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1年の発売延期も影響なし!?セレボの生放送対応HDビデオスイッチャー『LiveWedge』発表会レポート

2015年01月21日 18時30分更新

 Cerevoは1月21日、HDビデオスイッチング機能と動画生放送機能をオールインワンにした生放送HDビデオスイッチャー『LiveWedge』の発表イベントを開催。直販価格は9万5237円(税別)。出荷は1月27日より順次開始します。

HDスイッチャー搭載10万円切りの生放送機材『LiveWedge』発表会レポート
LiveWedgeを持つセレボの岩佐琢磨社長。左手には、年初に北米で開催された大規模家電ショーCES2015の受賞トロフィー(ホームオーディオ/ビデオコンポーネンツ&アクセサリ部門)。

 LiveWedgeは、同社の主要プロダクトであるLiveShell、LiveShell Proの最上位機種にあたり、単体で4chの映像スイッチング、音声ミキサー、そして画質と安定性で定評のあるLiveShell Pro相当の生中継機能をコンパクトな1台にまとめたパッケージ。
 セレボは、2011年に発売したLiveShellの需要がいまだにあることから、手軽なライブ配信機材の需要は今後増えこそすれ減ることはない、と見ています。
 そうした背景のなかで「プロも唸る機能・性能を一般の人に」というコンセプトで作ったのがLiveWedgeです。”プロも唸る機能”とは、すなわち、4つのHDMI入力による映像ミックス、ワイプなどの切換エフェクト機能、PinP(ピクチャインピクチャ)、クロマキー合成機能などを指します。

HDスイッチャー搭載10万円切りの生放送機材『LiveWedge』発表会レポート
背面のインターフェース。HDMI4系統、出力は2系統(プログラムとプレビューが各1系統)。BGM取り込み用などの目的でオーディオINも1系統ある。
HDスイッチャー搭載10万円切りの生放送機材『LiveWedge』発表会レポート
iPadの操作画面。スライダーによる上下操作、回転系操作を織り交ぜた操作感はスマートデバイスでの操作ならでは。なお、Androidタブレット版のアプリも鋭意開発中とのこと。iPhoneに対応させる予定は現時点ではなし。

 セレボ岩佐CEOによれば、「50万円以下クラスで、ビデオスイッチャーと生放送を兼用できるハードはほぼないのではないか?」。プロ向けではなくハイアマチュア向けとしてもオールインワン環境自体が珍しいうえ、スタートアップならではの設計の工夫や、汎用のプロ向け機材ではなく生放送機材として機能の一部割り切りなどにより、本体価格でぎりぎり10万円を切る価格で実現しています。

 一部詳しい人は記憶にあるかもしれませんが、LiveWedgeは本来、2014年度初頭に発売になるはずだったもの。それが開発の遅れなどで紆余曲折あり、約1年遅れでの発売になりました。
 この1年の遅れについては、「価格も性能もアグレッシブだったのでリソースの調整に苦労したのがひとつ。また、発売にあたって必要な認証関係で課題があった」(岩佐氏)。
 セレボにとってラッキーだったのは、この1年の遅れの間に競合他社から同ジャンルの新製品が出てこなかったことでしょう。「市場は確実にあるのにどこも追随してこなかった。セレボがどうせ出すのがわかっているから、他社はどういう競合製品を当てるか悩んでいたのかもしれない。結果として(市場変化なく)ただ、リリースが1年ズレたというだけの形」(岩佐氏)とホッとした様子を見せていました。

■一部機能は後日アップデートでの提供

 iPadを操作画面として使い、本体には最低限のボタン類しか設けないことが操作面、デザイン面の大きな特徴。これにより、直感的で動的なUIを実現しています。たとえば、映像の切換をタップでできるほか、PinPをやりたい場合は映像チャンネルをドラッグして、重ねたい映像の上で指を離す、といったことです。

 無線LAN運用となると大規模なイベントなどでの混信が心配ですが、5GHz帯に対応していることで、CES2015、InterBEE、NABといった国内外の大規模イベントでのテスト実績はまったく問題なかったとのこと。

 なお、機能の一部は3月中以降を目処に順次ファームウェアアップデートでの提供になります。具体的には、

・SDXCの読み書き(SDHC以下のカードの読み書きは現状で可能)
・録画機能の提供(使いかたによって録画機能と排他になる機能があるため、LiveWedge公式の情報拡充を待ちましょう)
・4:3映像のレターボックス表示への対応(現状でもインポートはできるが、16:9に合わせて間伸びした表示になってしまう)

 以上3つ。

 なお、WiFiでの接続は下記3つのパターンで可能。iPadとLiveWedgeを直接WiFiでアドホック的にWiFiで接続したり、用意したルーターの下にぶら下げたり、LiveWedgeは有線接続してiPadのみ無線接続など環境に応じて選べます。

