週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

NFCの韓国版おサイフケータイ“モバイルcashbee”を使ってみた

2014年02月15日 13時00分更新

 日本向けスマホやケータイにほぼ標準搭載されているおサイフケータイ機能を、海外でも活用できる環境が徐々に整いつつあります。そんな中、韓国版おサイフケータイにあたる『モバイルcashbee』が、2013年12月18日から日本のスマホで利用できるようになりました。そこで、実際に韓国へ行って使い勝手を試してきました。

●NFC対応スマホで利用可能

 まずはじめに、モバイルcashbeeがどういったものなのか紹介しましょう。

 『cashbee』とは、韓国のイービーカードが展開しているNFC対応のプリペイド型電子マネーサービスです。サービス開始は2010年12月で、現在では地下鉄やバス、タクシーなどの公共交通機関、コンビニやスーパーなど約5.4万店舗に導入され、韓国内で約500万人が利用するサービスに成長しています。そして、モバイルcashbeeは、このcashbeeを日本のスマホで利用できるようにしたもので、2013年12月18日より提供が開始されました。対応スマホにモバイルcashbeeアプリをインストールし、あらかじめ現金をチャージしておくことで、日本のおサイフケータイ同様に、韓国内の対応する店舗でスマホをタッチするだけで支払いが可能となります。なお、2014年2月上旬時点では、モバイルcashbeeは地下鉄とバスでは利用できません。今年春以降に対応することになっていますので、今はタクシーとコンビニやスーパーなどでの支払いのみが可能となります。

モバイルcashbee
↑モバイルcashbeeアプリをNFC対応スマホにインストールすれば、韓国の電子マネー“cashbee”を日本のスマホで利用できるようになります。
モバイルcashbee
↑このように、スマホをリーダーにタッチするだけで支払いが完了。まさに日本のおサイフケータイ感覚で使えます。

 対応するスマホは、2014年2月10日現在では、NFC(TypeA/B方式)に対応するNTTドコモのスマホ24機種(外部サイト)となっています。また、これら対応スマホに、NFC決済に対応したピンク色のSIMカードが取り付けられている必要もあります。2013年2月25日以降、ドコモのスマホでは標準でこのピンクSIMカードが発行されるようになっていますが、対応スマホを使っていてピンクSIMカードが取り付けられていない場合には、ドコモショップで交換してもらいましょう。ピンクSIMカードへの交換手数料は無料です。なお、今後auおよびソフトバンクのNFC対応スマホへの対応も予定されていますので、利用可能機種は増えていくと考えていいでしょう。

モバイルcashbee
↑モバイルcashbeeは、NTTドコモのスマホのうち、NFC(TypeA/B方式)対応で、NFC決済に対応したピンクSIMを取り付けたスマホで利用できます。

 モバイルcashbeeの利用に、登録料や手数料は不要です。無料で配布されているモバイルcashbeeアプリをインストールするだけで利用可能となります。利用時のユーザー登録も不要ですので、気楽に利用可能と言えます。韓国旅行に出発する前にインストールし、あらかじめ現金をチャージしておけば、韓国到着後すぐに利用可能です。

●現金のチャージはクレジットカードで

 モバイルcashbeeを利用するには、対応スマホにモバイルcashbeeアプリをGoogle Play(外部サイト)からインストールするだけでオーケーです。あとは、現金をチャージするだけで利用可能です。

モバイルcashbee
↑モバイルcashbeeアプリ。Google Playで無料で配布されています。

 現金のチャージは、クレジットカードを利用します。モバイルcashbeeアプリを起動してチャージメニューに進み、チャージ金額を指定。その後、クレジットカード番号を入力すれば現金がチャージされます。カード番号を保存しておき、カードのセキュリティコードを入力するだけでチャージできる“クイックチャージ”という機能もありますが、使うのは韓国滞在中だけですから、頻繁にチャージすることはないでしょうし、安全性を考慮して、毎回カード番号を入力してチャージすようにしたほうがいいでしょう。ただし、チャージに利用できるクレジットカードは、VISAとMasterCardのみとなっています。より多くのクレジットカードで利用できるように、対応の拡充を期待したいです。

モバイルcashbee
↑モバイルcashbeeアプリを起動して、チャージボタンをタッチ、中央の“クレジットカードでチャージ”をタッチします。
モバイルcashbee
↑チャージする金額を指定します。括弧内は日本円の換算金額で、この金額がクレジットカードにチャージされます。
モバイルcashbee
↑クレジットカード情報を入力します。利用できるクレジットカードはVISAとMasterCardのみとなっています。
モバイルcashbee
↑チャージ完了です。これで韓国のcashbee対応店舗で利用可能となります。

 モバイルcashbeeへのチャージは、もちろん韓国通貨のウォンとなりますが、クレジットカードの決済は、その時点での換算レートを反映した日本円となります。ちなみに、モバイルcashbeeの換算レートは、空港などの両替所でのレートよりもかなり良くなっています。韓国旅行時にモバイルcashbeeが利用できるお店での買い物が多い場合には、現金を両替して持って行くよりも、モバイルcashbeeを利用した方がかなりおトクと言えます。

