2014年09月13日14時00分

電子書籍版山崎浩一『今週のデジゴト』試し読み第3回「見出しリテラシーの時代」

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 山崎浩一さんによる週刊アスキーで連載中のコラム『今週のデジゴト』が電子書籍になりました。タイトルは『山崎浩一のデジゴト画報―3Dプリンターの幻想、音楽の未来、リベンジポルノまで』。アマゾンやブックウォーカー、楽天ブックス、iBooks、Googleplay、Kinoppyなどの電子書店さんでお買い求めいただけます。価格は各書店さんごとに異なるのですが、だいたい300円前後となっているものの微妙に違ったりしますので、すいません、詳細な価格については、各書店さんのサイトでご確認ください。

 

今週のデジゴト試し読み

 

 今回も電子書籍版に収録しているコラムの中から、山崎さんと担当のおすすめをお届けします。お読みいただいてご興味が出てきた方は、ぜひ電子版の購入をご検討ください。よろしくお願いします!

 


見出しリテラシーの時代

山崎浩一のデジゴト画報

 

シェアした記事は読んでない!?

「毎日、わたしは仕事で何百もの記事をシェアします。そして、そうです。それらの大部分をわたしは読んでいません。どの記事もじっくり読んでちゃんと考えてからシェアするという人は、実際には嘘をついていると思います」
 これは、英『デイリー・メール』紙のソーシャルメディア・マネジャー氏の告白。2014年2月27日付『WIRED.JP』の「あなたはシェアしたものを読んでいない」と題された記事に引用されている。記事によれば「ソーシャルネットワークでシェアされる記事コンテンツの大半は、見出しと最初の数行を読んだだけでシェアされている」と、トラフィックのリアルタイム分析企業の調査で判明した。シェア件数と閲覧時間との関係を検証すると、そういう結論にならざるをえないのだという。
 かくいう私とて、この記事を「じっくり読んでちゃんと考えてから」こうして誌面に“シェア”しているのかどうか怪しいものだ。が、自らの経験に照らしても「まあ、そんなもんだろうな~」と薄々気づいていた事実が、統計的にも裏付けられたかっこうではある。
 つまり私たちは、ろくに読んでもいない記事をろくに考えもしないまま他人にばらまき、彼らもまたろくすっぽ読みも考えもしないまま、さらに伝言ゲームだけを続けながらウェブ上のトラフィックを増殖させているのである。まあ、そんなもんだろうな~。
 それが主にモバイル端末を介してシェアされている、という要因もあるだろう。じっくり読んだりちゃんと考えたりするのに、あまりふさわしい環境でないことは確かだ。見出しと最初の数行どころか、ページを指でスクロールして画像をチラ見しただけで“読んだ”ことにしてしまうのが常態ではなかろうか。もちろん「1400字程度のテキストなら0.3秒あればじっくり速読できる」と豪語する特能者も中にはいるだろう。が、彼らがこの統計に有意な影響を与えているとは考えづらい。
「これだからソーシャルメディアで共有されたり拡散されたりしている情報は、むやみに鵜呑みにしてはいけません」と結論づけるのはあまりに簡単だ。が、これはどう考えてもソーシャルメディアに始まった問題とは思えない。

 

あらゆる見出しが影響力を増強させてきた

 ヘッドライン(見出し)ジャーナリズムという言葉が囁かれ始めたのは、19世紀のこと。センセーショナルな見出しで読者の購買欲を煽あおったり世論を扇動したりするその手法は、やがて報道写真の普及とも結託してイエロー・ジャーナリズムと総称される。ちなみにイエローには、差別的なニュアンスがあるわけではない。当時の米国の2大競合大衆紙が『イエロー・キッド』という人気漫画を奪い合ったことに由来するそうな。
 それ以来、見出しはさまざまな商業メディアで特権的な位置を占める。新聞、雑誌、テレビ、広告(もちろん中吊り広告も含む)……あらゆる見出しが情報化社会の膨張とともに、その比重と影響力を増強させてきた。ようするに、記事をきちんと検証して書いたり、じっくり読んだり、ちゃんと考えたりしないまま、扇情的な見出しだけが情報環境のなかで猛威をふるう広義のイエロー・ジャーナリズムが、ただウェブやソーシャルメディアにも拡大しましたというだけのお話。
 冒頭に登場した『デイリー・メール』も黄色っぽいタブロイド紙だが、今や紙であれ雲であれメディアに貴賤はないと思ったほうが身のためだろう。
 個々の記事を一字一句じっくり読んだり考えたりする暇のない時代は、見出し職人の腕の見せ所だ。自分に都合の良いことだけを誇張し、都合の悪いことは排除して、でも嘘はついてない。被告の弁明みたいなもの。そんな見出しリテラシーを私たちも長年にわたって身につけてきたはずだ。まあ、だからこそ見出しと数行を読むだけで、あとは読まなくてもわかっちゃう程度の超読解力だってあるのかもしれない。
 でも、油断は禁物。たとえば学校の総合学習の教材に新聞やネットを使うのなら、とりわけ“見出しの読み解き方”が実践的に教えられるべきだろう。見出しと記事に整合性はあるか、ないとすればそこに送り手のどんな意図が潜んでいるのか、メディアによってそこにどんな傾向があるか……。
 息子の学校では、どうもそこまではやってくれていないようだ。いっちょ親が叩き込むしかない。そのために新聞をとるってのもシャクなのだが。

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