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ハイレゾ対応スピーカー ソニー『SRS-X9』をとことん試聴してみた

2014年03月03日 20時30分更新

SRS-X9

 2014年1月のInternational CESで発表されたSONY『SRS-X9』は、ハイパワーアンプとDAC(Digital Analog Converter)を内蔵し、最大192KHz、24ビットのハイレゾ音源を直接再生できる。スピーカーユニットやアンプもハイレゾのクォリティーを十分に生かすべく吟味され、ハイエンドモデルにふさわしいスペックの高さを誇る。もちろん、AirPlayやBluetooth、DLNAによるネットワーク経由の出力も可能だ。

 このワイヤレススピーカー『SRS-X』シリーズのラインアップは『SRS-X5』、『SRS-X7』と本機の3モデルだが、ハイレゾ対応なのはこの機種だけだ。今回、発売日を3月8日に控える『SRS-X9』をじっくり試聴する機会が得られたので、手持ちのiPhoneとMacBook Airにふだん聴いているCD品質のサウンドやハイレゾ音源を持ち込んで、音質や機能を徹底検証してみた。なお、試作機での試聴のため、製品版では異なる部分が出てくる可能性もあることにご留意いただきたい。

■まずは基本的な構造をチェック!

 SRS-X9のサイズは幅が43cm、重量は約4.6Kgと比較的大型で、リビングルームや書斎などに設置して使うのに適したモデルだ。アンプの実用最大出力は総合で154W(25W×2+25W×2+25W×2+2W×2)とかなり大きく、8~12畳クラスの大きめのリビングルームなどでも余裕をもって鳴らせるだろう。また、リモコンが付属しており、再生/停止、曲送り、音量、入力切り替えなどのコントロールができる。

 ドライバーの数は多く、全部で6基のドライバー+サブウーファーで構成される。中央にはサブウーファーが配置され、その左右には“パッシブ・ラジエーター”という低音を効率良く出力する共振板がある。両端には、主に中高音を担当する新開発の磁性流体スピーカーと高音~超高音を鳴らすためのスーパーツイーターが前面と本体の上に配置され、音が部屋に響くように工夫されている。

 まさにドライバーだらけのシステムだが、その様子は簡単に確認できる。付属品に黒い2本の短い棒があり、先端に磁石が付いている。最初は「これはアンテナか?」と思ったが、これをステンレス製のスピーカーグリルの両端にぺたりとつけて手前に引いてグリルを外すための工具だったのだ。ドライバーが見えるように設置して雰囲気を楽しむのもなかなか楽しい。

SRS-X9

↑本体のデザインはブラックの長方形型で実にシンプル。側面はアルミ、上面はガラスパネルを採用し、高級感がある。上部には白く光る各種タッチスイッチと、左右にスーパーツイーターが配置される。

SRS-X9

↑フロントグリルを外したところ。たくさんのスピーカー、パッシブラジエーターがぎっしりと並ぶ姿は圧巻だ。いかにも特別なスピーカー、という雰囲気だ。

SRS-X9

↑背面には、USBポート×2m、イーサネット端子、WiFi設定用のWPSボタン、アナログオーディオ入力端子(ミニプラグ)が装備される。USBポートは内蔵DACでハイレゾ音源を再生するためのものだ。

■ワイヤレスで快適に音楽が楽しめる

 多彩な入力方式を備えているのも本機の魅力だ。MacやiPhone/iPadからはAirPlay、またはBluetoothでワイヤレス接続でき、iTunesやミュージックアプリの音楽をワイヤレスで楽しめる。イーサネット端子をLANに接続することも可能だ。本機のネットワーク設定はiOS、Andriod向けの専用アプリ『SongPal』かイーサネットで接続して設定する。SongPalは、本機のサウンド機能(詳細は後述)を設定するために必須だ。

 なお、WiFiは残念なことに2.4GHz帯しか使えない802.11b/g(最大リンク速度は54Mbps)のみで、802.11nや802.11acに対応していない。2.4GHz帯は場所によっては混信が多く、5GHz帯に逃がして混信を避ける(5GHzのAPはまだ2.4GHz帯のAPよりも比較的数が少ない)という技が使えない。ノイズレベルが高かったり信号レベルが低いと転送性能が下がって音質劣化の原因になる。電波状況が悪かったり音質を重視するなら、本機だけイーサネットでLANに接続し、WiFi接続したMacやiOSデバイスからAirPlay接続したほうがいい。

 WiFi設定が終わったところでまずは、筆者のiPhoneをAirPlayで再生してみた。『ミュージック』アプリを起動して、AirPlayボタンをタップし、メニューから選ぶだけだ。Bluetoothでペアリングしている場合は、どちらかをメニューで選べる。

SRS-X9
SRS-X9

↑専用アプリ『SongPal』をiOSデバイスにインストールし、まずBlutoothで接続してから設定画面を開き、各種設定を行なう。WiFiの設定が終われば、あとはiPhoneやiPadからAirPlayで接続して音楽を再生する(右画面がAirPlay)。

SRS-X9

↑イーサネットでPCやMacを接続すれば、Webブラウザーで簡単に設定できる。ただし、Webブラウザーではネットワーク設定とソフトウェアアップデートしかできないようだ。

■絶妙のサウンドチューニングでハイレゾサウンドを堪能!