HDスイッチャー搭載10万円切りの生放送機材『LiveWedge』発表会レポート
HDスイッチャー搭載10万円切りの生放送機材『LiveWedge』発表会レポート
HDスイッチャー搭載10万円切りの生放送機材『LiveWedge』発表会レポート

■タッチ&トライでわかった機能制限と使い方

 10万円というアグレッシブな価格の製品ゆえの機能制限、割り切りの部分は気になるところ。短時間触ってみた限りで気づいたのは、

・ミックスした映像の音声モニターは、HDMIアウトで聴く必要がある(今後iPad側で聴けるような改良は検討中とのこと
・生放送を開始すると、エンコーダーチップの制限でiPad上に映像のプレビューが表示されなくなる(=入力している映像のプレビューを見るため、いわゆる「返し」の液晶モニターが必要になる)
・SDカードで素材を読み込んでも、1chぶんの映像入力とみなされる(=1chぶんの自由度確保のためPCをHDMI接続したほうが良さそう)
・テロップ機能はないが、HDMI入力にPCからテロップ入りのクロマキー合成用映像を出力すれば、似たことは可能

といったところ。フル機能なんでも揃ってますというわけではないけれど、仕様上の割り切りを理解した上で、100万円級の機材のような機能については創意工夫で賢く実現するといった製品という感触でした。

 もっとも気になったのは音声モニターの部分で、本体に音声アウトがなくiPadでも現状はモニタリングはできないため、HDMI入力付きで音声出力ができる、スピーカー付き液晶モニター(もしくは外部HDMI入力付きの小型テレビ)のような機材とセットで使うことが必須になるのは注意点でしょう。

HDスイッチャー搭載10万円切りの生放送機材『LiveWedge』発表会レポート
3カメラ+PCからの映像出力を使った生放送の最小環境イメージ。高画質で小型なカメラ(アクションカメラ)などと組み合わせれば、アタッシュケース1つで配信卓(LiveWedge)までまとめて持ち運べる軽量な環境がつくれる。
HDスイッチャー搭載10万円切りの生放送機材『LiveWedge』発表会レポート
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LiveWedge本体(右)。表面のフィニッシュや昨年の試作からはずいぶん良くなった。右はiPadでの操作画面のイメージ。

HDスイッチャー搭載10万円切りの生放送機材『LiveWedge』発表会レポート
初公開の化粧箱に入ったイメージ。ACアダプターは別体式。
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本体側面。最終版の表面フィニッシュがよくわかるカット。楔型の形がユニークです。
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背面の入力端子。実際の生放送では無用なトラブル防止の意味でも有線LANを使う頻度は高い。

■生放送の需要は拡大している?

 生放送の需要がのびる、という大きなトレンド自体には異論はありませんが、10万円とはいえ4カメラ切換の本格配信をみんながやりはじめるのか?という点は素直に腹落ちしない部分はあるかもしれません。

 岩佐氏によれば、狙っているのは、既存のイベントスペースや企業の生放送などの機材の置き換えにあるようです。あれこれ工夫をして作った生放送機材や、生放送はしないまでもPinPなどの各種映像表現は使いたい、でも予算はあまりない、というケースです。

 岩佐氏が普通は想像もしない一例として挙げたのは、韓国や北米の教会。六本木ヒルズ1フロア、みたいな広いスペースを使った教会では、やはり映像を絡めた環境が必要になってきます。これに限らず、一般的な需要予測では想像もしないところに安価で本格的な生放送機材の要望はあって、セレボのいう「グローバルニッチ」の観点でみれば世界中ですごい量の需要がある、と語ります。

 LiveWedgeの出荷目標については、市場分析から逆算した数字ではないとしながらも、「3年前に発売したLiveShellが、ディスコンにしようと思ったのにいまだに需要がある」こと、またLiveShellシリーズが累計1万台以上の出荷になっていることなどを挙げ、一般の大手家電製品と違い、製品サイクルとしては同様に3年規模の長いサイクルになり、期間全体を通してLiveWedgeは1万台ほどの出荷になるのではないか、と自信を見せています。

HDスイッチャー搭載10万円切りの生放送機材『LiveWedge』発表会レポート
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左はLiveShell。2011年発売というのは一般的なIT製品としては古い印象だが、競合他社がないことでいまだに新規ロット生産をしている。シリーズ累計出荷は1万台を超えていることを公表したのはおそらく初。

HDスイッチャー搭載10万円切りの生放送機材『LiveWedge』発表会レポート
Cerevoは売り上げの半分以上が海外。ローカライズしているわけではない国からも問い合わせや顧客がいるというのは、まさにグローバルニッチ。なお、この売り上げ比率のため円安の影響は最小限にとどまっているとのこと。

●関連サイト
Cerevo LiveWedge公式サイト

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