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消える「日本製」服作り インターネットが取り戻す:大江戸スタートアップアカデミー

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大江戸スタートアップアカデミー

 週刊アスキー大江戸スタートアップチームが主催している、月イチセミナー「大江戸スタートアップアカデミー」。2月20日開催のテーマは「インターネット時代のものづくり」でした。

 いまファッション業界で、製造元がインターネットだけで洋服を宣伝・販売する直営モデルの新興ブランドが注目を集めています。背景には「日本製」が抱えている危機があります。今日はセミナーに登場してくれた、2つのブランドをスライドとともに紹介したいと思います。

 1つ目のブランドはケイミー(KayMe)。インターネットで、忙しい女性に向けた日本製のワンピースドレス(やわらかくて着やすい素材を使った「ジャージードレス」)を販売しています。

 現在、女性向けの洋服はお値段が高いか安いかの両極化が進み、さながらファッションの格差社会。ごそっと抜けた中間層に入るべく、ケイミーは直販を武器にこなれた価格で展開しています。

 日本の工場を使う理由は「多種・上質」。プレゼン、会議、内勤など、細かい利用状況を想定して多品種の製品が作れるのが1つ。着やすくても安っぽくない質の良さがもう1つです。

 日本のブランドが生産拠点を海外に移し、制作コストを下げて利益を確保する一方、国内の縫製市場は縮小の一途をたどってきました。国内縫製自給率は3%まで下がったといいます。

 しかし、働く女性たちにとって「働きやすく、見た目が良く、安い服」は重要な武器になります。女性たちの活躍を原動力に、国内工場の需要を「V字回復させたい」と毛見純子代表。

 働く女性を応援するというビジョンが共感を集め、Facebookのファン(いいね!)は2012年から2年間で1万5000件まで増えました。いまは銀座4丁目に直営店を構えるまでに至りました。

 もう1つのブランドはラファブリック(LaFabric)。インターネットでスーツやジャケットの仕立て、オーダーメイドができるオンラインテーラーブランドです。

 オーダーメイドスーツというとデパートのイメージから10万円台の高級スーツを想像しますが、ラファブリックは3万円台から注文できる格安のパターンオーダーを強みとしています。

 ラファブリックの強みは、複数の縫製工場をネットワークでつないで稼働状況が見られるシステムです。工場の稼働率が分かれば、製品の納期を短縮でき、価格も適正値まで下げられる。工場が増えれば増えるほど有利になる仕組みです。

 オンラインオーダーを始めた理由は、時代の逆張り。

 インターネットで洋服を買おうとすると、とにかく商品がたくさんあることに圧倒されてしまいます。ただ黒いジャケットが欲しいなあと思ってスマホで調べて「検索結果:990件」なんて言われたら、スマホをほっぽりだしてお店に行ってしまうはず。

 多すぎる選択肢は消費者にとって負担になりかねない。むしろ、消費者1人1人が欲しいと思える1枚を「レコメンド」していく、個人時代のものづくりがあるべきなのではないか。

 大量生産が前提のファストファッションブランドが圧倒的な強みを持ついまこそ、少量多品種の良質なオーダーメイドが強みを持つはずだ、というのが森雄一郎代表の見立てです。

 森代表が特に重要と考えているのは生産現場の情報化です。日本の縫製工場は設備投資や情報教育が進んでおらず、いまだに紙とFaxでやりとりする状況。時代に置き去りにされた現場を正しい商流に戻せば、かならず好循環が生まれるはずだと考えています。

 こうしたスタートアップ各社がそれぞれの角度から生産現場に光を当てていくことで、「日本製」の価値が高まり、雇用条件がよくなり、工場で働きたいと思う若者たちが増える。そんな夢のような日がいつか訪れることを日本人の1人として願っています。

セミナー第2部のトークセッションのレポートは後日掲載いたしますので、こちらもご期待ください。

写真:編集部

■関連サイト
Kay Me
LaFabric

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