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無用なトラブル回避のためドローンをテイクオフする前に知っておきたい21のこと by遠藤諭

2015年05月13日 06時00分更新

文● 遠藤諭(角川アスキー総合研究所) 編集●ゆうこば

 NHK総合で復活したブラタモリが、さりげなくドローンを使っていてやっぱりいいなと思います。など、何かと話題のドローン(UAV、UAS=無人機)ですが、「始めてみたいな」とか「仕事で使えるんじゃないか?」とまじめに検討している人も多いはず。昨年12月の“はじめての“ドローン”買い方ガイド by遠藤諭”という記事もたくさん読んでいただいたんですが、「いざ始めるとなると……」という声もあるようです。

 私も2010年にAR.Droneにはじめて触れたときには、いきなり天井にスリスリしてしまい焦ったのを覚えています。あれから4年して生まれ変わったというほど性能が向上したドローンですが、なにしろ手を離れて空中に浮かぶものですからね。ということで、“テイクオフ”する前に知っておきたいマルチコプター入門のためのアレコレをまとめてみました。

ドローン

1. 買える場所はどこですか?

 ラジコンショップ、ヨドバシなどの量販店、ネット上では、Amazon、ラジコンヘリ専門ショップ、メーカー直販で買えます。ちょっと調べてみたところ、『Phantom 3 Professional』の予約価格でヨドバシの10%還元ぶんを差し引くと17万4933円、ほかはメーカー直販や専門ショップなどで17万5000円と誤差67円となっています。価格的には、どこで買ってもほぼ同じようですね。

2. いまオススメの機種はなんでしょう?

 ホビー用では、以下の4モデルがオススメです。

 整理すると、小さいほうからフランスのパロット社製『mini Drone Rolling Spider』(本体重量55グラム、プロペラを含めたタテヨコ各約150ミリ、実勢1万円強)、同『Bebop Drone』(重量約400グラム、タテヨコ約300ミリ、実勢7.7万円弱)、中国DJI社製『DJI Phantom 3シリーズ』(重量1280グラム、プロペラを含む対角サイズは590ミリ、ADVANCEで約14万円から)、同『Inspire 1』(重量2935グラム、438×451×301ミリ、約38万円)といったところではないでしょうか?

ドローン

 この市場、DJIがシェア7割と言われていますね。ところで、3D Roboticsの『Solo』が今月末(2015年5月)世界で発売とうたっていますが、問い合わせたのですが国内発売についての詳細は不明。

3. 最初はどこで練習すればよいでしょうか?

 オススメの最新モデルは、いずれも本体下面のカメラや超音波センサーなどによって室内でも安定して飛ばすことができます。屋外で広々とした近くに誰もいない場所が見つからない場合は、室内で練習するのもひとつの手かもしれません。ちょっとした会議室みたいなところでもオーケー。テイクオフ後は、ほとんど操作することなく数〜十センチ程度の精度で中空に静止するか、動いてもゆっくりなのであわてることはありません。室内飛行が前提で壁などに直接接触しないホイールも装着できる『Rolling Spider』が、いちばんハードルが低いです。なお、その『Rolling Spider』でも対象年齢は14歳以上となっています。

4. 飛行可能範囲はどのくらいですか?

 『DJI Phantom 3』の飛行可能範囲は2キロ、以前の『Phantom 2 Vision+』が700メートルと言われていたのでかなり伸びたことになります。一方、『Bebop Drone』のスマホによる操作では250メートルですが、スカイコントローラでの操作では2キロがうたわれています。ただし、いずれも人が直接操作する場合で距離もスペック値のため条件によって異なってくることが想定されます。

5. どのくらいの時間飛ばせますか?

 『DJI Pantom 3』で約23分、『Bebop Drone』で約11分です。どちらもバッテリーはスマホで確認でき、低バッテリー時には警告が出ます。

6. 風が強くても飛ばせますか?

 ミドルクラスのドローンである『DJI Inspire 1』で、スペック表には最大風速抵抗として毎秒10メートルと記載されています。スマホのイヤホンジャックに差して使う風速計などもありますが、ビューフォート風力階級表によると秒速7〜10メートルの風で“木の葉や細かい小枝がたえず動く。軽く旗が開く”とありますの目安になりますね。

7. カメラはついてますか?

 1年ほど前までアクションカム『GoPro』を搭載して飛ばすことが多かったのですが、『DJI Phantom 2 Vision+』ではGoProと同等クラスと思える広角カメラを搭載、『DJI Phantom 3 Professional』では4Kビデオの撮影が可能となりました。飛行中に真下からほぼ水平までカメラのアングルを変えることができます。一方、『Bebop Drone』は約180度の魚眼レンズを本体前面に装着しており、飛行中にその一部をリアルタイムに切り出して上下左右にアングルを変えることができます。

 空撮でなめらかにカメラをパンしたい場合には、ミドルクラスの『DJI Inspire 1』のように本体の向きを変えずにカメラの向きを変えられるモデルが望ましいでしょう。『Inspire 1』の場合にはひとりが操縦に、もうひとりがカメラ撮影に専念して操作できることも可能です。また、『DJI Phantom 3』には、ストリーミング配信機能もあります。

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8. 鳥の視点で飛べますか?

 『Bebop Drone』、『Dji Phantom 3』など、主要な機種は“FPV”(First Person View)、“POV”(Point of View Shot)と呼ばれる機能があります。BebopではVRグラスにも対応しています(専用のスカイコントローラーも必要)。

ドローン
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9. ドローンはどのくらいものを運べますか?

 運べる重量を“ペイロード”(Payload)と呼びますが、ホビー用のドローンはアクションカムのGoProなどを装着して飛行する程度のことしか考えられていません。一方、中大型機では2〜3キログラムほどを運べるのものもあり一眼レフを搭載して撮影できるくらいなので、災害時に医薬品などを輸送するなどには十分と言えます。

10. 雨の中では使えますか?

 ほとんどのドローンはモーター等がむき出しのため雨の中での飛行は難しいはずです。離着陸時におきる砂ホコリなども大敵です。ホビー用のドローンは業務用のドローンほど堅牢にはできていないのですね。

11. 飛ばす際に制限のある場所はありますか?

 安全が確保できない場合や迷惑行為となる場合は飛べないのは言うまでもありません。ドローンそのものについての法律はないのが現状といわれますが、ほかの法律や条例等、権利侵害、プライバシー侵害に抵触する場合は飛べないことになります。東京都が都立公園などで小型無人機(ドローン)の使用を禁止した(いまのところ飛行禁止の掲示と注意の呼びかけを基本にするとのこと)というニュースもありました。

 航空法では、模型飛行機は空港や飛行場の航空路の中では高さ150メートル、それ以外の場所でも高さ250メートル以上の空域で“飛行に影響を及ぼすおそれのある行為”として規制があります(飛行エリアによって規制が異なる点も注意)。DJI Phantomシリーズの場合は“No FLY Zone”として登録されており、先日のファームウェアアップデートで首相官邸の周囲1キロ、皇居の周囲1.2キロが新たに登録されました。

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12. 修理・サポートは受け付けてくれますか?

 ドローンの本体は、フレームにフライトコントローラとバッテリとモーターとプロペラだけからなっているといっても大げさではないんですね。破損や消耗によるトラブルはあってもメカ的に壊れる部分はあまり多いとは言えません(カメラを搭載するジンバルがある場合は別ですが)。ということで、メーカーもユーザーが修理するためのパーツや情報を積極的に提供しています。

 私も破損したフレームを取り寄せて交換したことがあります。一方、スマホや本体LEDでエラーメッセージが出る場合があり、DJI Phantomシリーズの場合は、Windows PCやMacに繋いでキャリブレーションなどの調整をすることになります。これもビデオなどを見ながら手順どおりにやれば大丈夫ですが、それでも不安という人や解決しない場合には、ラジコンヘリ専門ショップなど修理・サポートをしてくれるお店がありがたい存在になります。

13. スマホなど必要なものはどんなものがありますか?

 今回オススメしたドローンは、いずれもスマホは必須となります。アプリは無料。iPhoneやAndroidのメジャーなモデルに対応しています。なのですが、現在PARROT用アプリがAndroid 5.1で正常に動作しないという報告があるので注意(Android 5.0まではオーケー)。念のため対応機種は調べたほうがよさそうです。ほかにあったほうがよいというレベルだと、予備バッテリー(Bebop Droneで数千円、DJI Phantomシリーズで1万円以上)、車用の充電アダプターもあると便利かもしれません。

14. 維持費はかかりますか?

 とくに大きな維持費はありません。

15. 国内でもドローン(無人機)運用の法規制がはじまるのですか?

 報道によると、飛行可能な範囲が5キロ以上のドローンの操作に対して“第3級陸上特殊無線技士”の国家資格を義務付ける方針とのことで、飛行範囲がそれ以下のドローンについては、免許等は不要ですが購入時に氏名や住所を登録する制度を設けるらしいです。

 そのほかにも、政府は高性能ドローンの操作には免許のほか保険加入の義務付けについても検討中。実務を担う民間団体としては一般財団法人日本ラジコン電波安全協会が候補に挙がっているという情報もあります。

 米国では、FAA(連邦航空局)が、ホビーやリクリエーションのための模型飛行機やUAS(無人機)については安全利用のために知っておくべきことがキャンペーンで告知されています。一方、商用利用についてはすでに規制があり産業活性化のための協議が続いています。

16. パーツごとで買えますか?

