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ロケットの実機展示や重力軽減体験が楽しい『ミッション[宇宙×芸術]』

2014年06月16日 16時00分更新

 東京都現代美術館では『ミッション[宇宙×芸術]』展を開催中(~2014年8月31日まで)。実際の宇宙開発に関わる現物展示と、宇宙をモチーフにしたアート作品を同時に展示し、多元的宇宙を表現するという意欲的な展覧会だ。

 注目は、なつのロケット団が 2013 年夏に北海道・大樹町で打ち上げ試験を行なった『すずかぜ』の実物展示。2013年3月の打ち上げに失敗した『ひなまつり』機体の一部や溶けかけた記録用一眼レフデジカメも展示され、宇宙開発の苦労と現実を訴えかける。

ミッション[宇宙×芸術]
↑八谷和彦氏、あさりよしとお氏らが参加する、なつのロケット団より、2013年8月に打ち上げ試験後改修された推力500キログラム重の『すずかぜ』実機を展示。
ミッション[宇宙×芸術]
↑これまでに開発されたなつのロケット団のロケット試作機。機体のカラーは、映像からロケットの姿勢を判断するために施されたものですべて意味がある。
ミッション[宇宙×芸術]
↑2013年に飛んだ『ひなまつり』の回収部品も展示。
ミッション[宇宙×芸術]
↑『ひなまつり』炎上に巻き込まれた記録用カメラ。

 1975年にJAXAの組織のひとつ、NASDA(宇宙開発事業団)が打ち上げた、日本初の人工衛星 『きく1号(ETS-I)』(技術試験衛星I型)の試験機も展示されている。現在の太陽電池パネルを左右に広げた大型の人工衛星とは違い、本体が回転して姿勢を安定させていた人工衛星だ。

 地下展示室では、1986年にH-Iロケットの1号機で打ち上げられた測地実験衛星『あじさい(EGS)』を展示。通信機器を一切持たないという変わった衛星だが、表面の鏡で太陽光やレーザー光を反射し、測量の精度を高めるために活躍している。打ち上げから28年になる現在もまだ運用中で、日本でもっとも長生きの人工衛星でもある。

ミッション[宇宙×芸術]
↑『きく1号(ETS-I)』の模型展示。NASDA(宇宙開発事業団)の収蔵プレートが貼ってある。
ミッション[宇宙×芸術]
↑H-IIBロケット模型と、回収されたフェアリング(実物)。
ミッション[宇宙×芸術]
↑ミラーボール衛星の愛称で知られる、測地実験衛星『あじさい(EGS)』。
ミッション[宇宙×芸術]
↑イプシロンロケットを開発したIHIエアロスペースが手掛ける、月面ローバーの試作機。
ミッション[宇宙×芸術]
↑側面にあるのは……古いPCユーザーなら見たことのあると思われるユニットが見える。

 さらに宇宙切手コレクター、辻野照久氏が収蔵する、総数25万種類におよぶコレクションから、年代別、国別に450点が展示されている。辻野氏によれば、「計画の途中に切手が発行された(大きくPRされた)宇宙開発プロジェクトは失敗しやすい」という悲しいジンクスがあるとのこと。その1例となった、旧ソ連の火星探査機『マルス1号』の切手も会場で閲覧できる。

ミッション[宇宙×芸術]
↑日本のN-1ロケット初打ち上げ記念切手も。

 会場には、レーダー地球観測衛星『だいち2号(ALOS 2)』の実物大模型にプロジェクションマッピングで水のように見える粒子を投影した、チームラボ『憑依する滝、人工衛星の重力』など大型の展示も。さらにプラネタリウムクリエーター、大平貴之さんから『MEGASTAR-II』と『オーロラ』による星空とオーロラの映像展示もあり、こちらはゆっくり映像を観ながら、有馬純寿氏による幻想的なサウンドが心にしみる。2人掛けの小さな空間で同じ映像を見られる展示もあり、そこでは会期中に、大平貴之さん自らによるアップデートが加わるかも!?

ミッション[宇宙×芸術]
↑『だいち2号』の実物大模型に、滝をプロジェクションマッピングするという、大型展示だ。
ミッション[宇宙×芸術]
↑地上に降り注ぐ宇宙放射線と地中からのガンマ線をシンチレーション検出器で検出し、500個のLED点灯で表現する『Fullness of Emptiness Integral』。
ミッション[宇宙×芸術]
↑りんごの表面の点や模様を星々に見立ててドームに投影する『りんごの天体観測』。
ミッション[宇宙×芸術]
↑MEGASTAR-IIとオーロラによる、星空とオーロラの投影。床のクッションに腰をおろしてゆっくり観賞できる。

 参加者が体験できる作品もある。ほんの少し重力から解放され、地上の重力の10分の9、0.9Gを体感できるという摩訶不思議な体験を味わえるのが、福原哲郎&東京スペースダンスによる『スペースダンス・イン・ザ・チューブ』。弾力性のある布をチューブ状に吊った“やわらかい空間”を通り抜け、中央あたりまで進むと、足が床から離れる感覚がある。左右から迫る布の壁が途中で体を支える存在になり、感覚がくるりと変わるのだ。ぜひとも靴を脱いで、この不思議な作品を体感することをオススメする。

ミッション[宇宙×芸術]
↑来場者もチューブ状の空間で0.9Gを体験できる。
ミッション[宇宙×芸術]
↑入口から見た眺め。こんな狭いスリット、入っていけるの? と思うのだが……。
ミッション[宇宙×芸術]
↑入れますし、歩けます。

 森脇裕之氏によるechoシリーズ2作品は、どちらも来場者が触れて体感できる展示だ。素数にちなんだ造形の『echo-p』は1回転すると、チベット仏教の仏具、マニぐるまのように“宇宙ひとめぐり”を現わすのだという。壁に並べられた回転体を1回まわすと、カウンターが回数を記録。20桁まで記録できるということなので、みんなの力で宇宙の寿命いっぱいまでまわそう!

ミッション[宇宙×芸術]
↑回転することで宇宙を表現する『echo-Π』。
ミッション[宇宙×芸術]
↑壁に並べられた『echo-p』。

 レセプションでは、宇宙少年団機関紙に掲載された作品『火星ホテル』の原画を展示した松本零士さんが登場。「今頃私は火星にいるはずだったのに。近くまででいいから打ち上げて欲しい」と悔しがりながら、今後も「火星の物語をまだまだ描いていきたい」と宇宙への愛を語った。

ミッション[宇宙×芸術]
ミッション[宇宙×芸術]

 6月22日には、『第1回ニコニコ学会β 宇宙研究会』(関連サイト)が開催され、なつのロケット団の八谷和彦氏や開発チームのメンバー、高高度気球研究チームのkikyu.org、宇宙エレベータ開発チームのチーム奥澤、HAKUTOの月面ローバー開発チームなどが登壇。定員は事前申込制で200名まで。

ミッション[宇宙×芸術]-コスモロジーを超えて
場所:東京都現代美術館
期間:2014年6月7日(土)-8月31日(日)10:00~18:00
料金:一般1300円、大学生・専門学校生/65歳以上1000円、中高生800円、小学生以下無料

■関連サイト
ミッション[宇宙×芸術]-コスモロジーを超えて

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