2014年10月31日20時00分

音楽×IT×ガジェット=国際展開!! ビートロボ浅枝大志氏インタビュー

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■音楽ガジェットが業界を変えられるのか
 2013年11月、世界的に有名な米国のロックバンドであるリンキン・パークと日本のスタートアップ企業“ビートロボ”とのコラボが話題を呼んだ。コラボの核となったのは『プラグエア』という小型ガジェット。スマホのイヤホンジャックに挿すだけで、専用アプリと連携して音楽や映像などを視聴できる製品だ。元々、ネット上のソーシャル音楽視聴サービスからスタートしたビートロボは、なぜプラグエアというハードウェアをつくることになったのか。本社は米国にあるビートロボの日本オフィスで、彼らが目指す未来のビジョンをたずねた。

 週刊アスキー11/11号 No1002(10月28日発売) 掲載の創刊1000号記念連続対談企画“インサイド・スタートアップ”、第3回は音楽ガジェット『プラグエア』を展開する“ビートロボ”の浅枝大志ファウンダー&CEOに、週刊アスキー伊藤有編集長代理が話を聞いた。

ビートロボ

↑ネット上でロボットのアバターを介し、友人と自分の好きな音楽を紹介し合えるソーシャル音楽視聴サービス。

■サウス・バイ・サウス・ウエストに参加決定したのは会社はもちろん、製品すらもない時期でした

伊藤 実は僕、以前に一度お会いしてるんですよ。テキサスで開催されたSXSW2012の取材時に。詳しくは話せなかったんですけど、日本から出展してたスタートアップというのが印象的で名前を覚えてました。

浅枝 ああ、2年前に取材にいらしてたんですか!? 僕らはピンクのパーカーを着てがんばってましたよ(笑)。

伊藤 覚えてます(笑)。会社設立は2012年2月22日ということなので、SXSW直前ですね。

浅枝 そうです。ただ、参加申し込みの締め切りは前年11月なんです。そのころはまだ会社はもちろん、製品すらもない段階だったけれど、とにかく意欲はありましたね(笑)。

伊藤 いきなり良い話。「カマしてやるぞ!」という感じですか。

浅枝 今思うと、かなり無謀な行動でしたね。

ビートロボ ビートロボ ビートロボ

↑2012年3月に開催されたエンターテインメントの世界的祭典SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)に出展。ビートロボのサービス開始から、まだ2ヵ月しか経過していない時期だ。

伊藤 ソーシャル音楽視聴サービスの“ビートロボ”は、2011年12月にサービスを開始しているので、SXSWの時点ではもう動き出していたわけですね。

浅枝 はい。ビートロボのサービスは、2011年夏ごろに仲間内で週末だけ集まって、約2ヵ月間で開発したんです。現在の会社のみんな、それぞれ前職の会社に在籍中だったので。

伊藤 ビートロボは、ネット上でロボットのアバターを介して、友達と自分の好きな音楽を紹介し合えるサービスですよね。そこから発展して、次の製品である『プラグエア』というガジェットにつながっていった?

浅枝 “音楽をつかさどるエージェント”というのが、ビートロボのコンセプトなんですよ。言うなれば、友達から音楽をもらうような概念。現実世界でもできたらおもしろいよね、というのが、プラグエアの開発のきっかけですね。

伊藤 以前なら音楽のやりとりはCDでやっていたけれど、今はそれが難しくなっている。だから、プラグエアが取って代われるんじゃないか、と。

浅枝 ビートロボのロボットを現実世界でポンと手渡しできたらいいよね、というイメージです。CTOの竹井が「イヤホンジャックに挿すガジェットはどうかな」とアイデアを加えて、「それ、いいね」と話していたら、1週間後に「3Dプリンターでつくってみたけど、どう?」と。

伊藤 すごいスピード感。

浅枝 まだ中身はできてなくて、外側だけでしたけど。でも、その試作品でビジネスコンテストに参加してみたら、優勝してしまったんですね。さらに、当時立ち上がったばかりのクラウドファンディングサイト『キャンプファイヤー』に出品したら、あっという間に70万円を集めて成立してしまった。展開の早さから、音楽交換の需要はあるんだなと実感できましたね。

ビートロボ

↑イヤホンジャックに挿す『プラグエア』。写真上から時計回りに)TM NETWORK30周年ツアー、東京アイドルフェスティバル2014 、浜崎あゆみのシングル曲『XOXO』の配信で採用されたプラグエア。デザインも異なる。

伊藤 なるほど。そんなにトントン拍子に進めば、手応えを感じますよね。そのあと、最初にコラボしたのが世界的な人気ロックバンド、リンキン・パークだった。すごい展開ですけど、どういう経緯で?

