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スマホやPCゲームの闇“チート”行為!サイバー犯罪が減らない理由とは

2015年07月21日 19時30分更新

 7月17日(金)に『サドンアタック』や『メイプルストーリー』などのオンラインゲームを運営するネクソンに対して神奈川県警よりチートツール撲滅キャンペーンに対する感謝状が贈呈されました。

サイバー犯罪

 ネクソンは、IT専門学校でゲームセキュリティーに関しての講座を実施したり神奈川県警と協力して2014年12月8日から18日まで『不正行為対策強化キャンペーン』を実施するなどゲーム内で不正行為をする“チート行為”の減少に努めたことが感謝状が贈られた理由です。

サイバー犯罪

チート行為とは何なのか

 “チート”とは何なのか?よくゲームをプレイしている人、特にオンラインゲームをしている人はよく耳にするかもしれませんが、一般的に広く知られている言葉とはいい難いです。

 チートとは、もとのソフトが意図していない動作をさせる行為のことです。具体的な例を挙げると、とあるRPGで本来の初期レベルは1レベルのはずなのに、ゲーム開始時からレベルマックスの状態で開始されるよう恣意的にゲームデータを改ざんするといったものがあります。

 オンラインゲームは、複数の人が同時にプレイしているので、その中で、ひとりだけ“最強”にしてしまってはゲームバランスが崩れ、普通にプレイしている人の快適にゲームをプレイできなくなってしまう可能性があります。実際に、2014年6月にネクソンが運営するFPS『サドンアタック』内でチートツールを使い不正行為をしていた少年3人が電子計算機損壊等業務妨害容疑で書類送検されています。

 最近では、2015年6月にスマホゲーム『パズル&ドラゴンズ』のチートツールをオークションなどで販売した人物が、著作権法違反の容疑で逮捕されています。『パズドラ』を提供するガンホーは、「このような不正ツールを実際に使う行為も、ゲーム内のみの措置にとどまらず、本件同様、「著作権法違反」の罪に問われる可能性があります」と公式サイトに明記しました。

 このようなゲームの著作権法違反はオンラインゲームに限ったことではありません。ただし、ネットに接続していないオフラインゲームでのチートは、違法という判例(『ときめきメモリアル』メモリーカード事件)が出ている一方で、棄却された判例(『三国志III』事件)もあるので、違法かどうかの線引きは難しいです。

 ただ、本来あるべきゲームを改変することは褒められたことではないので、チートに手を出さないようにしましょう。(例外として、ゲーム製作者がチートツールを配布することもあります。)

増え続けるサイバー犯罪

 警視庁が発表した『平成26年中のサイバー空間をめぐる脅威の情勢について』によれば、サイバー犯罪に関する相談件数は平成25年の8万4863件を大きく上回り11万8100件となっています。

サイバー犯罪
『平成26年中のサイバー空間をめぐる脅威の情勢について』より。

 もちろん、上記のすべてがオンラインゲームやスマホゲームに関したものではありませんが、少なくない件数が相談されています。

サイバー犯罪
『平成26年中のサイバー空間をめぐる脅威の情勢について』より。

 この表の“不正アクセス等、コンピュータ・ウィルスに関する相談”がオンラインゲームに関する相談が多く、アカウントを乗っ取られ、ゲーム内のアイテムを使用されるなどケースなどが報告されています。

 また、平成26年のサイバー犯罪の検挙件数は、平成25年度より208件少ない7905件でしたが、平成22年から検挙数が増加傾向にあるのは間違いありません。

サイバー犯罪
『平成26年中のサイバー空間をめぐる脅威の情勢について』より。

どうしてサイバー犯罪は多くなっているのか

 神奈川県警察本部サイバー犯罪対策課の信太正樹警部補と、『サドンアタック』の運営をしているネクソンの加藤友秀氏にサイバー犯罪の現状について聞きました。

―サイバー犯罪は増えているのでしょうか。

信太警部補 ちょっと前まではオンラインゲームをやる人はそれほど多くはなかったですが、スマホでゲームをプレイするようになって、多くの人がゲームをするようになりました。また、海外からの攻撃も毎日ありますので、すべてのサイバー犯罪を数えようとすると、とてつもない数になります。減ることはないでしょうね。

―6月にあった『パズドラ』の場合は著作権法違反でしたが、2014年の『サドンアタック』では電子計算機損壊等業務妨害での立件でした。なぜ違ってきたのでしょうか。

信太警部補 ひとくくりに“チート”といってもプログラムが違います。チートツールを検証して、どの法律が適応されるのかを各調査員が判断したところバラバラになりました。今後、プログラムを破壊するウイルスのようなもの出てくれば、ウイルス作成罪になることもあります。

―ゲームで不正行為をする人と、他のサイバー犯罪では容疑者の年代に違いはありますか。

加藤氏 基本的には学生など若い人が多いですが、ゲームのユーザー層によるところが大きいです。『サドンアタック』の場合だと中学生から大学生が多くなります。他社の事例では20代や30代の人もいます。

―『サドンアタック』で立件したあとは、不正行為をする人は減ったのでしょうか。

加藤氏 立件する前は、不正行為でのアカウント停止をする件数は100件ほどありましたが、立件されてからチートをする人は減りました。しかし、3ヵ月ほどしたらまたチートが増え始めました。立件するだけではダメだと思い、2014年末から『不正行為対策強化キャンペーン』を行ない、アカウント停止は月に数件にまで減りました。

―チートでの損害額はどれくらいになるのでしょうか。

加藤氏 具体的な額は言えませんが、不正行為防止プログラムを導入したり、ゲーム内巡回をするにも人件費がかかるので結構な額になります。

―今後の取り組みや展開は何かありますでしょうか。

加藤氏 チート行為でいちばん被害を受けているのは、まっとうにプレイしているユーザーなので、そういったプレイヤーにいかに快適にプレイしてもらうかを考えてチート対策に取り組んでいきたいです。

信太警部補 今回は1社との取り組みでしたが、今後は業界全体でチートだけじゃなく不正行為に対して協力して対策を取っていければと思います。

 ちなみに、神奈川県警では7月27日から8月31日までサイバー犯罪捜査官を2人程度募集するとのことです。詳しくはこちら

 スマホゲームの登場でオンラインゲームユーザーは爆発的に増えた一方で、不正行為に及ぶ人も増えています。データを改ざんすることは犯罪に問われる可能性があり、「自分だけは大丈夫」ということはありません。

 自分自身を犯罪者にせず、誰もが快適にゲームをプレイするたもにも、不正なゲームプレイは絶対にしないという強い意志をもちましょう!

■関連サイト
平成26年中のサイバー空間をめぐる脅威の情勢について(警視庁)
ネクソン
神奈川県警察

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