 本機の周波数特性は45Hzという超低音から40000Hzと超高音までをカバーするという凄まじいスペックで、特に高音の伸び方が大きい(人間の可聴域は20~20000KHz)。しかし、一般に、スピーカーやイヤホンはドライバーの数が増えるほどコントロールが難しくなる。3つのドライバー×3+サブウーファーという複雑な構成の本機では、アンプの能力やサウンドプロセッサーのチューニングが高音質化の鍵だ。

 実は複雑なのはドライバーだけではない。本機は『S-MASTER HX』というデジタルアンプを2基内蔵し、左右チャンネルを独立して鳴らしている。さらに、サブウーファーは2つのアンプを使ったブリッジ接続という高級コンポ並みの贅沢な回路を採用している。

 これらをうまくコントロールしないと音のバランスを崩し、人工的で不自然な鳴り方になったり、音の透明感が落ちたりする。このあたりに注目しながら、まずはAirPlay経由でiPhoneに入っている試聴用のCDスペックの曲(44.1KHz、16ビット)を鳴らしてみたところ、その懸念は払拭された。

 まず、低域から高域までのレンジ幅が広く、音の奥行きが豊かに感じられた。特に感心したのは低域のスピード感だ。バスレフ型(本体内に筒を設け、その穴から低音を出して増強させる)のような「ぼわん」としたホーン型的な低音ではなく、「ぱしっ、どすっ」と小気味よくシャープな低音が小気味よい。また、スーパーツイーターによる高域の伸びも抜群で、全体的な音の解像度、透明感も高い。

 ひと通り試聴したところで、MacBook Airでハイレゾサウンドを聴いてみた。再生アプリは、OS Xのサウンドエンジン“Core Audio”を完全にバイパスし、プロのレコーディングの現場で定評のある米iZotope社のサウンドエンジンで高品位なサウンドを出力できる再生アプリ『Audirvana Plus』を使った。

 Macと本機とをUSBで接続して再生してみたが、CDスペックの音源との差が明確に出たのに驚いた。音が艶っぽくなり、レンジの広がりや解像度が一気に高まり、思わず「おぉ」とため息が出てしまった。ちなみに、USB端子にはハイレゾウォークマンやiPhoneを直接接続することも可能だ。内蔵DACは24ビット、192KHzのPCM音源と2.4MHzのDSD音源に対応している。ただし、現状ではDSDの直接再生はできず、PCMに変換されて出力される。DSDの直接再生は4月中にネットワークアップデートで対応するとのことだ。

 また、SRS-X9はCDスペックの音源をスケールアップ(アップコンバート)する『DSEE HX』という機能を備えており、SongPalでオン/オフできる。ただし、試してみたところ、音の変化はほとんど感じられなかった。これは、SongPal自体が正式公開前のバージョンのため、正しく機能しなかった可能性がある。あるいは機能したものの、今回試聴に使った音源が高音質だったことが原因だったのかもしれない。今回は検証していないが、128KHzなどロースペックなMP3やAAC音源などとDACとの相性が改善され、良い音になる可能性はある。機会があれば、製品版であらためて検証してみたい。

 さらに、Xperiaシリーズでおなじみのワンタッチでソニーオススメのサウンドにする『ClearAudio+』モードも搭載している。これも試してみたが、高音がややもちあがってキラキラ感が強くなったり、ボーカルがやや前に出てくるといった効果が確認できた。ただし、この機能は、必ずしも自分好みの音にするとは限らない。筆者としてはSongPalのイコライザー機能で、しっかり調整する方法をオススメする。

※ なお、DLNAアプリを導入したPCやMacからハイレゾサウンドをワイヤレス経由で伝送することも可能だ。設定はSongPalで行なえる。ただし先述したとおり、Wi-Fiが802.11gにしか対応していないため、1Mbps超もざらというビットレートの高いハイレゾ音源の音質が劣化する可能性が高い。ハイレゾサウンドを聴くならUSB、または、本機をイーサネットで接続するのがベストだ。ちなみに、AirPlayの仕様は非公開だが、実際には16ビット、44.1KHzという音楽CDのスペックで、ハイレゾ伝送はできない。

SRS-X9

↑MacBook Airと本機をUSB接続してAudirvana Plusで試聴した。DSDの音源を直接出力モード(DoP)で出力してみたが音質の劣化は感じられず、クリアな音質が楽しめた。

SRS-X9

↑Audirvana Plusの設定画面で内蔵DACは最大192KHz、DSD 2.4MHz(DSD64)に対応しているのを確認した。なお、このDACはさらなる高音質化を実現するAudirvana Plusの“Integer Mode”にも対応している。

 

  このように本機は、電源を入れてつなぐだけというシンプル操作でハイレゾもAirPlay経由のサウンドも手軽に楽しめる、新次元の1ボックススピーカーだ。もはや新時代“コンポ”と言ってもいいだろう。もっとも、音質には好みというものがあるし、決して安い製品ではない。購入に際しては、ふだん聴いている曲を入れたスマホやiPhone、あるいは、ハイレゾ音源を入れたノートPCやMacBookなどを持って、ショップでじっくり試聴することをオススメする。

■関連サイト
ソニー『SRS-X9』



※2014年3月3日23時55分追記:初出時、“ClearAudio+”の表記が誤っていました。
※2014年3月5日15時40分追記:初出時、“SongPal”の表記が誤っていました。
以上、お詫びして訂正いたします。記事は修正済みです。

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