドローンをモニュメントの上空に飛ばし、ドローンの底部に備え付けた鏡と地上から放射する光を巧みに利用した映像演出を紹介してくれました。

 現在のところ複数台のドローンを制御するには、ドローンの飛行領域の周囲に取り付けた24台のカメラでドローンの位置をリアルタイムで捕捉し、そのデータを基にコンピューターで制御する手法が採られています。真鍋氏は、このシステムを作り上げていく際に発生したトラブルについても映像を交えて紹介してくれました。空中で浮遊していた複数のドローンがネットワークの不調により一斉に墜落する様子や、弧を描いていたドローンが制御を失って落下する様子など、複数台のドローンを精密に制御するのはかなりのハードワークだとわかりました。2014年の紅白歌合戦でのPerfumeのパフォーマンスにもドローンが使われましたが、NHKホールのような広い場所で生放送でドローンを飛ばして制御するのはかなり大変だった思われます。

 ドローンを使った映像演出は、Nosaj Thingの「Cold Stares」という曲のPVにも使われています。真鍋氏によると、こういった映像演出のアイデアのプロトタイプを作っても、それにマッチする曲や演者に出会わないとなかなか日の目を見ないそうで、Cold Staresで使われた手法も長らく温めてきたものの1つだったとのこと。

 このほかにも、ドローンを使った映像演出のテスト動画などが、YouTubeの真鍋氏のチャンネルで公開されていますので、興味のある方はチェックしてみてください。

 ビジネスシンポジウムではほかにも、「テクノロジーと音楽の未来」についてのパネルディスカッション、「テクノロジー×音(楽)」についての講演なども開催されました。

DE DE MOUSE+山口崇司など5組のミニライブを開催

 ミュージックフェイティバルは、センタービルの3Fホールで開催されました。篠崎愛さんから始まり、SILVAさん、P.O.P、中塚武さん、Q'ulle、DE DE MOUSEさん+山口崇司さんの順に素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。

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センタービルの3Fのホールで開催された音楽フェス (C)POST
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3番手に登場したP.O.Pは、双子のMCとギター、フルート、キーボード、ドラムで構成されるヒップホップバンド (C)POST
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中塚武さん(写真左)は、iTunes Jazzチャートで4作連続1位を獲得したアーティスト (C)POST
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DE DE MOUSEさん(写真左)+山口崇司さん(写真右)のユニット (C)POST

地下駐車場がクラブ状態に!

 20時45分からは、センタービルの地下にある広大な駐車場でアフターパーティーが開催されました。関西を拠点とするDJやVJのほか、ビジネスシンポジウムで講演した真鍋氏が率いるライゾマティクスリサーチによるパフォーマンスもありました。終わったのは朝6時。

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(C)POST
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真鍋氏が率いるライゾマティクスリサーチによるパフォーマンス
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各組40分程度のパフォーマンスで朝6時まで地下駐車場がクラブ状態となりました

 「岐阜は遠い」と思うかもしれませんが、名古屋駅から大垣駅まではJRの快速電車で30分程度ですし、高速を利用すれば大阪から大垣までは車で2時間程度と、近畿圏や東海圏からの交通アクセスはいいです。今後、第2回、第3回と続けて、大垣から新しいテクノロジーやアイデアをどんどん発信していってほしいですね。

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ソフトピアジャパンセンター

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