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“LTEダイレクト”や“AR”で次の一手を模索するクアルコムの姿

2014年09月22日 17時30分更新

 クアルコムは9月18日(現地時間)に、米・サンフランシスコで開発者向けイベント『Uplinq』を開催した。キーノートスピーチには同社のCEO、スティーブ・モレンコフ氏が登壇。ポストスマートフォン、ポストタブレット時代に向けた取り組みや、クアルコムが得意とするLTEの新技術が発表された。

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↑クアルコムのCEO、スティーブ・モレンコフ氏。

 キーノートで新たに発表されたのが、『Vuforia(ビューフォリア)』と呼ばれるAR技術のSDK。Vuforiaは、すでにスマホやタブレット向けのプラットフォームとして提供されており、カメラに写した対象に映像を重ねる機能を簡単に組み込むことができる。モレンコフ氏によると、開発者は10万を超えているという。アプリ自体も、1億2500万を超えるダウンロードを記録しているそうだ。

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↑スマホアプリにAR機能を組み込むためのプラットフォーム『Vuforia』。

 今回発表されたのは、このVuforiaをウェアラブルに対応させるという取り組み。ターゲットとなるのが、メガネ型デバイスのスマートグラスだ。キーノートでは、IFAでサムスン電子が発表した『Gear VR』や、エプソンのスマートグラス『MOVERIO』などが、このプラットフォームに対応する製品として紹介された。なお、展示コーナーでは実機でのデモも行われていたため、そちらは改めて紹介したい。

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↑スマートグラス向けのSDKが発表された。サムスンの『Gear VR』や、エプソンの『MOVERIO』などが対応。

 通信技術では、LTEを放送波のように使い、データの一斉配信を可能にする“LTEブロードキャスト”が紹介された。LTEブロードキャストは、LTEの一定の帯域を放送的に使う技術のこと。通常の通信とは異なり、双方向性はないが、1つの基地局から多数の端末に同じ情報を送るには効率がいい。すでに、韓国では商用化がされている。このLTEブロードキャストを利用したコンテンツの開発を容易にするSDKも新たに発表された。

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↑LTEを放送のように使う“LTEブロードキャスト”SDKを発表した。

 LTE関連の技術では、“LTEダイレクト”も紹介された。LTEダイレクトは、クアルコムが標準化を目指す技術で、基地局と端末だけでなく、端末同士がLTEで通信を行うことを目指すもの。近隣の端末だけに広告を配信したりといった用途が想定されている。

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↑端末同士が直接LTEで通信を行う“LTEダイレクト”。

 「膨大な数のデバイスがネットワークにつながる」とモレンコフ氏が語るように、これ以外にも、クアルコムではさまざまな技術や枠組みを用意している。その1つとして紹介されたのが、“AllJoyn(オールジョイン)”というプラットフォーム。「異なるデバイス、異なるOSをつなげるもの」(同)で、LGエレクトロニクスやマイクロソフト、ソニーといった、メーカーやプラットフォーム事業者が参画している。

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↑IoTを視野に入れ、さまざまな機器がつながる基盤となる“AllJoyn”。

 AllJoynとは、あらゆるデバイスが相互に通信する際の通信技術。クアルコムはこの技術をオープン化しており、“AllSeen Alliance(オールシーン・アライアンス)”が開発を推進している。たとえば、スマートウォッチで家電を制御したり、そのスマートウォッチをスマホと連携させたりといったことが可能になる。クアルコムが開発したスマートウォッチ“Toq(トーク)”も、この仕組みを採用する。

 ほかにも、チップセットのSnapdragonを応用した事例として、ロボットが取り上げられた。また、Snapdragonはウェアラブル端末にも採用されており、同チップセットを採用したAndroid Wearも紹介された。

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↑Snapdragon採用スマートウォッチのラインナップや、Snpdragonで動くロボットも公開。

 スマホやタブレットに採用されるチップセットメーカーとしておなじみのクアルコムだが、その取り組みは幅広い。キーノートスピーチからは、ポストスマホ時代に向けたウェアラブルやロボット、ARといった“次の一手”を模索するクアルコムの姿が垣間見えた。

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↑もちろん、Snapdragon自体も進化を続ける。スティーブ・モレンコフ氏に続いて登壇したラジ・タルリ氏は、64ビットCPUを採用する『Snapdragon 810』を紹介。実機でのデモも初めて披露された。
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