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【私のハマった3冊】人生そのものを肯定する 生きるのに疲れたら読みたい3冊

2015年05月06日 16時00分更新

1027BOOK

ファイト・クラブ
著 チャック・パラニューク
ハヤカワ文庫
907円

それでも人生にイエスと言う
著 V.E.フランクル
春秋社
1836円

生きがいについて
著 神谷美恵子
みすず書房
1728円

「死にたい」は、現代の南無阿弥陀仏か、または「しあわせになりたい」の略だという。思春期であれ思秋期であれ、生きるのに疲れちゃうのは、人生における季節病なのかもしれない。この3冊は、罹(かか)る前のワクチンとして覚えておきたい。

『ファイト・クラブ』は新版かつ鉄板。生きてる実感がない人生に嫌気がさしている“ぼく”が、殴り合いをする秘密クラブで自分を取り戻していく……という仕立てなのだが、最初から最後まで“ぼく”に名前がないことに注意してほしい(映画もしかり)。これは、読み手が好きなだけ自分を重ね己を注ぐための器なのだ。読後、この器から飲んだアドレナリンが、体内に沸々(ふつふつ)と滾(たぎ)っていることに気づくだろう。“良い子”であることを自分に強いるようになった己を、力いっぱい殴れ。

『それでも人生にイエスと言う』は、『夜と霧』で有名なV・フランクルの講演集だ。ナチスの強制収容所を生き抜いた体験を踏まえ、人生そのものを肯定することを訴えかける。「しあわせは目標ではなく、結果にすぎない」というメッセージが重い。幸せとは、“なる”ものではなく、“ある”ものだという結論に達するまでに支払われたものは、あまりにも大きいから。

『生きがいについて』は、人生の一冊ともいえる名著なのだが、注意したいのは、本書のどこにも“答え”が書いていないところ。人は生きがいを何から得て、奪われるときに何が起き、それでも自殺を踏みとどまるものが何であり、新たな発見でどんな変化が起きるのかを、愚直に、真摯に、徹底的に掘り下げたものだから。これを読むことは、すなわち自分を掘ることに他ならない。文字通り、読み手は“生きがい”を自分の裡(うち)に見出すことになるだろう。

 生きることに意味はないが甲斐はある。なぜ生きるのかわからなくなったときの保険として、罹ったかな? と思ったら早めに読んでおこう。
 

Dain
古今東西のすごい本を探すブログ『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる』の中の人。

※本記事は週刊アスキー5/12-19合併号(4月28日発売)の記事を転載したものです。

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