■リンキン・パークのビジネスチームが「これは未来のUSBだ!」と言ってくれた

浅枝 本当に偶然なんですよね。まず、リンキン・パークが“サマーソニック2013”出演のために来日していました。同時期に僕が、SXSWの紹介イベントでスピーカーを務めました。そのイベントを主催したのが、ビートロボに投資してくれているサイバーエージェント・ベンチャーズさんで、リンキン・パークのビジネスチームが「日本のスタートアップってどうなの?」ということで、彼らのオフィスを訪問していたんです。そこで、僕らの投資担当者を通じて引き合わされまして。

伊藤 じゃあ、前もってアポを取ったわけではないんですね。そこでプラグエアのプレゼンをして、すぐに理解してもらえたんですか?

浅枝 製品のプロトタイプを見せたら、「これは未来のUSBだ!」と言ってくれて。その2ヵ月後に、リンキン・パークのファンクラブグッズとして販売されたんです。

ビートロボ

↑リンキン・パークとのコラボ。ファンクラブ会員向けの限定グッズは、わずか2ヵ月で発売までこぎつけた。

伊藤 へえー、すぐに先見性を見抜く先方もさすがですね。ところで、プラグエアの仕組みについてもお聞きしたいんですが、プラグエアはスマホのイヤホンジャックに挿すだけで動くんですよね。通電するのはわかるけれど、チップが動作するものなのかと不思議です。電源はどうなっているんですか?

浅枝 スマホのイヤホンジャックから電源を取っているんです。原理としては、 プラグエアがイヤホンジャックに挿されると、正弦波を送ります。それを昇圧して電力に変えているわけです。

伊藤 なるほど。ということは、音量によっても供給電力が変わってくる?

浅枝 そのとおりです。でも難しいところで、アンドロイドはスマホの機種によって波形にバラツキがあるんですね。今、CTOの竹井ががんばって調整しているところです。

伊藤 その技術を採用することの利点は何ですか?

浅枝 プラグエアが電池を内蔵しなくて済むことで、電池切れによって価値がなくなってしまわないという点ですね。

伊藤 少し専門的にいうと、プラグエアがやっていることは、暗号鍵のやりとりですよね?

浅枝 暗号化したシリアルナンバーをサーバーに送って、コンテンツをダウンロードする仕組みです。

伊藤 使い方としては、専用アプリと組み合わせて使うと。

浅枝 アプリを起動してプラグエアを挿すと、サインアップが一切不要でコンテンツが読み込まれます。

伊藤 登録不要! コンテンツはアプリ内に保存ですか?

浅枝 感覚としては、CDからMP3に変換するのに近いです。

伊藤 じゃあ、誰かのプラグエアを借りて、中身をコピーすることもできるんですか?

浅枝 コンテンツの提供側がどうしたいかで変わってきます。CDを完全再現した形にすると、コピーしたい放題ですね。たとえば僕がもっている10曲入りのプラグエアを伊藤さんに渡したら、伊藤さんは10曲すべてをコピーできます。

伊藤 一方で、コピーを制限することもありうる。

浅枝 “シェア”という概念を取り入れられるんですね。たとえば、10曲中3曲はコピーできます。または、10曲聴けるけれど制限時間が60分などです。

伊藤 そういう管理ができる。

浅枝 つまり、“トラッカブルなCD”がつくれるんですね。CDの“IoT(Internet of Things:モノのインターネット)化”とも言えると思います。

伊藤 それはわかりやすい。

浅枝 CDというのは、提供されたあとにどうなっているかが把握できないですよね。何回再生されたか、友達に貸されたか、中古CD屋に売られたか、などの情報は得られません。これはダウンロード販売でも同じです。ストリーミングサービスは把握できるけれど、その情報は表に出ないことが多い。

