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MLBから地雷体験まで!iBeacon最新事情inニューヨーク・サンフランシスコ

 iBeaconをに対応したサービスは日本では今年春くらいから急増しつつあるが、米国でも最古参の事例となるApple Storeやメジャーリーグ(MLB)球場でのサービスのほか、いくつか新しいものが出現しつつあるようだ。今回、これらを体験してみた。

■ニューヨークでiBeaconとアプリを使ってお買い物

世界のiBeacon
ここはタイムズスクエア。まずはニューヨークからスタート。

 ショッピングとiBeaconを連動させた仕組みとしては、米大手百貨店のMacy'sがニューヨークとサンフランシスコの店舗に導入したサービス事例が知られている。

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NYヘラルドスクエアにあるMacy's本店。

 入り口付近にiBeaconの発生装置が取り付けられ、近付いた顧客のスマホには通知があり、ショッピング用アプリが起動。そうして顧客を店舗内へと誘導するというもの。Macy's自身も専用アプリを提供しているものの、この仕組みでiBeaconと連動するのは『Shopkick』というサードパーティー製のアプリだ。

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iBeaconによるプッシュ通知を受けるには『Shopkick』アプリを導入。

 『Shopkick』ではMacy'sを含む複数の小売店各社と提携しており、それら店舗のクーポンやセール情報をまとめて配信するポイント連動アプリを提供する。ShopkickアプリをインストールしてMacy's付近を通過すると、プッシュ通知が行われる仕組みとなっている。

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対応店舗に近付くとロック画面にプッシュ通知が出現する。
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該当店舗の買い物情報を抽出表示してくれる。

 なお、この場合のiBeaconはあくまでWi-Fiや3Gによる位置情報測定の補助的な機能として用いられ、特にiBeaconが必須というわけでもないようだ。実際、iBeaconに対応しないMacy'sアプリであっても、例えば今回のヘラルドスクエア本店でアプリを開くと当該店舗の情報がポップアップし、フロアガイドなどが参照できる。

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Macy's公式アプリもある。こちらも店舗に近付くとで店舗情報をプッシュ通知。
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フロアガイドなどの機能が用意されている。

 Macy'sアプリ自体もiBeaconに対応せずとも便利な機能を備えており、例えば商品のバーコードをカメラで読み取るとサイズや色違いの製品の在庫状況を確認できるなど、ショッピングの一助となる。ところで、筆者がこれで在庫の存在を確認し、ほしかったジーンズのサイズを喜び勇んで店員に伝えたところ、「すでに売り切れ」と冷たく一蹴された。なんでも、アプリから検索できる情報は必ずしも最新のPOS情報と連動しているわけではないとのことで、「そもそもその機能の意味はあるの?」という感じだったわけだが……。

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Macy'sアプリで商品のバーコードを読み込むができる。
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商品のサイズや色違いなど在庫情報を参照可能。


■MLB球場でiBeaconを体験できるか?

 今回Macy'sと並んでトライしてみたかったのが、MLBで今シーズン内20球場への導入を予定しているというiBeaconを使った連動サービスだ。

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次の目的はMLBのNYメッツ本拠地であるCiti Field。

 MLBでは球場内に100以上のビーコン装置を設置し、正確な測定が難しい球場内での位置情報サービスやチェックイン処理などを提供するという。実はニューヨークのフラッシング地区にあるNYメッツの本拠地Citi Fieldは、'14年からスタートした正式運用では最初の対応球場から外れてしまった。しかし、’13年にはすでにiBeaconサービスの試験運用が行われていた球場なので、体験できる可能性はあると考えた。

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『At the Ballpark』というアプリではオンラインでのチケット購入が可能。Passbookにチケットを登録もできる。

 MLBはスマートフォン対応に比較的昔から熱心な団体で、iOSやAndroid向けに数多くのローンチタイトルを出している。中でも『At the Ballpark』アプリはオンラインでのチケット購入から、電子チケットを表示してのチェックイン、そして試合経過や選手データ参照まで、およそ球場で必要となる各種機能が詰まっている。説明によれば、同アプリでは球場に近付いた段階でのチェックイン処理や球場の施設案内をiBeaconを用いて行うとのことだ。

