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インディーズアプリからCocos2d-x、WebRTC、Firefox OSまで情報満載!「アプリで儲ける仕組み」セミナーレポ

2015年03月31日 16時30分更新

 3月25日、週刊アスキー編集部はNTTコミュニケーションズと共同で「アプリで儲ける仕組み」というテーマのモバイルアプリ開発者向けのセミナーを開催しました。

アプリで儲ける仕組み

 ここ数年、無料アプリのマネタイズの手法が多様化し、個人アプリ開発者はひとつの職種として認知されつつあります。アプリの開発環境も進化し、個人でもクオリティーの高いアプリを短期間で開発できる時代となりました。とはいえ、日々数え切れないほどのアプリが登場するなか、自分が開発したアプリをユーザーにダウンロードしてもらうまでは至難のワザです。今回のセミナーは、そういった開発者に参考になる情報が満載でした。

アプリで儲ける仕組み

 最初の登壇者は、あぷまがどっとねっと代表のふじたたけお氏。

NTTcom

 ふじた氏は、普段は同名の個人ブログでインディーズゲームを中心としたレビュー記事を執筆しています。

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 そのほか、週刊アスキーPLUSやファミ通App、ねとらぼなどに連載を持ち、インディーズアプリを精力的にレビューしているとのこと。最近はライターの仕事が増えているそうですが、ふじた氏の本業はモバイルアプリ開発。自身が開発したアプリのダウンロード数や収益などを一般公開しているので、アプリでの収益化を考えているユーザーは必見です。

アプリで儲ける仕組み
アプリで儲ける仕組み

 講演の前半は、いま注目すべきインディーズアプリ5選を紹介。その中で印象的だったのが、「純愛ババア学園」という学園恋愛シミュレーションゲーム。着眼点もさることながら、開発環境にUnityを採用しており、その高品質の3D描画は圧巻です。大手メディアで紹介されたこともあり、PVの視聴回数が30万回を超えるほどの話題性だったそうです。しかも、開発者は個人。ふじた氏は「個人でここまでやれる開発者が出てくると、(いい意味で)逆に暗い気持ちになる」という感想を持つほど、頭ひとつ抜けた作品でした。

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 後半は、誰もが気になるアプリの収益についての具体的な話になりました。2014年はアプリ開発活動をセーブしていたそうですが、2015年1月から再開し、3月には月間17万円超となったそうです。定期的にアプリをリリースすることで、収益が上がっていくことがわかります。

 ふじた氏は2009年からアプリ開発を手がけていますが、当初は「ダウンロードされやすく、収益化がしにくい」状況だったそうです。数千ダウンロードでのトップ100へのランクインも容易は半面、アプリのアドネットワーク自体が立ち上がったばかりで広告出稿主も少なく利益を確保しづらかったとのこと。

 一方で現在は、「ダウンロードされにくく、収益化はしやすい」という状況が生まれているそうです。開発者の数も日々公開されるアプリの数も増えたことで、ユーザーがアプリを見つけてダウンロードするまでの施策が重要とのこと。その一つが定期的にアプリをリリースすることや、独創的な着眼点のゲームを開発して自分のファンを増やすということなのでしょう。収益化については、最近では古くからあるバナー広告よりも動画リワード広告のほうが収益化しやすいと感じているとのこと。

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 2人目の登壇者は、(株)シュハリの松浦晃洋氏。Cocos2d-x界隈では有名人ですね。

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 松浦氏は、自社が開発を手がけたリズムゲームアプリ「めちゃギントン」を例に、「Assets Manager Extension」と呼ばれるCocos2d-xの機能拡張とクラウドサービスを利用したゲームアプリについての講演となりました。

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 「めちゃギントン」は、フジテレビのバラエティー番組「めちゃ×2イケてるッ!」内の同名のワンコーナーをスマホゲーム化したもの。放映日である土曜日の番組終了後に、新しいゲームファイルを即時配信するため、SQLiteとクラウドサービスを活用しているとのこと。

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 クラウドサービスを利用する際、Assets Manager Extensionを導入することで、マルチスレッドのダウンロード、ファイルレベル/バイトレベルでの進捗管理、中断したダウンロードの再開、ダウンロードエラー時の自動再試行、ZIPアーカイブの自動展開——などの機能が利用可能なります。

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 具体的にはmanifestファイルを、ローカルとリモート(クラウド)に配置することで、クラウドサービスを活用したバージョン管理が容易になります。

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 リモートのmanifestファイルに記載されているバージョン番号がローカルよりも新しいときのみ、新規ダウンロードが発生します。とはいえ、すべてのリソースを入れ替える必要がない場合もあるので、各ファイルはMD5のチェックサムを利用してローカルにあるファイルとの整合性をチェックし、異なるファイルであることが判明したときのみダウンロードするといった仕組みです。

 ゲーム関連ファイルをクラウドに配置して、Assets Manager Extensionを利用することで、データ通信量を最小限に抑えてゲームを最新の状態に保てるようになるわけです。ゲームに新しい要素を追加したいという場合でも、バージョンアップでの対応は審査があるため公開まで時間がかかってしまいます。しかし、クラウドからデータを読み込むという仕組みを整えておけば、開発者が公開日時を選べるというメリットもあります。

