2015年06月13日16時00分

城ドラ:アソビズム森山氏だからこそできる“ガチャ無し”への挑戦(中編):召喚★アプリ神

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 話題のスマホゲームのクリエイターとスクウェア・エニックス安藤武博氏が対談する連載『召喚★アプリ神(ゴッド)』。週刊アスキー本誌で掲載しきれなかったインタビュー内容を3回に分けて掲載します。

 第11回はアソビズム『城とドラゴン』の森山尋さんを召喚!

 なお、第12回のゲストはミクシィ『モンスターストライク』の木村弘毅さん。追って掲載いたしますのでそちらもよろしくお願いします。

『城とドラゴン』

城とドラゴン:召喚★アプリ神
↑アソビズム森山尋氏(右)、スクウェア・エニックス安藤武博氏(左)。

■“UIの感触”や“ドラクエのボス” ゲームにおける感情のデザインの奥深さ
安藤:城ドラでいいなとしみじみ思うのは、UIが持つ独特の魅力です。たとえばタップした時にお金がビヨヨンって跳ねてキューっと集まるところとか、運営からのお知らせが届くところとか、小さいけれど気になるし触りたくなる。そして触ると気持ちいい。画面のデザインや動き、手触りなどにいろんな調整がされているなと思うんです。

森山:先ほどもお話しましたけど、僕は以前任天堂さんとお仕事をしていたことがありまして、いろいろ教えていただきましたし、アドバイスもいただきました。任天堂さんはUIに関して、手触りとか、映像に触れるという言い方をされますよね。テレビの中にあるものは実際には触れませんが、コントローラーを持ってマリオを動かせば、画面の中のものに触れているような気分になれる。

安藤:そういう感覚になりますよね。

森山:NINTENDO64の『スーパーマリオ64』などは、自分が画面の中にいる気分になるくらい操作と感覚が一体化してしまう。その技術には並々ならぬプライドとノウハウがあるでしょうし、アドバイスをいただいたこともあって、やっぱり僕のゲームにも出ますね。

安藤:城ドラではどのような部分に現れていますか?

森山:画面をスライドした時にちょっと慣性がつくところは、ものすごい時間をかけて調整しました。ピタっと止まるのは気持ち悪いですし、行き過ぎてもイヤですよね。実は今回、その部分を誰も誉めていないんです。ということは誰もイヤだと思っていないんだろうなと。

安藤:確かに。自然にスライドするので、気になったことがないですね。

森山:もっと早く動けばとか、もっと待ってほしいという意見もほとんどいただいていないので、わりと思い通りに動かせていただけているんだろうと思います。それと同じように、細かい調整をしているところもたくさんあります。

安藤:やはり相当気を使ってつくられているのですね。

森山:あと、牧場経営のゲームをやっているスタッフがいるんですが、画面をなでて収穫するのが気持ちいいと言うんです。その気持ちは分かりますが、大事なのはタッチすることやなでることではなくて、触ったときにどういうふうに感じるか、その瞬間だと思うんです。

安藤:気持ちのいい感触が表現できれば、ほかの操作でもいいということですね。

森山:画面をなでて収穫するゲームが全部面白いかといったら、そうとも言い切れないですよね。面白くなればタッチでもいいと思うし、回りのものもすべて含めて考えて、どこまでユーザーが楽しい気持ちになって、どういう気持ちで押しているのかという感情の動き、感情導線というかモチベーションの導線は、すごく頑張って考えています。

安藤:今のお話を聞いて思い出したんですけど、『ドラゴンクエスト(以下、ドラクエ)』で、コントローラーのボタンを強く押せば押すほど「かいしんのいちげき」が出やすくなると思い込んでいた人がいるんですよ。

森山:いいですね(笑)、そういうお話大好きです。

安藤:強く押したからといって「かいしんのいちげき」が出やすくなることはないんですけど、それが映像に触る醍醐味であり、UIにおける感情の動きのおもしろいところですよね。

森山:僕もドラクエで全滅寸前の時に敵と出会ったら、戦闘の音楽の「テッテレレーテッテッテッテッレレレー♪」の「レー♪」で必ず逃げるコマンドを押していましたからね。音楽に合わせて押せば成功するんじゃないかと(笑)。そういう体験をさせてくれるゲームはやっぱり面白いですよね。