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iBeaconによる位置情報システムに対応しており、チェックインや位置検索が利用可能。
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球場まで来ると試合の通知がポップアップしてチェックインでき、チケットを呼び出せる(Passbook登録済みの場合は不要)。

 残念ながら今回これらサービスをうまく体験することはできなかった。チェックイン画面でCiti Fieldがポップアップしてくるものの、別の候補として近隣の別地区にあるYankee Stadiumも候補のひとつとして表示されたりと、iBeaconなしでも取得可能な位置情報活用にとどまっている印象だった。

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なお、スマートフォンでチェックインすると別途ペーパーチケットが発行されるステキ仕様。

 また、これ以外にiBeaconと連動して利用できそうな仕組みも特に見当たらず、とりあえずはCiti FieldでのiBeacon体験は空振りに終わった印象だ。シーズン後半や来年に再トライすると、また違った結果が得られるのだろうか?

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試合開始から遅れること1時間半、6回表にようやく到着。なお土砂降りなので予約したシート(三塁内野側)には近付けず。

■ほかにもあったNYのiBeacon体験サービス

 一方で、NYではほかにもiBeaconを使ったサービスをいくつか発見できた。例えば『Dash』というオンラインペイメントアプリでは、店舗に設置されたiBeaconを使ってチェックインを行い、会計の段階でアプリを使ってそのままチェックアウトできる簡易会計の仕組みを用意している。

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iBeaconによる店舗へのチェックインから会計まで行える『Dash』アプリ。

 『Dash』で目的の店舗を探してページを開いても、距離が遠いと“Too far away to pay”と表示されチェックインできないようになっているが、店舗前まで実際にやってくると、この表示が“Check in”へと変化し、店舗へと“チェックイン”できるようになる。

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店舗までの距離が遠いと「遠すぎて支払えない」と表示される。
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「チェックイン」と表示される。

 今回対象店舗では営業時間外だったためデモ機能でしか試せなかったが、事前にクレジットカード情報などを用意してアカウントを登録しておけば、先ほどのチェックイン情報を基にオンラインで支払いが行えるようだ。『Dash』アプリには支払いのデモ機能が用意されており、会計の確認から支払いまで、すべてアプリ上で行なえることがわかる。

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なお、今回は営業時間外だったためDash付属のデモ機能で支払いの様子を体験。

 もうひとつ興味深いのが、iBeaconを使って地雷の恐怖を体験できる展示を行なっているケースだ。 仕組みとしては『Sweeper』というアプリをダウンロードし、地雷を模したオブジェクトから発せられるiBeaconを探知して“地雷探し”を行うというもの。

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設置されていたのは『Sweeper』と呼ばれる地雷体験サービス。主催は国連の地雷対策部門であるUNMAS。

 主催は国連機関のUNMASで、「地雷の恐怖を体験する」というのがその狙いだ。宝探しゲームの要領で“マインスイーパ”を実装し、それを事前活動や募金活動に充てるというのは逆転の発想かもしれない。

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『Sweeper』アプリによる地雷体験コーナーと特設展示を行っているようだ。
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内容的には一種の宝探しゲームで、地雷を想定したオブジェクトにビーコン(iBeacon)が埋め込まれており、これで地雷の恐怖を味わってほしいというもの。

 ちょうどNY滞在中の4月4日、マンハッタン南部の美術館『New Museum』でこの展示が行なわれていることに気付き、訪問してみた。残念ながら気付くのが遅くて営業時間がちょうど終了直前だったため体験はできなかったが、このイベント自体は常設ではなく場所と期間を変えつつ米国全土で実施されているようだ。

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NYの美術館『New Museum』ではちょうど4月4日、iBeaconを使った体験コーナーが特別設置されていた。

■次はサンフランシスコでiBeaconを探索する

 次はかなり場所が移って、坂の街として知られる西海岸のサンフランシスコにやってきた。

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場所は移って次は坂の街サンフランシスコ。

 結論からいえば、iBeaconを採用した事例は劇的なものはなかった。たとえばMacy's入り口付近で『Shopkick』アプリが反応したり、Apple Storeでアプリによるチェックインが行なえたりはするもののNYと同様といったところ。いくらシリコンバレーの一部とはいえ事例が急に増えるというわけではなかった。

