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東京大学×角川文化振興財団がポップカルチャー分野の研究と人材育成に挑む

2014年01月30日 09時30分更新

角川文化振興財団メディア・コンテンツ研究寄付講座

 東京大学大学院情報学環は、一般財団法人角川文化振興財団からの寄付により、『角川文化振興財団メディア・コンテンツ研究寄付講座』を開設した。設置期間は平成25年11月1日~平成28年10月31日の3年間。

 日本のマンガやアニメ、ゲームといった文化的コンテンツが世界的に注目を集める一方で、大学などの学問的な研究が十分ではないというのが現状だ。東京大学大学院情報学環メディア・コンテンツ研究機構運営委員長 教授の石田英敬氏は、本寄付講座の目的として、「東京大学の知識資源を活かし、メディア・コンテンツ領域(とくに日本およびアジアのポピュラー・カルチャー)における第一線の創作活動やコンテンツ産業と緊密に連携して、実践的な人材育成と文化戦略の創出に貢献する」ことを掲げる。

角川文化振興財団メディア・コンテンツ研究寄付講座

↑東京大学大学院情報学環メディア・コンテンツ研究機構運営委員長 教授 石田英敬氏。
 

角川文化振興財団メディア・コンテンツ研究寄付講座

 プロジェクト全体をアドバイスする特任教授として、マンガ・アニメの評論で著名な大塚英志氏を招へい。人材育成と研究、そして社会発信・産学連携という3つの柱をもとに活動を行なっていく。

角川文化振興財団メディア・コンテンツ研究寄付講座

↑批評家・まんが原作者/東京大学大学院情報学環 特任教授 大塚英志氏。


 まず人材育成面では、2014年夏より海外の優秀な大学生・大学院生を広く受け入れるサマープログラムを実施する。東京大学の学生とともに、日本のアミューズメント・メディアをめぐる最前線の知を学ぶ機会を提供。このプログラムを通じて、クラシック・ポップ両方の世界文化に深い教養をもち、真の“ソフト・パワー”の担い手となりうる人材(プロデューサー、キュレーター、若手研究者等)を育成するとしている。

角川文化振興財団メディア・コンテンツ研究寄付講座

 研究面では、ジャパニーズ・メディアカルチャーをめぐる世界的研究協働体制の組織化をはかる。国内だけではややもすると自己閉鎖的な議論に陥りがちなところがあるが、国外でもさまざまな分野から研究が進んでおり、その水準も高いという。MIT、デューク大学、シカゴ大学、ポンピドゥー・センターなど、さまざまな国際的研究機関との連携を予定。アジアや欧米で国際的に活躍する研究者、表現者のネットワークを構築し、日本のアミューズメント・メディア研究の基礎となる知のプラットフォームを立ち上げるとする。

 
そして、社会発信・産学連携では、メディア企業・文化産業と連携して真のソフトパワー文化戦略に貢献することをめざす。研究成果は、産業の現場や文化政策にフィードバックするとともに、学術シンポジウムの開催等を通じて広く国際社会に発信し、世界規模での日本およびアジアのポピュラー文化の発展に寄与するという。たとえば、電子メディア時代の知的財産権や文化戦略をテーマとしたシンポジウムやイベント、研究会の開催が予定されている。

 
一般財団法人角川文化振興財団 理事長/株式会社KADOKAWA取締役会長 角川歴彦氏は、「昨今、アジアを中心として海外を訪問すると、アニメ、マンガを中心とした日本のコンテンツの浸透ぶりに驚かされる。一部の国では村上春樹作品同様に翻訳されたライトノベルズが若者に強烈に支持を受けている。そうした状況のもと、東京大学がこのような新しい日本のコンテンツを学問として本格的に研究したいとおっしゃってくれた。これまで、日本の国文の研究にさまざまな支援を行なってきた角川文化振興財団だが、昨今はMITのメディアラボなど、最先端のコンテンツ研究にも助成先を広げている。そこで国内でも先端を切ってこのような研究に取り組まれる東京大学情報学環の石田教授のお手伝いをさせていただこうと決めた」と今回の支援の背景を説明。「特に期待しているのは毎年開催を予定しているサマープログラム」とし、「アジアをはじめとする世界各国の若者と日本の若者が一堂に会し、また教授陣も世界の一流の方々に集まっていただくことによって、相当ハイレベルな議論が行なわれるだろう」と期待を寄せた。

角川文化振興財団メディア・コンテンツ研究寄付講座

↑一般財団法人角川文化振興財団 理事長/株式会社KADOKAWA取締役会長 角川歴彦氏。「日本のコンテンツ制作の現場を訪れ、交流によって刺激を受けた海外の若者が、帰国してどのような花を咲かせ、実を結ぶのか、考えただけでもワクワクする。一方で日本のクリエーターに与える影響にも期待している」とのこと。

 3月11日には、本寄付講座のキックオフシンポジウムを開催する。日本を代表するクリエーター、コンテンツ産業のキープレーヤー、国内外の代表的研究者が集い、日本のコンテンツ文化のポテンシャルや新たな学問的研究の可能性について討議する。

■シンポジウム概要
【日 時】 2014年3月11日 14:30~17:30
【場 所】 東京大学本郷キャンパス
    情報学環・福武ホール B2 福武ラーニングシアター
    東京都文京区本郷7-3-1
【登壇者】
川上量生
(株式会社ドワンゴ代表取締役会長/スタジオジブリ・プロデューサー見習い)
マーク・スタインバーグ
(コンコルディア大学教員、主著:Anime's Media Mix: Franchising Toys and Characters in Japan, University of Minnesota Press)
大塚英志
(批評家・まんが原作者/国際日本文化研究センター教授/東京大学大学院情報学環 特任教授)
角川歴彦
(一般財団法人角川文化振興財団 理事長/株式会社KADOKAWA取締役会長)
石田英敬
(東京大学大学院情報学環メディア・コンテンツ研究機構運営委員長 教授)
吉見俊哉(東京大学副学長/東京大学大学院情報学環教授)
その他アニメ映画監督、内外研究者を予定

※下記サイトにて、随時最新情報を提供予定。

■関連サイト
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