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 3人目の登壇者は、NTTコミュニケーションズ Webアプリケーション・エバンジェリストの小松健作氏。「WebRTCが拓く、新たなWebビジネスの世界」というテーマでの講演です。

NTTcom

 WebRTCは、プラグインなどを必要とせずにHTMLファイルにJavaScriptを書くだけで、リアルタイムの音声や動画、メッセージのやり取りを可能にする技術です。

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  同社はWebRTCを使いやすくするSkyWayと呼ばれるプラットフォームを提供しており、今回の講演もSkyWayを中心としたものでした。

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 小松氏は、NTTコミュニケーションズの技術開発部に所属する、HTML5を専門分野とするエンジニア。

 セミナーのテーマである「アプリで儲ける仕組み」にも触れ、4年後の2019年には2億以上のサイトでWebRTCの技術が利用されると指摘(出典:WebRTC Industry Status & Forecasts Report, 2014 Edition, Disruptive Analysis)。

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 実際にWebRTCを利用し、数行のコードを記載するだけでたった数分でブラウザー上でのビデオチャットシステムを実現させていました。映像だけでなく、音声やテキストの通信がウェブブラウザー上で簡単に実現できるというのは驚きですね。

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 SkyWayは、ウェブアプリ向けの技術として進化を続けていますが、もちろんスマホなどのモバイルへの対応も考えられています。東京・お台場にある国立の科学博物館、科学未来館とのコラボ企画が決定しており、4月2日より不定期開催の予定です。Japan Romotiveが公開している、SkyWayを利用したRomoの活用事例についての動画も紹介されました。

 これは、SkyWayを利用してウェブブラウザーとiPhoneとの間でWebRTC通信を実現するという実験。双方のカメラ画像のリアルタイム送信やRomo(ロボット)の制御などもWebRTCでやり取り可能とのこと。

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 Romoとは、iPhoneの台座のような形状の自走式のロボットで、科学未来館のほかApple Storeなども販売されています。価格は税別で1万4500円(税込1万5660円)。

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 そのほか、米国のKNS-TVが公開している「Double Robot」と呼ばれるiPad用自走マシンの活用事例ムービーも紹介されました。こちらもWebRTC通信を利用することで、自宅にいながら職場や学校にいる同僚や仲間とやり取りできるようになります。

 米国では実際に、Double Robotを使って在宅の学生が授業に参加できるようになっているとのこと。

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 最後の登壇者は、Mozilla Japanの清水智公氏。

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 清水氏は、Mozilla Japanのテクニカルマーティング担当でhtml5jプラットフォーム部に所属しています。

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 今回のセミナーでは「Firefox OSでのアプリ開発とマネタイズ」という内容で講演をお願いしました。

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 清水氏がまず取り出したのは、Firefox OSスマホ。このFirefox OS端末のホーム画面は、すべてウェブ技術で作られているそうです。

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 Firefox OS端末は、ハードウェアの上にLinuxカーネルやデバイスドライバーがローレベルレイヤーを形成しています。これは、iPhoneやAndroidなどのスマホと同じですが、その上にいきなりウェブエンジンのGeckoレイヤーがあるのが特徴です。端末上で動作するアプリは、このGeckoの機能を利用できるWeb APIを介して各種の機能にアクセスすることになります。

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  ウェブアプリとひと口にいっても、開発できるアプリは大きくわけて2種類あります。1つは通常アプリで、HTMLやCSS、JavaScriptなどを利用してGeckoエンジンの機能を引き出すタイプ。アプリ内だけで完結するゲームなどの開発に向いていますね。このタイプのアプリは、Geckoエンジンが動作するほかプラットフォームのFirefox上でも、少ない修正で動かせる点もメリットでしょう。

 もう1つは特権アプリ。通常アプリよりも利用できるAPIが増えることで、アプリの自由度が増しますが、コードレビューによる審査やセキュリティーポリシーの準拠、デジタル署名の付与が必要など公開するまで時間がかかります。利用可能になるAPIは、端末の電話機能やアドレスデータ、カメラ機能へのアクセス、メールの送受信など。つまり、アプリが生成するデータを除く、端末内のリソースへアクセスするには、特権アプリとしての開発が必要なわけです。配布方法にも制限があり、一般的にiOSアプリやAndroidアプリと同様にパッケージ型のみとなります。

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 ウェブアプリ=無料と思われがちですが、実はFirefox OSでもきちんとマネタイズできる環境が整っています。具体的には、PayPalなどの外部の決済サービスでアカウントを取得しておき、有料アプリとしてFirefox Marketplaceに登録すればいいとのこと。アプリ内課金の仕組みなども利用できます。

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 なお、参加者にはセミナー共催のNTTコミュニケーションズから、同社のクラウドサービス「Cloudn」(クラウドエヌ)の資料のほか「くらうどん」が、週刊アスキー編集部からは過去の人気付録だったスマホまとめ板と光るUSBケーブルが配布されました。

 4人の登壇者の講演内容はバラエティーに富んでおり、2時間超にも及ぶセミナーもあっという間でした。

NTTcom

■関連サイト
Cloudn クラウドでアプリ開発応援キャンペーン(NTTコミュニケーションズ)
あぷまがどっとねっと
めちゃギントン
Skyway(NTTコミュニケーションズ)
Firefox OS

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