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【私のハマった3冊】ほかの星との違いから地球を知る 月・惑星探査について考える3冊

2015年02月07日 11時00分更新

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惑星探査入門
著 寺薗淳也
朝日選書
1728円

月をマーケティングする
著 デイヴィッド・ミーアマン・スコット、リチャード・ジュレック
日経BP社
3456円

宇宙人類学の挑戦
編 岡田浩樹、木村大治、大村敬一
昭和堂
2376円
 

 昨年末、小惑星探査機『はやぶさ2』が打ち上げられた。これは5年前に地球に帰還した『はやぶさ』の後継機にあたる。今回の打ち上げとあわせて刊行された『惑星探査入門』では、はやぶさ2をはじめ現在各国が進める月・惑星探査についてくわしく解説されている。驚いたのは、日本の月・惑星探査の現状を著者が“迷走”と表現していることだ。じつははやぶさ帰還時のフィーバーからその後継機の計画が急速に進展する一方で、ほかの探査機の開発は停滞してしまったという。そもそもこの手の探査計画は、人々の生活には直接かかわりがないだけに支持を得られにくいようだ。

‘60年代のアメリカの宇宙開発もまた、必ずしも国民の支持を得ていたわけではないらしい。『月をマーケティングする』によれば、あのアポロ計画でさえ、世論調査で米国民の過半数が支持を示したのは、'69年のアポロ11号による人類初の月面着陸の直後だけだという。アポロ計画をマーケティングやPRの観点から振り返った同書では、宇宙船や月からのテレビ生中継が果たした役割も強調されている。ただし中継に対しては当初、ミッションを妨げると強い反対もあったとか。テレビの重要性に気づいていたのはNASAでもごく少数派だったのだ。

 アポロ計画ではまた地球が全球の状態で初めて撮られた。この写真は国境のない地球を印象づけ、グローバリゼーションの進展を生んだとまでいわれる。だがその進展は一面で、人類の社会・文化から多様性を奪っていった。『宇宙人類学の挑戦』では人類学者たちが、多様性の回復などさまざまな可能性を宇宙に見出そうとしている。他者を知ることで自らを知るという人類学の視点は、ほかの星との違いから地球を知るという惑星探査の目的とも重なる。宇宙人との出会いを想定しながら、コミュニケーションの本質を探ろうという同書の一つの試みも、けっして突飛なものではない。
 

近藤正高
ライター。ウェブサイト『エキサイトレビュー』などで歴史・科学からテレビ・アイドルまで幅広く執筆中。

※本記事は週刊アスキー2/17号(2月3日発売)の記事を転載したものです。

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