2015年08月04日07時30分

フェイスブックとツイッターがニュース媒体の地位を争う理由:仮想報道

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仮想報道

電子版週刊アスキーにて好評連載中の「仮想報道」よりバックナンバーをピックアップしてお届けします。アメリカの人気サイト「バズフィード」についてお届けした第2回目はこちらから。※一部内容は連載当時のままです。

Vol.856 アメリカの人気サイト「バズフィード」の強みと弱点

(週刊アスキー2015/1/6.13合併号 No.1010より)

バズフィードのアクセスの44%はフェイスブックしだい

 アメリカのニュースサイト「バズフィード」は月間1億5000万人が利用するまでになっていてアプリの人気度も高いものの、直接アクセスしてくる人の割合は少ない。シミュラーウェブのデータによれば、ソーシャルメディアからの流入が約半分で、そのうちフェイスブックからのアクセスが84パーセントにもなっている。

 バズフィードの強みも弱点もそこにある。

 これまでのサイトは、いかに利用者を抱えこむかに苦心惨憺していた。ヤフーなどもいろいろなサービスを次々と立ち上げて、「このサイトで1日過ごせますよ」というぐあいにしていた。

 しかし、バズフィードの場合は、サイト内に読者をとどめおく必要はない。

「読者はミツバチのようなものだ」とニューヨークタイムズは書いている。読者は、興味のおもむくままにネットを飛びまわる。しかしながら、バズフィードの記事はソーシャルな機能によってコンテンツが拡散するので、読者とまた出会い、読者を呼び戻すことができる。ソーシャルメディアに強いニュースメディアは、ネット全体を自分たちのサイトへのアクセスポイントとなる。

 けれども、ソーシャルメディア、とくにフェイスブックのご機嫌をそこねたり、あるいはフェイスブックのアルゴリズムが変わってバズフィードの記事がフェイスブックに現れなくなったりすれば、この勝利の方程式は崩れ去る。

 冒頭のアクセス数から計算すると、フェイスブックからのアクセスがまったくなくなってしまえばバズフィードは44パーセントものアクセスが消えてなくなってしまうことになる。

 とはいえ、少なくともいまのところそんな心配はいらないようだ。フェイスブックは、ニュース記事を優遇しているからだ。

仮想報道
フェイスブックからバズフィード・ネットワークへのアクセスは急拡大している。グラフはバズフィードの記事「フェイスブックは各サイトへのアクセスを新たに急増させている(Facebook drives massive newsurge of traffic to publishers)」より。
上記の記事へのアクセスは/こちら。

ニュース媒体の地位を争うフェイスブックとツイッター

 ニュース記事の最大の発信元の新聞社は読者も広告収入も減らして逆境だが、ニュースは、幅広い読者を惹きつけるにはもってこいのコンテンツだ。多くのネット企業はそのことに気づいている。

 おそらくもっとも早くに気がついて、サイトのありようを変えたのはヤフーだろう。ヤフーのトップページは、誕生からしばらくはサイトのカテゴリー一覧が並んでいたが、やがてニュースをトップページ真ん中のもっとも目立つところに据えた。ニュースは時々刻々変化し、つねに目新しいコンテンツになるから、読者に繰り返しアクセスしてもらうのにいい。

 フェイスブックもまた、ニュースの重要性を感じていた。昨年11月フェイスブックは、「ニュースとパブリッシング・サイトのアクセスを増やす多くの方法」と題した文章のなかで、「人びとは、友だちといまどうしているかをおしゃべりするだけではなくて、ニュースを読んだり自分たちの周りで世界に何が起きているかを知るためにフェイスブックに来ている」と書いていた。フェイスブックは、メディアサイト向けの特設ページをつくるなど、メディアを優遇する試みも何年も前からやっている。利用者に重要なニュース源として見てもらい、使ってもらおうとツイッターと競っているからだ。

 ツイッターにもまた、自分たちはいま何が起こっているかを伝えるニュースメディアだと思っている幹部たちがいた。この二大ソーシャルメディアは、ネットのメジャーなニュース媒体の地位をめぐってますます激しく争うようになってきている。