 チャージできる現金は、最低1万ウォンからで、最大50万ウォンまでチャージできます。一度チャージした現金の払い戻しは不可能です。チャージした現金の有効期限は最大5年間となります。5年間使用やチャージがないと無効となりますので注意しましょう。頻繁に韓国に行く人なら問題ないと思いますが、基本的にはチャージする金額はなるべく少なくしておき、足りなくなったらチャージする、という使い方がいいでしょう。

●リーダーにタッチするだけで決済完了

 では、実際にモバイルcashbeeeを使ってみましょう。まずは、ソウル到着直後に、空港内にあるコンビニ“GS25”で使ってみました。日本でのコンビニでおサイフケータイで支払いを行う場合と同じように、cashbeeで支払うことを店員に伝え、レジ横にあるリーダーにスマホをかざせば決済が完了しました。決済時には、モバイルcashbeeアプリを起動しておく必要はありません。スマホがスリープの状態でもリーダーにスマホをかざせば決済が可能ですので、まさに日本のおサイフケータイ同様の感覚で使えます。

モバイルcashbee
↑ソウル仁川国際空港の税関を抜けた先にあるコンビニ“GS25”。ここはcashbeeでの支払いに対応していて、モバイルcashbeeも問題なく使えました。

 GS25以外の、セブン-イレブンやファミリーマートなどソウル市内にある他のコンビニでも同様で、ほぼ問題なくモバイルcashbeeで決済可能でした。韓国内の大手コンビニチェーンは、ほぼcashbeeに対応しているようなので、コンビニでの買い物であれば、モバイルcashbeeが普通に使えそうです。コンビニ以外では、ダンキンドーナツやロッテリア、ロッテデパートの地下食料品売り場などでも使ってみましたが、そちらでも問題なく決済可能でした。

モバイルcashbee
↑ソウル市内のセブンイレブンもcashbeeが利用可能です。
モバイルcashbee
↑レジ横のリーダー。cashbeeロゴが見えます。
モバイルcashbee
↑こちらは“CU”というコンビニ。こちらでもモバイルcashbeeは問題なく使えました。
モバイルcashbee
↑ドーナツ店“ダンキンドーナツ”でも使えました。
モバイルcashbee
↑日本でもおなじみの“ロッテリア”もオーケーです。
モバイルcashbee
↑こちらは、ロッテデパートの地下食料品売り場のレジにあったリーダー。こちらもcashbeeロゴが見えます。
モバイルcashbee
↑決済時には、画面に支払金額と残金が表示されます。

 ちなみに、決済完了までにはタッチから5秒ほどと、日本のおサイフケータイより決済までにかなり時間がかかるという印象でした。また、決済には“ピッ”と音が鳴るようですが、音はかなり小さく、ほとんど聞こえませんでした。いつ決済が完了したのかよくわからないのは、ちょっと不安を感じます。

 加えて、同じチェーンでもモバイルcashbeeが使えない店舗もあるようです。今回、ソウル市内の複数のセブンイレブンで試してみましたが、1店舗だけ使えない店舗がありました。店員も首をかしげていましたので、基本的には対応しているのかもしれませんが、その時にはエラーが表示されて全く決済できませんでした。そのため、モバイルcashbeeが使えない場合を考慮して、ある程度の現金は持っておく必要がありそうです。

モバイルcashbee
↑このセブンイレブンでは、リーダーでエラーが出てモバイルcashbeeが使えませんでした。

 店舗の目立つ場所やリーダーにcashbeeマークが書かれていれば、使えることがすぐに判断できるのですが、cashbeeが使えるお店でもcashbeeマークがどこにも書かれない店が大多数を占めていました。店舗やリーダーの外観から、cashbeeが使えるかどうかを明確に判断できないのは、かなり不便です。旅行者の利便性を高めるという意味でも、cashbeeが使える店舗では、cashbeeマークを目立つ場所に貼るなどの配慮が必要と感じました。

モバイルcashbee
↑このように、リーダーなどにcashbeeマークの表記があるとわかりやすいのですが、表記のある店舗は少数派でした。

 次に、タクシーでも使ってみました。ソウルには、“模範タクシー”と“一般タクシー”という2種類のタクシーがありますが、そのどちらでもモバイルcashbeeは問題なく利用できました。日本でも都内などでは電子マネーに対応するタクシーが増えていますが、それと同じように運転席シート横にリーダーが置かれ、支払時にcashbeeで支払うことを運転手に伝えてリーダーにタッチするだけで簡単に支払いが可能でした。しかも、コンビニなどでの決済と違い、まさにタッチした瞬間に決済が完了します。タクシーでの現金での支払いは、お釣りの受け渡しなどいろいろ面倒ですが、モバイルcashbeeならそういった手間もなく、非常に快適でした。なお、今回は3回使ったタクシーすべてで問題なく使えましたが、一部タクシーでは使えない場合があるようですので、こちらも注意が必要でしょう。