 DJI社、PARROT社、3D Robotics社など人気メーカーは、いずれもパーツを積極的に販売しています。フライトコントローラーも単体で販売されていて自作ドローンを楽しんでいる人たちもいます。興味のある人は、『KK-mini』、『DJI Naza-M』、『HK PilotMega』、『Pixhawk』などで調べられたし。海外では、自作ドローンのレースやベーゴマのように落としあうゲームもはじまっていますよ!

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17. オープンソースのドローンがあると聞いたのですが?

 昨年10月にはLinuxファウンデーションでDronecodeというオープンソースのプロジェクトもアナウンスされ、ドローンはオープンな世界へも広がりつつあります。このプロジェクトでは、3D Roboticsが大きな役割を果たしているようです。一方、PARROTなどはドローンを使ったARゲーム開発などの目的のために早くからAPI公開しています。ドローンに、この方向から取り組むのもありですね。

18. 海外のモデルは使えますか?

 Amazonなどで海外モデルを売っていることがありますがとても注意が必要!国内で正規に販売されているモデルしか使えないと考えていいでしょう。たとえば、『DJI Phantom 2 Vision+』は、5.8GHzを使っているところを国内モデルは920MHzに変更してありプロポのアンテナも異なります。逆に、国内モデルをハワイや香港に持ち込んで飛ばすこともできないということですね。

19. ラジコン保険の適用できますか?

 個人向けでは、日本ラジコン電波安全協会のラジコン操縦士に登録と同時に入るラジコン保険があります。また、DJI Phantom 3では三井住友海上と提携して“DJI専用賠償責任補償制度”が1年間無償でつくとのこと。法人向けにも東京海上日動が“産業用無人ヘリコプター総合保険”を7月から販売開始するそうです。

20. ドローンの操作でやってはいけないことは?

 飛行中の操作でやってはいけないことに、“急な下降操作を続けること”というものがあります。“セットリング・ウィズ・パワー”(Settling with Power)または“ボルテックス・リング・ステート”(Vortex Ring State)は、自身の下降渦に飲み込まれ揚力が失われる現象。これがどれかのプロペラで発生すると機体が反転して墜落することになります(最近もひっくり返って墜落している例がニュースで流れました)。Bebop Droneのパッケージには“重要なお知らせ”のひとつとして紙に書かれて入っているほどで大切なことなのでお忘れなきよう。

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21. おまけ

 最後に、ひとつだけあまり知っておいても意味がないかもしれない情報(?)。ドローンの代表的なメーカーはどこもユニーク。フランスのPARROTはオーディオ関連や鉢植えの植物のためのIoTデバイスも発売。米国の3D Roboticsは日本でも話題となった『フリー』や『メーカーズ』の著者クリス・アンダーソンの会社。世界的に注目される中国DJIは、ドローンで培った技術を使った手振れ補正カメラが今年1月のCESでは話題となりました。日本でも今年量産を開始した自律制御システム研究所や東大のPhenox Labなどのメーカー、ドローンを活用したサービスや取り組みも登場してきていて期待しています!

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 さて、ここに挙げたリストは安全に楽しくドローン活用するためにあくまで基本的なところをまとめたものです。これを読まれる時期や環境、情報の深度などによって事情が異なってくる可能性あり。

 ということで、ドローンのスペックやオプションはもちろん、安全性や法規制など、必ずご自身でも確認・理解して始めてくださいね。この記事で概要をつかんで手がかりにしてもらえれば幸いです。

ドローン

  さて、今回の話題に最適なお知らせ。“ドローンナイト その魅力とテクノロジーと表現の世界を140%語りまくる”というセミナーを、NPOのツブヤ大学と角川アスキー総合研究所の共催で行ないます。第一人者である千葉大学教授で自律制御システム研究所代表取締役の野波健蔵氏、発明系アーチストの八谷和彦氏、ジュエ株式会社の山崎友一朗氏をお招きして、“生ででしか聞けない”ドローントークを展開します。ドローンについて、もっと知りたい方はぜひご参加ください。

【開催概要】
Drone Night
〜ドローンナイト その魅力とテクノロジーと表現の世界を140%語りまくる〜

日時 2015年5月15日(金)19時スタート(18時30分開場)
主催 ツブヤ大学(http://univ2289.com/)・角川アスキー総合研究所(http://www.lab-kadokawa.com/
協力 Drone News(https://www.facebook.com/dronenewsjapan
参加費 2500円(前売り)/3000円(当日)
会場 内田洋行 ユビキタス協創広場 CANVAS
(東京都中央区新川2-4-7)
・参加申し込みはコチラから→ http://peatix.com/event/88220/

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