アクセスデータがほしかったバズフィード

 バズフィードは、ハフィントンポストやスレートなど200のサイトとつい先ごろまでネットワークを組んでいた。「ウェブでホットなもの」というタイトルのもと、ネットワーク参加サイトの記事にトップページからリンクを張って利用者を送りこむ一方、その見返りとして、それらのサイトからアクセスデータをもらっていた。バズフィードは、ネットの口コミの研究を目的として2006年に生まれたが、そうやってデータを集めて研究していたわけだ。

 バズフィードが示しているデータによれば、昨年フェイスブックからネットワーク・サイトへのアクセスは急増した。昨年初めまでは月間7000万アクセスぐらいだったのが8月には1億を超え、11月には1億5100万になった。1年たらずのうちに倍増した。「ここ何か月かでフェイスブックはかつてないレベルのアクセスをインターネット中のサイトに送りこんだ。劇的で想定外のそうしたアクセスの増加は、バラエティに富んだコンテンツを提供している多様なサイトに影響をあたえている」。昨年11月バズフィードはこう書いている。

 バズフィード自身が、フェイスブックのそうした変化の恩恵をもっとも受けたサイトのひとつだった。フェイスブックが昨年11月の記事で明かしているところによれば、メディアサイトへのアクセスは1年で170パーセント増加したが、バズフィードへのアクセスはなんと855パーセントも増えたという。

 これだけアクセスが増えれば、アクセスデータをほかのサイトからもらわなくてもいいということか、バズフィードは、ネットワーク参加社に次のような挨拶メールを送って袂を分かとうとしていると米メディアが5月に伝えている。「ネットワークはとても役に立つものだったが、ビジネスの様子が変わった。バズフィードは成長してスタッフも多くなり、グローバルなニュースとエンターテイメントの企業になって状況が変わった」。バズフィードは動画に焦点をあてるので動画に力を入れている新しいパートナーと組むことにするとのことだった。

 偉くなって、これまでの恋人を捨てて新しい恋人に乗り換える男のようなセリフだが、バズフィードはもはや十分に大きくなり、従来の提携相手からデータ提供を受けるメリットはなくなった、ということなのだろう。

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クォーツのスクープ記事「バズフィードは動画推進の前にアクセスを送りこむネットワークとの提携をやめようとしている(BuzzFeed is shutting down its trafficpartner network ahead of a video push)」。
上記の記事へのアクセスは/こちら。

バズフィードは「エネルギーと脳みその無駄遣い」?

 バズフィードのライバル、ゴーカー・メディアの創立者ニック・デントンは、バズフィードも創立者のペレッティも好きではないようだ。「ペレッティは、フェイスブックのエコシステムをほかの誰よりもうまく操って恥知らずにバイラルの物語を追いかけている」と批判している。何でそんなにペレッティが嫌いなのかと尋ねたインタビュアーにデントンは、「ペレッティが嫌いなのではなくて、彼が完全に最適化しているインターネット・メディアのいまの段階がイヤなのだ」と興味深いことを言っている。

 ペレッティよりも年上で、ネット企業家としても先輩のデントンが、絶好調の若いライバルにやっかんでいるところもあるのかもしれないが、ペレッティのしていることは「エネルギーと脳みその無駄遣い」だと言う。デントンは、バズフィードにあふれている「○○の7つの方法」などといった箇条書きの記事やクイズよりも、ネットメディアにはもっと偉大な目標があるはずだとも言っている。

 もちろんペレッティも、いつまでもペットやクイズのサイトでいいと思っているわけではない。前回書いたように、ピューリッツァ賞受賞者のジャーナリストを雇って調査報道に乗り出す一方で、映像会社を作ってハリウッドとも提携し、長編の映像作品まで作ろうとしている。

 口コミに乗るように、バズフィードの軽さはそのままで、独自コンテンツを送り出し始めている。

 次回は、ペレッティがバイラルメディアを具体的にどう発展させてきたのかについて書いてみよう。

Afterword
上の「ニュースとパブリッシング・サイトのアクセスを増やす多くの方法」という記事でフェイスブックが書いているアクセスを増やす方法は、記事の本数を増やすというミもフタもないものだ。フェイスブックの記事の数を57パーセント増にしたところ、各サイトへのアクセスは89パーセント増え、1記事あたりの「いいね!」の数は10パーセント増、フォローも49パーセント増えたという。

8月4日(火)発売の週刊アスキー最新号では、「脳科学プロジェクト創立者の野心」についてレポートしています。電子版の購入方法はこちらから

●関連サイト
歌田明弘の『地球村の事件簿』

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