モバイルcashbee
↑ソウルの一般タクシーです。黒塗りの模範タクシーもあります。模範タクシーの方がやや料金が高くなっています。
モバイルcashbee
↑シートの間にリーダーがあります。東京都内にも電子マネーに対応しているタクシーがいますが、それとほぼ同じですね。
モバイルcashbee
↑このように、リーダーにタッチして支払いが可能でした。ちなみに、支払いではないタイミングでタッチすると、残金が表示されます。

●アプリにはクーポンや路線図表示機能も

 モバイルcashbeeアプリは、cashbeeで支払う場合に起動する必要はありませんが、現金のチャージ以外にもいくつかの機能があります。中でも便利に使えそうなのが、クーポン機能です。クーポンは、時期によって内容が変わるようですが、今回使った時には、ロッテ免税店で使える割り引きクーポンなどが用意されていました。

モバイルcashbee
↑いろいろなお店で割り引きなどを受けられるクーポンが利用できます。

 また、ソウルの地下鉄の路線図を表示する機能もあります。ソウルは東京と同じように地下鉄網が発達しています。旅行時に使う機会も多いので、手元で地下鉄の路線図を確認できるのはかなり便利です。

モバイルcashbee
↑地下鉄の路線図を表示できます。駅名が英語表記なので、わかりやすいです。
モバイルcashbee
↑空港リムジンバスの時間や料金もチェックできます。

 そして、クーポンや地下鉄路線図は、NFC非対応のスマホでも利用できます。Android 2.3.3以降のスマホなら、モバイルcashbeeアプリをインストールしてクーポンや地下鉄路線図を利用できますので、韓国旅行時に活用してみてはいかがでしょうか。

 これ以外にも、モバイルcashbeeでの支払いの履歴も確認できます。確認できるのは金額のみで、支払い日時や店舗名などは確認できませんが、いくら使ったかを把握するには十分でしょう。

モバイルcashbee
↑利用履歴表示機能もあります。使った日時やお店がわからないのはやや残念です。

 ただし、モバイルcashbeeアプリの各機能は、基本的にインターネットに接続している状態でなければ利用できません。せっかくクーポンや地下鉄路線図表示機能を使おうと思っても、スマホがネットにつながっていない状態では使えないのです。データのキャッシュ機能があればいいのですが、今のモバイルcashbeeアプリでは、起動後に毎回データをダウンロードしてクーポンや地下鉄路線図を表示するようになっているようです。今後クーポンや路線図の事前ダウンロード対応など、アプリの改善を期待したいところですが、現時点では、海外データローミングを利用したり、韓国で使えるモバイルルーターを用意するなど、いつでもデータ通信が行なえる環境を用意することが必要です。

●地下鉄やバスに対応するとかなり使える

 今回、韓国でモバイルcashbeeを使ってみましたが、キャッシュレスで買い物ができたりタクシーに乗れるというのは、当初思っていた以上に便利でした。とくに、ムダな小銭ができないのは、やはり非常に嬉しいです。韓国に限らず、海外旅行時には小銭の使いかたがわかりにくく、財布に小銭ばかりが増えていくことが良くありますが、モバイルcashbeeのような電子マネーなら、そういったことがありません。また、モバイルcashbeeに関しては、現金よりも換算レートがいいという点も魅力です。

 ただ、地下鉄やバスに対応していないという点は、やはり残念です。韓国ではクレジットカードの対応がかなり進んでいますが、地下鉄のきっぷは、クレジットカードでの支払いに対応していないようです(今回使った駅の券売機では、クレジットカードの使用を確認できませんでした)。実は今回、筆者はあえて現金を両替せずに渡航しましたが、地下鉄に乗る時に同行者に現金を借りるハメになってしまいました。そういった意味では、まだ現金を持たずに韓国に渡航するのは難しそうです。

モバイルcashbee
↑現在はまだスマホでは使えませんが、地下鉄やバスで使えるようになると、魅力が大きく向上するでしょう。

 ただ、今後モバイルcashbeeが地下鉄やバスで利用可能になると、現金を持たずに渡航しても大丈夫かもしれません。地下鉄、バス、タクシーの料金やコンビニ、デパートでの支払いはモバイルcashbee、そのほかのレストランや免税店などではクレジットカードを使えば、まさにキャッシュレスで渡航できると考えていいでしょう。そういった意味では、現在のモバイルcashbeeはまだ発展途上といったところでしょう。地下鉄とバスへの対応が完了すれば、本領がフルに発揮されるようになるでしょう。そうなると、韓国旅行にはモバイルcashbeeが必須になるかもしれませんね。

●関連サイト
モバイルcashbee 公式ページ

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう