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「ソフトバンクは金の卵を産むガチョウになりたい」と語る孫社長

2014年11月05日 08時00分更新

 ソフトバンクは、2015年3月期第2四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比57.9%増の4兆1043億6400万円、営業利益は同19.1%減の5966億5800万円で増収減益。ただし、前年同期はガンホーとウィルコムを子会社化したことによる一時益が発生しており、そのぶんの2490億円を除くと同22%増となり、増収増益となる。売上高、EBITDA、営業利益など、各指標で過去最高を達成し、順調だった。

 ただし、米国のスプリント(Sprint)事業は立て直しに時間がかかるとして、営業利益の予想を1000億円下方修正。連結の通期予想では営業利益1兆円を9000億円とした。孫正義社長は、「スプリントの業績以外は、ほとんど年初の読み通りに推移している」と話し、好調な決算をアピールする。

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↑ソフトバンクの孫正義社長。
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↑決算のサマリー。

 セグメント別では、移動通信事業が売上高が同36.6%増の1兆8934億100万円、利益が同12.7%増の4016億3500万円で、主に米ブライトスターとスーパーセルの売上高が参入されたことによるもの。ソフトバンクモバイル自体は、端末の出荷台数が同21万2000件減の596万1000件と減少したものの、契約数の増加に伴う売上増がカバーして増収。それに加え、端末出荷の減少による営業費用の減少によって利益を伸ばした。また、第2四半期にはiPhoneの販売が好調に推移したことで、販売数は増加した。孫社長も「アップルからの供給があればもっと売れている」という状況で、販売は好調としている。

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↑連結の売上高やEBITDA、営業利益、いずれも好調で、国内第1位の地位をキープ。

 ARPU(ユーザー1人当たりの平均収入)は同260円減の4260円で、前期比でも20円減少となっている。LTE端末の増加でデータARPUが増加したが、ARPUの低い端末が伸びたこと、音声端末の通話利用が減少したことでARPUは減少した。ただ、第1四半期までは公表していた音声ARPU、データARPUの分類がなくなり、全体のARPUしか公表しなくなったため、それぞれの動向がわからなくなっている。第2四半期の解約率は前年同期比0.15ポイント増の1.27%と高止まり。非音声端末が2年契約の満期を迎えたこと大きな要因。

 国内事業はネットワークの改善が進み、「集中的にやってきた設備投資がピークを越えた」と孫社長。今後は設備投資額は抑制するため、「年間数千億円のフリーキャッシュフローをコンスタントに稼いでいける」と強調。「現金を稼ぐ、収穫の時期が来た」(孫社長)という考えだ。

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↑設備投資額を順次削減し、フリーキャッシュフローが創出できる。

 スプリント事業は、売上高は同134.4%増の1兆7834億3600万円、利益は952億4600万円増の767億2600万円となり、前期の赤字から黒字化を達成した。売上高の大幅増は、前年上期は買収にともなって2カ月分しか計上されず、今期は上期全体が反映されたため。旧式の通信設備の償却が終わり、ネットワークの強化・改善でローミング費用やネットワーク費用の減少が利益に寄与した。

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↑MNPや優良顧客など、改善の兆し。

 携帯電話自体は45万3000件の純減だが、自動車向けモジュールなどが増加し、全体では純増。ただ、新CEOとしてマルセロ・クラウレ氏が就任して以降、MNPが純増に転じ、さらに「支払い実績の悪い」(同)顧客でも契約を増やしていたが、審査を厳しくすることで、「優良顧客(プライムカスタマー)」を増やす方針に変更。そのため顧客獲得コストも増加したが、「中長期的には業績が好転する」と孫社長。

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↑増益を維持。
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↑スプリント事業で1000億円の下方修正をしたため、連結予想も1兆円から9000億円に下方修正。

 そのほかの事業では、固定通信事業が売上高は同2.2%減の2643億300万円、利益が同11.4%減の533億4600万円、インターネット事業が売上高で同1%増の1983億500万円、利益が同5.6%減の895億2500万円となった。

 中国アリババがニューヨーク株式市場に上場し、業績も好調だが、孫社長は2020年代には中国市場が国内総生産(GDP)で米国を超え、2050年には2倍以上の市場規模になるとの予測を示し、今後のさらなる成長を期待。同様に、インド市場も2030年代半ばに米国を超え、2050年代には中国と並ぶ2大経済圏に成長するとみる。「10年後20年後30年後を観て今日の決断をする」と孫社長。

 そのため、新たにインド市場の投資を進める。今後10年で1兆円規模の投資を実行する「準備はできている」と孫社長は強調。まずはインド最大のEコマースサイト『snapdeal.com』に対し、6.27億ドルを投資して筆頭株主となった。さらに配車サービスのOLAに対しても2.1億ドルで筆頭株主に、同様に成長が期待されるインドネシアでは、Eコマースサイト『tokopedia』に1億ドルの投資を実施し、筆頭株主となった。

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↑7年で30倍と成長しているインドのsnapdeal.comの筆頭株主に。
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↑インドネシア最大のEコマースサイトtokopediaも筆頭株主に。

 ソフトバンクは、これまで国内外のインターネット企業に対して3877億円の投資を進めてきたが、アリババやヤフージャパンを始め、合計で11兆6699億円という多大なリターンがあったと胸を張る。「ベンチャー投資は、一般的にはハイリスクハイリターンと思われるだろうが、ソフトバンクの実績はそれほどハイリスクでもなかった」と実績をアピール。

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↑ソフトバンクのこれまでの投資。

 ソフトバンク自身の時価総額約10兆円に対し、アリババやヤフーなどを積み重ねると、それ以上の額になるとして、それらの資産が今後も価値を生むと話す。孫社長はこうした資産が“金の卵”であり、イソップ童話の“金の卵を産むガチョウ”に引っかけて、「ソフトバンクは金の卵を産むガチョウになりたい」と語り、今後さらに“金の卵”を増やしていく意欲を示した。

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↑ソフトバンクの時価総額を超える資産を抱えており、今後さらなる拡大を目指す。
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↑ソフトバンクがガチョウとなり、金の卵を産み続けていきたいと孫社長。
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