伊藤 たしかに、そうですね。

浅枝 “IoT”の重要な概念は、“外から状態がわかる”と“外からコントロールできる”の2つなんですね。たとえばエアコンのIoT化だったら、外出先からでも電源が入っているかどうかがわかり、スイッチを入れることもできる。

伊藤 つまり、どういうふうに利用されているかを把握できて、あとからコンテンツを足したりもできるCDをプラグエアは実現しようとしている、と。

浅枝 今は音楽に限らず、いろんなコンテンツがデジタル化されていますけど、そのコンテンツに触れるための物理的なツールが必要だろう、と。それを僕らはつくりたいと思っているんです。

伊藤 そこから思い出したんですが、米国のディズニーランドには“フォトパス”というカードがあるんです。敷地内でカメラマンに撮影してもらった写真がそのカードのIDに集約されて、あとでサイトにアクセスすると写真を購入できる。便利な仕組みなんですけど、考えてみたら、プラグエアのようなグッズ型だとコレクション性もあるし、しかも簡単。

浅枝 そうです。そういうのをやりたいんですよね。

伊藤 プラグエアに入れるコンテンツは、音楽に限らないわけですよね。どんな利用シーンを想定しているんですか?

浅枝 たとえば、アーティストのファンクラブグッズとしてプラグエアを事前に販売します。ライブの前には、セットリスト情報とかバックステージ映像なんかを配信する。さらにライブ後には、そのライブの映像が手に入るとか。

伊藤 それ、欲しいなぁ。コンテンツの提供側には、どんな活用法があるんでしょうか?

浅枝 プラグエアに楽曲を入れて配布や販売をしたときに、楽曲が何回再生されたかとか、どこのユーザーに聴かれているかといった情報を把握できるんですね。たとえば、配信した楽曲のヘビーリスナーがドイツに多い、というようなことがわかる。そうすると、「じゃあドイツツアーをやってみるか」という流れにもなるわけです。

伊藤 利用者の属性がわかってマーケティングに活用できるメリットは大きいですね。ところで、ビートロボの本社は米国ですが、やはりグローバル展開を意識しているんですか?

■グローバル展開に向けて意識しているのは人材面日本人で固まってしまう前に国際化をしていきたい

浅枝 僕自身が米国育ちの帰国子女だというのもあるんですが、グローバル展開は最初から視野に入れています。最近、特に意識しているのは人材面で、日本人で固まってしまう前に国際化をしていくべきだな、と。

ビートロボ ビートロボ

↑ミーティングは中央に各自がイスを持ち寄って行なう。浅枝氏によると「イスにはお金をかけました」とのことだ。プラグエアを開発した、竹井英行CTOの専用デスク。彼が3Dプリンターで試作品をつくったことから始まった。

伊藤 どういう国の人が在籍しているんですか?

浅枝 最近は『アングリーバード』の日本CEOだったフィンランド人が、COOとして会社に加わりました。あとは、初の女性社員として台湾人の女性も。

伊藤 じゃあ、社内ミーティングは英語なんですか?

浅枝 少しずつ、そうし始めました。楽天とかファーストリテイリング(ユニクロ)が英語公用語化を打ち出したときには、他人事みたいに思ってましたけどね(笑)。

伊藤 「いま、ウチがやってるよ」みたいな(笑)。

浅枝 でも、そうしないと世界中の優秀な人材を雇えない。僕らとしては、どんな国籍でも会社を育ててくれるなら大歓迎なんです。

伊藤 リンキン・パークとのコラボや米国登記の本社とか、最初から目線は海外なんですよね。次の展開も早そうですね。期待してます。

ビートロボ

ビートロボ ファウンダー&CEO
浅枝大志

1983年生まれ。秋葉原でのメイド美容室の運営や『セカンドライフ』への企業参入に対するコンサルタント業務などを経て、2012年2月に米国デラウェア州でBeatrobo,Inc.を設立。

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