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【私のハマった3冊】「飛ぶ」とは何か 歴史と科学から人類と飛行の関係をふりかえる

2014年10月06日 14時00分更新

998BOOK

飛行機技術の歴史
著 ジョン・D・アンダーソンJr.
京都大学学術出版会
4860円

飛行機物語 航空技術の歴史
著 鈴木真二
ちくま学芸文庫
1296円

飛ぶ力学
著 加藤寛一郎
東京大学出版会
2700円
 

 オーヴィル・ライト(ライト兄弟の弟)が死んだとき、ニール・アームストロングは、既に17歳だった。人類初の有人動力飛行から、人類初の月面着陸まで、驚くほど短い。今回は、歴史と科学の両面から、人類と飛行の関係をふりかえる3冊を選んだ。

 素材、動力、デザインの試行錯誤を経て、人類が飛行をどのように理解していったかを知るなら、『飛行機技術の歴史』が最適だ。ダ・ヴィンチの羽ばたき機から始まって、空中蒸気車、グライダー、そしてライトフライヤー号まで、具体的に飛ぼうとしたドラマが描かれる。ライト兄弟以降は、戦争道具としての歴史になる。飛行機というと旅客機が浮かぶが、兵器としての役割こそが、技術開発を推し進めたことがよくわかる。

『飛行機物語』は、飛ぶメカニズムを支える原理から、飛行機技術の歴史をまとめている。「エンジンはどのように開発されたのか」、「飛行機はいつから金属製になったのか」、「ジェット・エンジンはどのように生まれたのか」といった問いに答える形で、飛行機の発展を物語る。ニュートンやベルヌーイ、オイラーの数式を単純に紹介するだけでなく、現実に当てはめることで、“飛ぶ”実感レベルにまで落とし込んでくれる。まさに、飛行機は数学で飛んでいるのだ。

 紙ヒコーキからボーイング、ステルス戦闘機、プテラノドンを例に、空飛ぶ力学を解説しているのが、『飛ぶ力学』だ。「実機と紙ヒコーキはどこが違うか」、「フォークボールはなぜ落ちる」、「飛行機と“空飛ぶ絨毯”の違い」など、素朴な疑問を入口に、飛行の本質を噛み砕く。翼の面積と重量の説明で、本書にはないが、ナウシカの飛行具“メーヴェ”を思い出す。あの翼サイズでは空力的に飛べないが、あの世界の“人”のサイズそのものが小さいのでは……と想像すると楽しい。

 飛ぶとは何かを掘り下げると、歴史と科学の話になる。その両方をご堪能あれ。
 

Dain
古今東西のすごい本を探すブログ『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる』の中の人。

※本記事は週刊アスキー10/14号(9月30日発売)の記事を転載したものです。

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