安藤:もうひとつ、以前ゲームにおける体験や感情のデザインについて堀井雄二さんとお話したことがあるんです。ラスボスや強いモンスターのAIのデザインは、強いボスになればなるほどAIをユルくするんだそうです。

森山:そうなんですね。

安藤:ボスはモンスターの頂点ですから、攻撃力も魔力も高い。でもそういう敵と戦ってやられそうになったときに、ボスが全然見当違いの攻撃をしたり、MPがないのに呪文を唱えたりすると、プレイヤーは「この1ターン耐えた!」と思うし、「俺ってスゴイ!」と思うんですね。ラスボスはめちゃ強いという前提が脳内にあるから、ユルいとは思わない。しめた、ラッキー、チャンス! と思う仕組みになっている。そのお話を聞いたときに、ゲームデザインの奥深さを知りました。強くなればなるほど敵のAIも賢くなると思いがちですが、実は違うんですね。ユーザーの感情の動きを考えると、ゲームデザインって本当に面白いし、奥が深いですよね。

城ドラ
↑細かいUIのこだわりが詰まった、城下町。“バトルに勝利してゲーム内通貨キーンをゲット”→“城下町でゲットしたキーンを使って施設を強化”→“強化した施設で研究開発をしてより強いキャラを育成する”→“バトルに勝利して~”というサイクルで遊んでいく。

■“ガチャ無し”への挑戦と森山氏を支えるもの
安藤:スマホが登場してからは、ビジネスモデルもクリエイターがデザインする時代になっていると僕は思うんです。今回城ドラにはガチャありませんが、森山さんご自身でビジネスモデルとゲームデザインを全部考えられているのでしょうか?

森山:そうですね。ガチャというビジネスモデルがあったから、今ゲームをつくっている人たちはゲームデザインに集中できたし、『パズル&ドラゴンズ』や『モンスターストライク』などのいいゲームが出てきたと思うんです。城ドラのようなガチャがないゲームはまだ市民権を得ていないので、ガチャよりお金がかからなかったとしてもあれこれ言われる。でも新しい部分を開拓していかないと、たとえば5年後にガチャのシステムだけで新しいものをつくれるかといったら難しいと思うんです。

安藤:確かに、今はビジネスモデルの伸びしろがなくて、ゲームの中身でどうやって勝負するかしか考えられないし、なかなか差別化できませんよね。

森山:売り切りにしろガチャにしろ、ビジネスモデルがあってはじめてゲームがつくれるわけです。ガチャ以外の新しいビジネスモデルができれば、有能な人たちがいろんなゲームデザインをその上に載せていける。そうなればもっとジャンルが増えて、もっとユーザーの選択肢も広がりますよね。

安藤:新しいビジネスモデルへのチャレンジは、かなり勇気がいると思うんです。その時、森山さんの支えになるものってなんでしょうか?

森山:スタッフに理解があることでしょうか。城ドラでガチャをやめようと言った時も、全員賛成してくれました。失敗したらボーナスが出ないかもしれないよと言っても、やってみたいと言ってくれたんです。あとうちは上場していないので、売り上げの目標がないんです。

安藤:そうか、そうですよね。

森山:代表取締役の大手も何も言わないので、完全に新しいものは僕らにはつくれないかもしれないですけど、挑戦は自由にできますね。

安藤:売り上げを上げて、株主に還元するという目的がない。

森山:だからうちのゲームづくりは「これ楽しいじゃん?」でいいんですよ。仕様書もないですし、あっても箇条書きみたいなもので、スタッフに説明する時も「だってこれこれで楽しいじゃん?」と。それ以上に強いことはないじゃないですか。

安藤:ないですね。

森山:これがこうなるからユーザーがこう動いて面白い、と理屈で言われてもわからない。こうなると悔しいじゃん、楽しいじゃんという、そこに理由はないですよね。

安藤:森山さんとお話ししていると、任天堂の宮本茂さんやドラクエの堀井雄二さんに近いものを感じます。宮本さんが、毎日お風呂に入った後に体重を計るのが楽しいな、と思って『Wii Fit』をつくってしまう。面白いと思うものを素直に、子供でも楽しさがわかるくらい本能的に、純粋に追求してつくることがやっぱり大切ですよね。

城とドラゴン:召喚★アプリ神
↑城ドラにはガチャがなく、ユーザーはほぼ同じキャラで戦うことになり、腕と育成の努力が勝敗を決めるゲームとなった。課金アイテムの“ルビー”は開発時間の短縮などに使用する。

■斬新なゲームデザインの秘密とアドリブ制作の面白さ
安藤:とはいっても、そういうつくり方ってなかなか真似できることではないと思うんです。森山さんはそういう感覚をどうやって身につけたんですか?