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サンフランシスコ中心部ユニオンスクエア前のMacy'sに行くと、やはり『Shopkick』アプリが反応する。
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ビーコン発生装置は入り口付近に設置されているとみられる。電波強度から測定して、ビーコン発生装置とみられる円状の端末を発見。
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この週の仕事はサンフランシスコ南方のサンノゼ市内だったため、近くのWestfield Valley Fairというショッピングモールに来てみた。モールに入った瞬間、Apple Storeアプリが反応して店舗情報を表示する。

 MLB球場では4月初旬にSFジャイアンツ拠点のAT&T ParkでiBeacon装置の導入が完了して、本格運用を開始したというニュースが報じられている。

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iBeaconが設置されたと報じられたSFジャイアンツ拠点のAT&T Parkにも行ってみた。しかし、滞在期間中は試合日程がなく活用はできなかった。

 『At the Ballpark』アプリを持ってAT&T Parkに行くと、同球場の情報がポップアップしてくるが、試合開始4時間前でないとチェックインできないため、これ以上の情報は参照できない。筆者がサンフランシスコに滞在している期間は、同球場での試合日程がなく会場内部へは入れなかったため、iBeaconを受信しているのかあるいは単にWi-Fiと3Gで位置情報を捕捉しているのかも不明で、このあたりは5月以降の渡米機会で再トライしてみたい。

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滞在期間中は試合日程はなく、『At the Ballpark』アプリでの通知はあるものの、チェックインは行えなかった。

 今回、いろいろまわって気付くのは、“iBeacon連動”名目で提供されているサービスの数々が、実際にiBeaconを用いているのか不明であり、サービスそのものもiBeaconなしでA-GPSによる位置情報さえ取得できれば問題ない……、といった体裁になっていた点だ。実際、iBeaconを使わないMacy'sアプリでの店舗チェックインも行えるし、以前にも紹介した(関連記事)ようにApple StoreでのチェックインはそもそもBluetoothを無効化しても有効だ。

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この週の仕事はサンフランシスコ南方のサンノゼ市内だったため、近くのWestfield Valley Fairというショッピングモールに来てみた。モールにはApple Storeがある。

 サンノゼ近郊にあるWestfield Valley Fairというショッピングモール内にあるApple Storeでは、店舗に近付くことなくモールに入った時点で位置情報を基にしたチェックインが可能だ。前述DashアプリもiBeaconは必須要件ではないとみられ、「あくまでiBeaconは位置情報の補助」という位置付けに過ぎないと考えている。

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モールに入った瞬間、Apple Storeアプリが反応して店舗情報を表示する。

 実際に、当該店舗でiBeaconが出力されているか不明な点も多く、筆者は旅程の後半から『Locate iBeacon』というアプリを使って、移動先で逐次iBeaconの計測を行うようにしてみた。その結果わかったのは、例えばサンフランシスコ中心部でiBeacon反応があるのはApple StoreとMacy'sの2ヶ所だけで、ほかの場所でiBeaconをいっさい捕捉することができなかった。

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『Locate iBeacon』というiOSアプリで先ほどのValley Fairモール内を測定したところ、Apple Store前を含めiBeaconをひとつも取得できなかった。

 もうひとつわかったのは、アプリの作り方にもよるとみられるが、Locate iBeaconのiOS版はアプリ起動からしばらくするとiBeaconを取得できなくなることが多いのに対し、Android版はiOS版と比較しても細かい情報を取得し、つねにiBeaconの探知が行える。これが何を意味するのか不明な部分が多いが、iBeacon探索ではなるべくAndroidを活用しつつ、今後も継続的にウォッチしていきたい。

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『Locate iBeacon』をAndroid版へと変更して試したところ、Apple Store店舗内やMacy's店舗前でいくつかiBeaconを捕捉することができた。写真はMacy's店舗前で計測したもの。ただ、サンフランシスコ中心部ではこの2ヵ所以外にiBeaconは捕捉できなかった。

 なお、現在発売中の週刊アスキー5/6号 No.977(4月22日発売)では、iBeaconの仕組みの解説から国内導入事例まで、基礎知識がまるまるわかる特集を掲載。興味がある人はこちらも抑えておきたい。

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