2014年05月14日17時00分

Windows情報局ななふぉ出張所

au WALLETに見る、MNPキャッシュバック終了後の世界

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 5月8日、KDDIが2014年の夏モデル発表会を開催し、新端末や新サービスを発表しました。

 残念ながらWindows Phoneの発売予定はまだないということが明らかになったものの、ソフトバンクが見送りを表明した製品発表会については今後も継続して開催するとの回答がありました。他にも日本初となるCA(キャリアアグリゲーション)とWiMAX 2+の両対応など、さまざまな新機軸があった中、KDDIが最も注力してきたのが『au WALLET』です。

■ネットワークや端末を差し置いて“猛プッシュ”

 発表会の前半では、ネットワークや端末の発表については比較的スライドを淡々と読み上げていた田中社長ですが、au WALLETから”猛プッシュ”(関連記事)を始めたのが印象的でした。すでにKDDIは2月にau WALLETの概要を発表(関連記事)しており、普通に発表するだけでは大きなサプライズとはならない可能性もありました。

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↑発表会に登壇したKDDIの田中孝司社長。au WALLETの説明から“本気を出してきた”という印象だ。

 しかし夏モデル発表会では、ローンチに合わせた多数のキャンペーンを発表。パートナー企業からのゲストに加え、タレントの所ジョージさんもau WALLETの話に終始するなど、大きな扱いで盛り上げています。

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↑キャリア発表会ではタレントとともに新端末のトーク、というのが定番だったが、今回はau WALLETの話が中心だった。


■物理カードという“ローテク”を採用

 au WALLETの特徴は、MasterCardの決済システムを利用できるプリペイド型の電子マネーであるという点です。クレジットカード相当の機能を利用できるプリペイドカードは海外では珍しいものではなく、スーパーなどで簡単に入手することができます。ただ、興味深いのは、KDDIがauブランドで展開するサービスなのに、物理カードを利用するという点でしょう。

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↑基本はMasterCardによるプリペイドカードで、そこにau独自の仕様をいろいろ乗せた、という構成になっている。

 MasterCardとして利用できる物理カードとしたことで、店舗側は新たな決済端末を導入する必要がありません。すでにMasterCardは“PayPass”のサービス名でNFC決済を進めており、NTTドコモのおサイフケータイ対応端末と組み合わせて、海外でもおサイフケータイが利用できるというサービスが始まっています。最先端を追い求めるなら、NFCによる新しい決済サービスが期待されるところです。

 ただ、日本国内ではすでにFeliCaを用いた電子マネーが普及しており、自動改札やコンビニ、駅の売店や自動販売機などで活用されています。また、海外でも本当にNFCによる決済が普及するのか、やや疑問視される面もあります。その中でKDDIがあえて物理カードを選んだことからは、例えるなら“無重力空間で使えるボールペンを開発する代わりに、鉛筆を利用する”ような印象を受けます。これがau WALLETのおもしろいところであり、同時に最新技術を求める人たちから“つまらない”と批判されてしまう点でもあるでしょう。

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↑スマホやNFCを駆使した決済システムではないことから、一部のIT系の人たちから、つまらないとの批判も出ている。ただ、KDDIとしてそういった批判は織り込み済みだろう。

 すでに類似のサービスがあるかといえば、そうでもないのもおもしろい。たとえばNTTドコモが『ドコモ口座』を利用してVISAプリペイドカードを購入できるサービスを提供していますが、これはネット上でのみ利用できるもので、物理カードが発行されるものではありません。また、ライフカードによる『Vプリカ』はプリペイド式の物理カードですが、5000円のカードを5200円で購入するなど、手数料が発生します。au WALLETは物理カードでありながら、これらの手数料が(国内利用なら)無料で済むという違いがあります。

■お得な部分と、ケースバイケースな部分が混在か

 au WALLETの発表にあたっては、「作らないと損」と田中社長が連呼するほど、お得なポイントプログラムやキャンペーンが張り巡らされています。

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↑一度に覚えきれないほど、多くの特典やキャンペーンが発表された。

 たとえば初回チャージ時にもらえる10%のボーナスや、じぶん銀行からのチャージによる5%のボーナスは、確かにお得といえます。一部の特約店による200円あたり3ポイント(1ポイント=1円)のポイントもそこそこお得です。しかし200円で1ポイントという通常のショッピング利用については、ポイント還元率として魅力的とは感じられません。

 すでに筆者は航空会社のマイルがたまるクレジットカードを使っており、単純な還元率だけで比較すれば、au WALLETの数倍に相当するポイント還元を得ています。また、au WALLETは海外での利用時に4%の手数料がかかるという点も、一時期に比べて円安になってしまった昨今では痛いところです。カードのランクや年会費に応じて付帯するサービスや保険についても、クレジットカードには及ばない点といえます。

 その一方で、au WALLETは「中学生でも持てる」と田中社長がアピールするように、審査不要のプリペイド方式で、クレジットカードをつくりたくないという人や、ネットでカード番号を入力するのは不安、という人にも向いています。海外では、親が子供にクレジットカードを使う訓練をさせる目的で持たせる、という使い方もあるようです。

 さらにau WALLETにとって追い風になりそうなのが、じぶん銀行によるauユーザー向けの新サービス『プレミアムバンク for au』(関連記事)です。特徴はATM利用時や他行当て振込時の手数料を、回数無制限で無料化するという点です。すでに回数制限付きでこれらを提供する銀行はあるものの、やはり無制限で0円というのは、非常に魅力的といえるでしょう。

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↑ATMや他行当て振込時の手数料が0円になる『プレミアムバンク for au』。

 ただ、5月12日には株式会社ウェブマネーがMasterCardのプリペイドカードとしても使える『MasterCardプリペイド付きWebMoney Card』を発表しており、内容的にもau WALLETに類似したものとなっています(関連サイト)。両者はポイントプログラムが異なるため、場合によってはau WALLETよりお得になる場合があるかもしれません。

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↑リアル店舗およびネットのMasterCard加盟店でクレジットカードのように使えるプリペイドカード。事前チャージ方式で審査なしで誰でも利用できる。


■“キャッシュバック後”のスマホ業界を見据えて

 このような新サービスに対して、つい最近までは「キャリア依存のサービスは使いたくない」という反応がネット上でよくみられました。その背景には、キャリア各社がMNPによる乗り換え客に多額のキャッシュバックを提供しており、同じキャリアを使い続けるよりも、次々と乗り換えたほうが得をするという状況があったからです。

 しかしこのMNPキャッシュバック合戦も3月末には下火となり、すぐに復活する兆しはありません。逆に、今後は特定のキャリアを長く使うことや、家族全員で使い続けることにより得をするタイプの施策が増えていく可能性があります。すでにNTTドコモがデータ通信の容量を家族内で分け合えたり、長期契約者を優遇する新料金プランを打ち出したのは、記憶に新しいところです。

 このように潮目が変わる中、KDDIはタイミングよく新サービスを投入した、という印象を受けます。一見するとローテクに見える物理カードを用いて、既存の決済インフラを利用しているという点からも、いますぐ本当に使える決済サービスを提供したいという、KDDIの本気度が感じられるものとなっています。

 これまでキャリア依存のサービスを忌避してきたユーザーにとっても、そろそろ考え方を改めるときがきたのかもしれません。

山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ

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