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「象は記憶力がいい」Evernoteの外村仁氏が日本人には意外な象マークの真実を語る

 今週の進藤晶子氏対談『え、それってどういうこと?』にはEvernote日本法人会長外村仁さんが登場。Evernoteのなんたるかや後進の育成にこめた思いを語ってもらいました。

え、それってどういうこと?

外村仁(ほかむらひとし)
'63年熊本県生まれ。東京大学工学部卒業後、戦略コンサルティング会社ベイン&カンパニーで外資系および日系企業の経営コンサルティングに従事。'92年よりアップルコンピューターで市場開発やマーケティング本部長職などを歴任。'97年に同社を休職し、フランスのI NSEAD 、そしてスイス国際経営大学院(IMD)で MBA を取得。2000年、シリコンバレーにてストリーミング技術のベンチャーGeneric Mediaを共同創業。その後はFirst Compass Groupのジェネラルパートナーなどを務める傍ら、創業間もない企業数社のアドバイザーとなり、2010年よりEvernoteにて現職。

Evernoteに描かれる象マークの意味は?

進藤:Evernoteのマークって、どうして象なんですか?

外村:あ、いい質問ですね。でもその質問、英語圏では絶対されないんですよ。彼らは「象といえば」とすぐにイメージが浮かぶので。

進藤:どんなイメージでしょう。

外村:「Elephants never forget」ってことわざもあって。象はすべての動物のなかでもっとも記憶力がいいとされているんです。だから英語圏で育った人にとっては、象といえば「物覚えがいい」ということにつながるんですよ。

進藤:なるほど、それで象!! 今日はまず「Evernoteとは」というところからお願いします。

外村:たぶん週アスの読者ならほとんどのかたが使ってくださってそうですけどね。“オンラインメモ”とひと言でまとめちゃう人もいますが、それはちょっと違って。Evernote自体も、僕が手伝い始めたあたりからどんどん進化していまして。いまでは仕事だけでなく私生活やボランティア、ライフワークなども含めた知的作業をするときにアシストしてくれるプラットフォーム的なものだと考えています。

進藤:知的作業のプラットフォーム。

外村:だから新しいスローガンは“すべての作業を行なうワークスペースである”なんですよ。立ち上げ当初は“人間の脳を助ける第二の脳になりたい”って言いかたをしていたんです。やっぱりいちばん人間ががんばらなきゃいけなくて、でもなかなか上手くいかないものといえば“記憶”じゃないですか。

進藤:ますます難あり、です(笑)。

外村:だから、いろいろ入ってくる情報を“整理しておいて”そして必要なときに“いかに思い出しやすくするか”がEvernoteなんです。日本人って整理したり保存することが好きだからか、日本ではかなり初期から人気でした。なので、全世界から見るとユーザーの中でアクティブユーザー比率がいちばん多いのは日本人。プレミアムユーザー比率も日本はすごく高い。おもしろいのは、日ごとの集計を取ると平日に比べ土日は全世界でガクッと稼働の数字が下がるのに、日本だけあまり下がらないんですよ。

進藤:週末も?

外村:なぜだろうとツイッターを見てみたら「今日は休みなので朝からEvernoteのノートを整理する」とつぶやいている人が大勢いて。これってすごく日本人 ぽいですよね。

進藤:まじめだ(笑)。

外村:平日に入れておいたものを週末にきっちり整理しないと気が収まらないなんて、日本人らしい美徳だな、すごいなーって。でもね、溜めておくことが目的じゃないんですよ。なんのために保存するかといえば、それを必要なときに引き出して新しいものをつくるため、新しい発想をするための保存なんです。ですから、ある程度大事な情報を溜めたら、今度はいかにそれを使って仕事や日々の暮らしを楽にするかということをもっと意識すると、もっと便利さがわかると思います。

進藤:ビジネスマンだけでなく学生ユーザーも多いそうですね。彼らはどう使っているんですか。

外村:ひとつのノートを友だち同士でシェアして、みんながそこにコメントをつけて、共同でよりわかりやすいノートをつくるとか。スキャナーやスマホのカメラでプリントや板書された文字を取り入れると、クラウド側で処理して、その画像に含まれる文字が数分後には検索できるようになりますしね。そうすると、こっちはWordドキュメント、こっちはWebクリップ、こっちは紙、ってさまざまな状態である資料もファイルの属性ごとに分けるのではなく全部同じところにぶちこめる。そのうえいろいろ検索したりつないだり、ひとつのノートにしたりもできるんです。ま、小学校のときに壁新聞をつくりましたよね。ここに写真貼って、文章書いて、切り抜きを入れて、みたいな。そんなふうにやりたいこと中心にノートをつくれます。

進藤:なるほど。Evernoteなら、これまで自分がやってきたこと、考えたことをムダにせずにすむということなんですね。

え、それってどういうこと?
外村仁氏

シリコンバレーで日本のよさを広めたいんです

進藤:今回帰国された目的は。

外村:日経新聞とコンテンツで提携する話と2000万米ドル出資いただく話の記者発表をしに来ました。業務と資本の両方で提携するわけなので、ここまで来るのはかなり大変でしたよ。

進藤:そうでしょうね。

外村:それと同時に伊藤園とのキャンペーンも開始しました。“お〜いお茶”って、アメリカのボトルには“ITOEN”って書いてあるんですね。それを見ていて思いついたんです。シリコンバレーでいま、大勢のエンジニアやクリエイターが甘い飲み物を飲むのをやめて“お〜いお茶”を飲んでいるわけですよ。そこで「いまをときめく最先端の人たちが飲んでいるんだから、ぜひIT業界を狙ったキャンペーンをやるべきです」って話をしたんです。しかも「これは伊藤園の創立のころからの運命です!」ってiPadでプレゼンして。“ITOEN”のロゴが真んなかで“IT”と“ONE”に分かれて“IT応援”になると、みんな「おお!」って言ってました(笑)。

進藤:アハハ、おもしろい! 今後もそういったコラボレーションはありそうですか。

外村:いま言えるものはこれといってないんですが。でもEvernoteって、歴史的にも日本と親和性の高い会社なのでまたなにかあるでしょうね。CEOのフィル・リービンをはじめ、幹部が日本好きだというのもあるし。僕が5年前に手伝い始めたときからもともと日本好きだったのにさらに、「こんなすごい人がいる」とか、「ここに行ったらこんなうまいもんがある」とか、日本のいいところを教えまくっていたら、彼らは彼らで向こうのインベスターや投資家に、向かって「日本はこんなにすばらしい」なんて言ってまわってくれるんですよ。僕の人生の裏ミッションは、彼らみたいに「日本はいいよ」といってくれるシリコンバレーの有力者を増やすことなんです。

今回の聞き手
進藤晶子(しんどうまさこ)
'71年9月10日生まれ、フリーキャスター。著書に、本誌連載をまとめた『出会いの先に』(小社刊)がある。
http://www.shindomasako.jp/

え、それってどういうこと?

■関連サイト
大切な仕事のためのワークスペース | Evernote

■撮影協力
赤坂グランベルホテル

週刊アスキーで全部読めます!
12月16日発売の週刊アスキー12/30号(No.1009)では、外村仁さんを直撃したインタビューをすべて掲載。

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