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「ライバルの存在はVRにとって“足し算”」SCE吉田氏が語る新型Morpheus(後編):GDC 2015

2015年03月10日 20時30分更新

文● 広田稔 編集●アキラ

 前編に引き続き、SCEワールドワイドスタジオのプレジデント、吉田修平氏に新型『Project Morpheus』のハードウェアについて語ってもらった。

新型Morpheus(前編):GDC 2015
↑SCEワールドワイドスタジオのプレジデント、吉田修平氏

―― ハードウェアの進化のポイントはどこでしょう?

吉田 まずはディスプレーパネルが、120fps(1秒間に120枚の画像を表示)の有機ELに変わったことですよね。初代は60fpsの液晶でした。液晶の特徴として、VRHMDに利用して視線を動かすと残像が残りやすい。あとレイテンシーが少し高いんです。だからソフトもそうした特性を分かった上で、注意深くつくればいいデモになったんですが。

―― だから有機ELなんですね。

吉田 有機ELでレイテンシーを低くして、きれいな映像をシャキっと出せるようになって、初めて家庭向けに売れるようなったなという。だから去年の段階では、「これは商品じゃないですよ」といっていたんです。今回、120fpsで動く最新の有機ELパネルが手に入って、全部まとめてみてちゃんと動いたので、じゃあここから先のハードの開発スケジュールが組めるなということで、「2016年前半に発売」という発表をさせていただきました。

新型Morpheus(前編):GDC 2015
↑新型Morpheusは120fps駆動がポイント。

―― 有機ELの解像度は、他社の最新試作に比べると低いです。1ドット内でRGBのサブピクセルを増やす方向に舵をとった理由はなんでしょうか?

吉田 それは解像度を上げちゃうと、ゲームを動かすのが大変になるんです。PS4というのは、1080p/60fpsでゲームをつくるのに最適化されたシステムです。今回発表したように、120fpsでも動かせますが、現状、PS4のデベロッパーさんは1080p/60fpsでつくっている。そうしたコンテンツをリプロジェクション(再描画)の技術で60fpsから120fpsに補完するときに、高い解像度ではなく、RGBのサブピクセルをもったパネルのほうが美しく見える。

 120fpsというのは本当にぬるぬるです。『Magic Controller』のデモのように、ネイティブでつくるとぬるぬる動かせる。ほかの3つは60fpsで作って、120fpsで書き出しています。

新型Morpheus(前編):GDC 2015
新型Morpheus(前編):GDC 2015
↑Magic Controller。

―― パッと見では、そんなに違いを感じませんでしたが。

吉田 そうそう、そんなに違和感は感じない。あとはリプロジェクションの技術が、実は頭を動かしたときの残像をなくすのに便利なんです。VRHMDでは、ユーザーが見ているところの情報をセンサーでとって、その映像をレンダリングしている最中に、頭が動いてずれてしまうことがある。だからもう一度、センサー情報を取得して、レンダリング後のフレームを動かすんです。例えば頭が右に動いたなら、そのぶんだけ左にちょっとずらすとぴったり合う。

―― Oculus Riftでいう“Time Warp”と同じですかね?

吉田 呼び方が違うだけで、ほとんど同じ考え方です。元が60fpsの場合でも、120分の1秒ごとにもう1枚同じ絵をつくって、ちょっとずらして追加してる。それで120fps。120分の1秒だとそんなに動かないので、割とスムーズに見えるというテクニックです。

―― なるほど。わかりやすいです。

吉田 繰り返しになりますが、新型Morpheusは1080p/60fpsに最適化されたコンテンツを一番美しく見せるシステムです。やはり家庭用機なので、スマホのように半年ごとに新製品を出すわけにはいかないじゃない。長く使っていただける、ちゃんとしたものをつくろうという意図です。

―― とはいえVRHMDは、ここ数年を見ても技術革新がめまぐるしいじゃないですか。他社はより高性能な第2世代、第3世代を出してくると思います。

吉田 でも例えば、解像度を4K、8Kと進化させたとしたら、PCも常に最新モデルが必要になりますよね? PS4は家庭用機だからみんなが同じものを持っているというよさがある。だからデベロッパーさんは、ゲームのリリース前に細かくチューニングした上で、世の中に出すことができるんです。

 ハードをどんどん進化させていくと、マーケットが断片化してしまう。最新のハードを持っている人はいいかもしれないけど、古いのでは処理落ちしてしまう……というのは、家庭用機では違いますよね。VRでも同じだと思います。インストールベースが増えないと、デベロッパーさんが何をターゲットにつくればいいのか難しくなるし、エコシステムも構築できない。

―― あえて変わらないことが家庭機ならではのよさという。

吉田 でもPCもモバイルも、PS4のMorpheusも、VRにとって全部足し算だと思ってるんです。実はGear VRのコンテンツは、Morpheusへの移植に向いていたりします。

―― 処理性能が限られたモバイル向けのコンテンツでも、リッチな家庭用機に合うんですか?

吉田 Gear VRは、PCに比べるとパフォーマンスが低いので、ソフトを軽く作らなければいけない。そうしたコンテツなら、PS4に持ってきて、ネイティブで120fps表示してもなんら問題なく動くと思います。モバイル用でも面白い体験を提供してくれるコンテンツは作れますし。

―― なるほど!

吉田 それってSteamやモバイルのゲームをPS VITAに移植したら、スティックがあるから遊びやすくなったみたいな話と同じなんです。つくったソフトの採算が取れて、きちんと次の開発費が捻出できるというサイクルをつくらなきゃいけない。だからOculusさん、サムスンさん、HTCさんが取り組まれていることも、全部お互いに協力しあってるものだと思っています。

―― MorpheusとOculusはライバルに見えて、実はちょっとポジションが違うという。

吉田 PC向けのVRHMDは、どんどん進んでいっていただいて構わないんです。ビジョンをみんなに見せて、「VRってすげー」と多くの人を思わせる。でも、ハードは変わらなくても家庭用機のゲームって、すごく進化するんですよ。PS3でもローンチ時と最後でくらべていただければ、同じハード向けとは思えない内容になってるじゃないですか。

―― デベロッパー側もうまいつくり方を見つけていくんですね。

吉田 PS4は、PCと違ってハードの一番下まで触れるようになってます。マーク・サーニさんががんばってつくった『GPGPU』とか、あまり使われてない機能がPS4には残っている。デベロッパーさんはそういうのを使い込むのが好きなので、Morpheusでものちのちネイティブで120fps駆動するのに効いてくると思います。

―― ちなみに細かい話で恐縮ですが、HMDとPS4の間にあるプロセッサーユニットは、製品版でも付属するんでしょうか?

吉田 プロセッサーユニットはHMDとセットです。あれが何をしているかというと、PS4でつくった120fpsで両目用に歪んだ映像を受け、60fpsに落として歪みを戻して、テレビに映しているんです。

―― ソーシャルスクリーン機能のためなんですね。

吉田 それと同時に120fpsの映像をそのままヘッドセットに送ってます。プロセッサーも内蔵していて、3Dオーディオもここで処理している。なので、PS4にパフォーマンスをさらに追加しているようなものなんです。ぜひ来年のMorpheus登場まで、期待してまっていてください。

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