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音楽を聴くための数え切れない選択肢がある時代

2015年05月06日 18時00分更新

制限のないアクセスが私たちと音楽との関わりに及ぼした影響とは(ReadWrite Japan提供記事)

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今日では9.99ドルの手持ち金とネットの接続さえあれば、Spotifyにサインアップし3000万もの楽曲にアクセスすることが出来る。

10代にとってこれらは新しい規準となっているが、21世紀に入る前からレコードを集めて育った世代にとって、これは世界が全く違うことに等しい。

Webの成長と高速アクセスの普及は我々のもとに世界中の情報を運んで来るだけに留まらず、世界中の音楽(や動画、TV番組)も届けるようになった。この事は音楽の私達の生活における役割の根本的な変化をもたらした。

トム・ヨークがRadioheadで2000年に出した”Idioteque“という曲(これが未来の技術による世界の終末に関する曲かどうかは知らないが)には、「everything all of the time」という歌詞がある。 全てがいつでもあるという事は音楽を聴く習慣や、レコード蒐集のようなシンプルな事にまでインパクトを与えざるを得ないのかもしれない。

我々がここに至るまで

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Spotifyにはどこからでもアクセスすることができる

録音音楽の歴史は19世紀頃に始まったが、ここではMP3以降から話そう。音楽が容易にデジタル化されるようになって以来、曲を複製して配布して回ることがあっという間に出来るようになった。

PC、そして後にはMP3プレイヤーに数千曲入れておくというのは、音楽を聞く習慣に起こった最初の大きな変化だった。リスナーは一日中かけておくだけの音楽を、ほんの数クリックでリストアップできるようになった。

2001年に登場したiPodは最初の携帯デジタルオーディオプレイヤーというわけではないが、それでも明らかに最も影響を与えたものだ。iPodの方がより多くの音楽を簡単に持ち運びできるというのに、なぜ車にCDを山程積んでおく必要があるというのだろう。

短い期間のうちに状況は大きく様変わりした。テープやレコードは頭から順番にしか再生できず、CDでは限られたランダム再生の方法(6枚CDチェンジャーの事を覚えてる人はいるだろうか?)が提供されたにすぎなかったなか、シャッフルボタンはすぐに音楽を聞く習慣の一部となった。

数千曲がランダムに再生され、好きなときに曲を飛ばせる機能は、ひょっとすると我々が半数以上の曲を終わる前に飛ばしてしまう習慣を作った原因なのかも知れない。

そしてMP3が音楽を聞く習慣を大きく変えてから10年も経たないうちに、2008年にSpotifyによってまた大きな変化がもたらされた。存在する全ての音楽が毎月定額で自分のものになるというのだ。

これは音楽を所有するというよりレンタルすると言ったほうが正しいが、より多くの音楽をより少ないコネクションで手元にという時代の先駆けとなった。

次に来るのはなにか

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Rdioはそのバーチャルなドアを2010年に開いた

もちろん私達は皆、自分なりの音楽の聞き方を持っている。レコードの売上がまた伸び出したことは、必ずしも全員がこの限りないデジタルストリーミングサービスにサインしたわけではないことを示している。しかしSpotifyやNetflixで育った世代からすれば、それがCDであれiTunesであれ、かつての音楽のコレクション方法は時代遅れにみえることだろう。

何かを聞きたいと思った時に検索して選ぶだけで済むようになった今、かつてのように手間がかかるやり方に戻るのは難しい。全てのものを一度にそろうというのが今日のスタンダードであり、当面は変わることはないだろう。(アップルでさえようやくこの事が理解できたようだ)

この点に置いてYoutubeに触れないわけには行かない。このビデオサービスはSpotifyやその類似サービスほど上手く出来ているわけではないが、それでも方向としてはこれらサービスと同じ所を目指している。無料で始められるということもあり、思っているよりも多くの人たちにとって主要な音楽のソースとなっている。Youtubeでどこからでも新しいシングルが無料で視聴できるという事は非常に大きなことだ。

これまでになく音楽が溢れかえっている今、Spotifyのおすすめやお隣さんのプレイリスト、Pitchforkのレビューなど、リスナーにとってガイドがこれまでになく必要になってきている。そしてそのガイドとなる選択肢ですら、呆れ返る程の数がある。

これまでは聞くべき音楽の選択について、DJやレコード店員など相談にのってくれる存在がいたが、今日ではこの選択のプロセスはより数の論理に依るところが大きくなってきている。

音楽に再び向かい合う

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R.E.M.は1994から変化している…そして音楽も

私が初めて買ったアルバムは、R.E.M.の”Monster“のテープだった。何週間も繰り返し繰り返し聞き込み、たまにラジオに戻るといった具合だった。シャッフルもスキップもなく、結果自分はそのアルバムについてえらく詳しくなったものだ。

MonsterはSpotifyでももちろん収録されているが、クリックひとつで手に入るその他数え切れない曲に紛れている。今でもこれを何時間も繰り返し聞けるが、他に選択肢が山ほどある中でそうする事はあまりない事だろう。

現代のやり方はこれで素晴らしいものだと思うが、アナログ時代を懐かしいと思うところもある。次の一節はニック・ホーンビーによるものだ。「もし歴史が始まって以来、録音された音楽の全てを所有しているのだとしたら、あなたは一体何者なのだ?」

Spotifyや他のストリーミングサービスでもプレイリストやお気に入りを使ってバーチャルなレコードコレクションを作る事は当然できる。それを公開する事だって、これまでになく簡単になっている。

3000万曲にワンクリックでアクセスできる中、議論の高まりはスキップやシャッフルなど無しに、音楽をより真摯に聞こうという動きを呼び戻している。これは音楽に限らずネット世代における問題だ。これまでに作られたあらゆるアルバムにあっという間にアクセスできる事は素晴らしい事だ。が、自分がMonsterについて熟知しているように、これらアルバムについてももう少し理解できればと思う。

Spotify、Rdio、Deezer、グーグル、アップル、その他のストリーミングサービスでこの問題を解決できるものがあるとすれば、私は毎月の講読料が増える事も厭わない。

画像提供:Spotify, Rdio and R.E.M.

David Nield
[原文]


 

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※本記事はReadWrite Japanからの転載です。
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