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3G通信を捨てVoLTEに移行したauの戦略(石野純也氏寄稿)

2014年10月28日 07時00分更新

 auは12月からVoLTEを開始する。対応機種は『isai VL』と『URBANO』。「Always 4G LTE」とうたう2機種は、3GのCDMAに非対応。通話から通信まで、国内はすべてLTEを利用する。

 VoLTEとは、LTEのネットワークに、データとして音声を流す仕組みのこと。IP電話との違いは、電話番号も割り振られ、専用の帯域が確保される点だ。国内では、すでにドコモがサービスを開始し、冬モデルでは、iPhone以外の全スマホがこれに対応する。ソフトバンクも『AQUOS CRYSTAL X』と同時にVoLTEを開始する予定だ。

 基本的な特徴は、従来の音声通話より広い帯域をカバーし、より高音質になること。LTE上でそのまま音声通話を実現するため、発着信がスピーディーになるのもVoLTEのメリットだ。一方でauは「高音質通話だけで終わらせてはおもしろくないとハッパをかけてきた」(KDDI代表取締役社長 田中孝司氏)というように、その上に新たなコミュニケーションサービスを載せてきた。

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↑LTE上で音声通話を行なうVoLTEを導入する。
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↑50Hzから7kHzまでの音を表現でき、従来よりクリアーな音声通話を楽しめる。
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↑発着信が速いのも、VoLTEの特徴だ。

 それが“シンク”機能だ。シンク機能は“画面シンク”、“手書きシンク”、“位置シンク”、“カメラシンク”の4つに分かれるサービス。対応端末どうしだと、表示している画面や、手書きした文字や絵、位置情報、カメラに写した映像を、そのまま相手と共有することが可能だ。

 『isai VL』、『URBANO』の2機種はこれに対応するため、音声通話のユーザーインターフェースを一新。着信があるとポップアップでウインドウが現われ、表示している画面に重なる。スマホで行なっている作業が妨げられず、そのまま電話に出られるというわけだ。

isai VL
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URBANO V01
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受話時も作業は継続可能
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閲覧中のサイトを共有
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↑画面やカメラの映像を共有することが可能。そのほか、手書きや位置情報もシンクできる。

 また、最大30人と同時通話が可能な“ボイスパーティ”にも対応する。この機能は、相手がVoLTE対応端末でなくてもよく、複数人での会議などに使うことが可能だ。

 auはVoLTEの開始にあたり、LTEのエリア拡大を急いできた。3Gとして通話やデータ通信に使うCDMA2000 1Xは、国際的にも採用キャリアが少なく、対応する端末も少なくなりがち。周波数利用効率の面から見ても、LTEに一本化したほうが有利。ドコモは3Gエリアに入ると音声通話がVoLTEから通常の回線交換に切り替わる“SRVCC”を導入しているが、このしくみを入れたくなかったのがauの考えだ。

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↑最大30人での同時通話が可能な『ボイスパーティ』。

 田中氏が「いずれ3Gのネットワークをなくしていきたい」と語るように、今後発売される端末は、VoLTE対応を増やしていく方針。スマホはもちろん、「フィーチャーフォンもロードマップには入っている」(同)という。田中氏は「最後にM2Mの3Gモジュールが残るので、2020年ごろまで3Gを止めるのは無理」と述べているが、いずれはネットワークもLTEに一本化していく。

 ただし、isai VLはRAMを3GBに増やすなどの機能は向上しているが、基本的には夏モデルの『isai FL』のマイナーバージョンアップ。URLBANOも、スマートソニックレシーバーこそVoLTEの音域に合わせてチューニングしているというものの、耐衝撃性能や大容量電池といったウリは、夏モデルと共通のものだ。

 グローバルモデルとして導入した、『Xperia Z3』や『GALAXY Note Edge』はVoLTEに非対応。クリスマス付近での発売が予定されているFirefox OS搭載端末も「VoLTEには対応していないのではないか」(同)といい、限定的な端末でスタートすることがうかがえる。

 これらの機種は、アップデートでもVoLTEに対応しない方針。北米などでVoLTEが利用できるiPhoneについても、「いつかは(アップデート)されると思うが、相手があることなので具体的な話については差し控える」(同)と、対応はアップル次第となっている。

 先行発表された『Xperia Z3』や『GALAXY Note Edge』、『GALAXY Tab S』を入れても、Androidの冬モデルは全5機種と、ドコモに比べ少々ラインアップが手薄だ。これは、「春モデルは別途発表する」(同)ため。2月にシンク機能が追加されることを考えると、春モデルでVoLTE対応機種が増える可能性は高い。auがVoLTEに対して、本格的にアクセルを踏むのはもう少し先になりそうだ。

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↑LTEの実人口カバー率は99%を超えている。
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↑VoLTEの導入や冬モデルについて語る、KDDIの田中孝司社長。

(10月28日15:50更新)本文を一部追記、画像キャプションを追加しました。

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