森山:うちは本当にシンプルなんですよ。たとえば僕は城ドラをつくっている時に、これがラインディフェンスだと知らなかったんです。数回やったことがあるレベルで、ジャンルすらよく知らないし、ストラテジーという言葉も「それなに?」と聞くような状態でした。僕は最近のゲームはほとんどやらなくて、アクションとシミュレーションとRPGとシューティングしかわからない時代の人なんです。だから実は、何も知らないでゲームをつくっている。ほかのゲームを知らないから、「これとこれを組み合わせれば面白い」という考えもしないんですよ。

安藤:そうなんですね。

森山:素人集団がつくっている感覚に近いかもしれませんね。『ドラゴンポーカー』のときは、MMOをつくった人によく「森山さん、MMOをやっていますね」とか「オンラインの面白さがある」なんて言われました。でも僕は、MMOをほとんどやったことがないんです。

安藤:よくギルドバトルの面白さを成分抽出したなと、僕も思っていました。

森山:でもやっていないんですよ、本当に。だから「今までにないから面白いに違いない」と思って、いろんなものをつくっているんです。ほかのものを見てつくらないし、横においてつくることもしないので、人とはちょっと違うものに勝手になっているんです。 閉ざしてつくって異形のものができて、それが受け入れられるかどうかというのは、また別の話ですけどね。

安藤:森山作品ではお馴染みのキャラクターデザイナーである、竹内啓太さんとのやりとりももはや“あうん”の呼吸なのかなと思っているんです。彼がつくり出すキャラクターの世界観や動きは、どういうやりとりをしてつくっているんですか?

森山:竹内さんだけではなく、今までのメインデザイナーとの組み方は全部同じです。最初の数体の設定とか、ちょっとしたイメージや攻撃法だけお話しして、基本のデザインが固まるまではちょこちょこを言い合いながらやります。デザインが上がって、「これはキタな」というものになったら、もうオールフリーです。

安藤:任せてしまうんですね。面白いですよね。

森山:僕はわりとアドリブ制作が好きなんですよ。自分でも「このゲームどうなるんだろう?」と思いながら、みんなアドリブでここまでつくってきたからこういうふうにしたら面白いなとか。

安藤:自分の想像を超えていくところに面白さがありますよね。

森山:最終的に目指すゲーム像はしっかりあって、軸をキッチリして最後までブラさずにいれば、実は遊べる部分ってすごくあるんです。軸がわからない上にブレたりすると、「軸はどこだっけ?」ということになりますよね。

安藤:その軸の部分や最初の企画は、まず紙に起こすんですか? それとも速攻つくってしまうんですか?

森山:皆さんとあまり変わらないと思いますよ。フロとかトイレとか散歩をしているときに、ふっとひとつ映像が浮かんで、全体の構成がなんとなくできてくるんです。

安藤:宮崎駿さんみたいですね。

森山:でもみんなそうだと思いますよ。たまに浮かぶそういうものを、いけると思えるかどうかですよね。いけると思ったら翌日にプログラマーをひとり抑えてプロトタイプを作ります。ただ、本当にいけるものってなかなかないんですよね。翌日にクソゲーだと思うことも多いし、特に夜中は危険です。

安藤:夜中に書いたラブレターみたいなものですね(笑)。

森山:夜中は危険です(笑)。会社を歩いているときにふっと思いつくこともありますし、手書きで1ページくらいの企画書を書くこともあります。そうしたらプログラマーとかなりディスカッションして、大事な部分と最終的にやりたいことをひたすら話して、モックを1週間から1ヵ月でつくります。
 城ドラもバトルに関しては、たぶん1ヵ月ぐらいで試作ができて、それでも面白かったです。あとは毎日、長く遊んでもらえるものにする作業が大変なんですけど、「ここはいける」という大事な部分のクリエイトはだいたい1週間ぐらいですね。

※この対談は2015年3月に行なわれたものです。

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