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【私のハマった3冊】知ってるようで知らない “空手”の真実に迫る

2015年03月02日 22時00分更新

1018BOOK

義珍の拳
著 今野敏
集英社文庫
741円

大山倍達正伝
著 小島一志、塚本佳子
新潮社
2808円

格闘技「奥義」の科学
著 吉福康郎
講談社ブルーバックス
929円

 

 2020年の東京オリンピックで空手の採用を訴える動きがある。しかし空手は、伝統派、フルコンタクト、沖縄古流などに分かれ、それぞれに多くの流派が存在し、統一団体がないことが、大きな障壁となっている。なぜそんなことになったのか?

 琉球王国(沖縄)で進化した武術である空手が、本土に伝わり世界に広まる課程で、複雑に変質・分化していったからだ。

 そこで重要な役割を果たしたのが、沖縄出身の船越義珍と、韓国出身の大山倍達だ。

 船越義珍は、琉球武士の家に生まれ、武士階級の秘伝である“手”(ティー)を、誰でも学べる“空手”として本土に普及させた。その地道な努力の姿を描いたのが小説『義珍の拳』だ。

 空手を東京の大学生たちに教えた船越は、武術としての空手の本質は“型”(現在は“形”)にあるとし、学生たちが始めた組み手稽古によって不戦の技術である“手”の本質が失われていくことに悩み続けた。

 朝鮮の裕福な家に生まれた崔 永宜少年は「誰よりも強くなりたい」と願い続け、ボクシングやウェイトトレーニングで体を鍛え、朝鮮人の師から剛柔流空手を、東京では船越の松濤館空手を学んだ。戦後の米国興業の成功から“極真空手”を興し、“日本人空手家”大山倍達として世界的に大成功する。しかしそのため、韓国人としての出自を隠蔽し、巧みなメディア戦略で虚実織り交ぜた“大山倍達伝説”を自ら作り上げることになる。その課程を丹念な取材で追ったルポが『大山倍達正伝』だ。

 日本人に虐げられた琉球と朝鮮という出自を持つ二人だが、その対照的な生き方が興味深い。

 空手に限らず中国拳法や柔道、相撲など格闘技の強さの秘密をスポーツ科学の視点で解き明かしたのが『格闘技「奥義」の科学』だ。ボクシングのパンチや空手の突きの衝撃力を計測し、空手の正拳突きの威力が高い理由を、移動を伴った足運びにあると考察している。

 

根岸智幸
元編集者。現ウェブ屋。『BWインディーズ』で独立作家を応援中。Twitter:@zubapita

※本記事は週刊アスキー3/10号(2月24日発売)の記事を転載したものです。

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