2014年04月16日20時30分

NTTグループ、KDDI、ソフトバンクが激論 規制緩和とFTTH事業が争点に

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 総務省は4月16日、“情報通信審議会 2020-ICT基盤政策特別部会”を開催した。この特別部会は、2020年に向けた情報通信のあり方を検討するための会合。第4回となる今回は、持ち株会社のNTT、ドコモ、KDDI、ソフトバンクと、主要事業者の幹部が一堂に会して論戦を交わした。

“情報通信審議会 2020-ICT基盤政策特別部会”

↑情報通信審議会の特別部会には、ケータイキャリア3社とNTT持ち株会社が出席。普段はライバルのKDDI田中社長とソフトバンク孫社長が、談笑する一幕も。

 ここで焦点になっているのが、NTTやドコモの“規制緩和”だ。NTTやドコモは、市場の支配力がある事業者、いわゆるドミナントとして電気通信事業法の第30条でさまざまな行為が“事前規制”されている。一例を挙げると、同法には“特定の電気通信事業者に対する不当な優先的取扱いの禁止”と明記されており、これによって、たとえばドコモがある1社とコラボして端末を開発するといったことが難しくなるという。実際、ドコモの回線を利用するKindleはAmazonのサーバー以外にアクセスできない仕組みだが、これは禁止行為を避けるための措置だ。インターネット全般にアクセスできると、Amazonが電気通信事業者と見なされ、排他的な協業ができなくなるためである。

 新聞などで報道が先行している“セット割”も、そのひとつ。KDDIやソフトバンクは、FTTHなどの固定通信とモバイルをセットで契約すると割り引きを受けられる施策を実施しているが、ドコモがこれを行なうと禁止行為に該当する恐れがあり、現在まで同様のサービスを提供できていない。NTTやドコモの主張は、こうした規制がイノベーションの妨げになっているという点に主眼が置かれている。

 とくにモバイルに関しては、競争が激化した結果、ドコモのシェアは現時点で44%程度。すでに、同法の定める支配力は持っていないというのが同社の見解だ。

“情報通信審議会 2020-ICT基盤政策特別部会”
“情報通信審議会 2020-ICT基盤政策特別部会”
“情報通信審議会 2020-ICT基盤政策特別部会”

↑競争環境の変化を受け、事前規制の撤廃を求めるNTTグループ。

 総務省の部会ではドコモの取締役常務執行役員 吉澤和弘氏が「これまではネットワークレイヤーとの競争が主体的だったが、いろいろなプレイヤーが連携しながらサービス全体で競争をするフェーズになっている。自由なコラボレーションが必要で、その先にサービスの展開が出てくる」と述べ、事前規制から電気通信事業法29条の事前規制への緩和を訴えた背景にはこうした事情がある。

 こうしたNTTグループの主張に真っ向から反論したのが、KDDIとソフトバンク。普段はライバル同士の2社だが、この日はKDDIの田中孝司社長とソフトバンクの孫正義社長がガッチリとタッグを組み、NTTの規制緩和反対の論戦を張った。田中氏によると、この先トラフィックの増加が進むと「無線LANのように基地局が小さくなる」。そこに引くための光回線も増え、固定網の重要性が増すことになる。そのため、「事業者間の競争の中で、多様な選択肢を提供する」のが重要というのが同社の考えだ。ドコモのシェアは落ちたものの、FTTHでのNTT東西は依然として高いシェア率を維持している。NTTの規制が緩和されれば、「これ(NTT東西とドコモのセット割)が可能になる」ため、FTTHのシェアが高いNTTグループが有利になってしまうというのもKDDIが規制緩和に反対する理由だ。

“情報通信審議会 2020-ICT基盤政策特別部会”
“情報通信審議会 2020-ICT基盤政策特別部会”

↑KDDIは、NTT東西のFTTH市場におけるシェアを指摘し、規制緩和に反対した。

 一方で、ソフトバンクの孫氏はFTTHの整備率と利用率の隔たりを指摘しながら、「競争が機能していない」と一刀両断。「8回線(まとめてでないと他社に)貸し出しをしていない。この不思議な構造のために、70%のシェアが微動だにしていない」と、その理由を語った。「新幹線のチケットを8枚単位でないと売らない。そういうような売り方はどこにもない」と声を荒げる場面もあり、現状のままでの規制緩和は論外というのがソフトバンクの考えだ。ソフトバンクとしては、光回線を1回線ごとに他社に貸し出すことを提案。それを行なったうえで、設備部門とサービス部門がきっちり分離していることを監視する機構も必要だと訴えた。

“情報通信審議会 2020-ICT基盤政策特別部会”
“情報通信審議会 2020-ICT基盤政策特別部会”

↑ソフトバンクはFTTHを1回線ごとの貸し出すことを義務づける政策の必要性を主張。監視機構の設立も訴えた。

 規制の緩和を訴えるNTTやドコモに対し、FTTHの高いシェアを根拠にKDDIとソフトバンクがそれに反対するという構図だが、2社の主張には微妙な食い違いもある。ドコモに対する見解はそのひとつ。孫氏は「ドコモさんを縛りすぎるのはいかがなものか」と述べ、「NTTという3文字を外し、資本、人事を分離してグループ内における70%のシェアを持つFTTHと事実上の一体運営がなされないことが構造上確保されれば」規制の緩和はやむなしという考えを示した。これに対してKDDIの田中氏は「(NTTを分割した際に)ドコモさんの出資比率を下げるという話があったが、下がらず今も株を持ち続けている。限りなくゼロに近づくという約束があったがなっていない。ドコモさんのシェアは40%といったが、現実的には44コンマ数%。あと4%ほど下がれば問題ない」として、ドコモが40%以上のシェアを持っている以上は規制の緩和は容認できないとの考えを語っている。

 FTTHについても、自社で設備を持つKDDIと、設備を持たないソフトバンクで意見が別れた格好だ。ソフトバンクが1回線からの貸し出しを強く主張するのに対し、田中氏は「今は東電のFTTHや中電のFTTHも買収して、設備競争が始まった」と述べ、自前の設備を持つ重要性を強調。これについてソフトバンクの孫氏は「(FTTHの設備を持っている)KDDIさんはなかなか微妙な立場におられる」とコメントするなど、2社の足並みは必ずしもそろっていない印象を受ける。

“情報通信審議会 2020-ICT基盤政策特別部会”

↑設備競争を重視するKDDIは、1回線ごとの貸し出しに反対している。この点は、ソフトバンクの主張と真っ向から対立する。

 FTTHの競争環境次第ではドコモの規制緩和を容認するソフトバンクに対し、KDDIはFTTHは設備競争を進め、ドコモのシェアが現状のままのうちは規制緩和に対して反対というのが、2社の違いと言えるだろう。情報通信審議会は22日にも事業者からのヒアリングを行ない、7月には中間整理が、11月には総務大臣に答申が提出される見込みだ。各社の主張が真っ向からぶつかる中、どのような方向に政策が定まるのか。情報通信産業の将来を決める重要な会議なだけに、今後動向にも注目しておきたい。

●関連サイト
総務省 情報通信審議会 公式ページ

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