2014年01月27日15時00分

ラスベガスで見かけたiBeaconの最新事情

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 皆さんは“iBeacon”という技術をご存じだろうか? 昨秋にリリースされたiOS 7の目玉機能のひとつとして実装され、すでに一部では使われ始めている技術だ。

 一部では「NFCを置き換えるモバイル決済技術の本命」のような報じ方もされているが、実際の仕組みはBluetooth Low Energy(BLE)技術を使って端末の位置情報を計測するという「Beacon(ビーコン)」技術の一種だ。

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↑AppleはiBeaconを使った来客システムを米国内のApple Storeに導入した。
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↑今年のCES 2014では、公式アプリを通してiBeaconを使ったちょっとしたゲームサービスを提供した。

 従来のGPSに比べ、建物の屋内であっても比較的正確に数十センチ~数メートル単位で位置を特定できるため、商店やモールでの顧客案内システムへの応用も検討されている。この位置情報とクラウド、そして決済システムを組み合わせることで、NFCだけではないさまざまな決済方法を提案できるというわけだ。

 Beacon技術自体はさまざまな応用が可能なため、例えば米メジャーリーグ(MLB)での導入の話がある(外部サイト)ほか、Estimoteという会社の店舗ソリューション(外部サイト)という形で製品化されていたり、さらには『PayPal Beacon』(外部サイト)という実際の店舗内でクラウド上の登録情報を使った決済システムが今年2014年内にも登場する予定だ。

 そして、これらに先駆ける形で、Appleは米国内店舗へのiBeacon技術による顧客誘導システムを導入し、稼働を始めている。おそらくは、今後数年内にもより広い範囲でBeacon技術を応用したシステムが稼働しているはずだ。

■CESで見かけたiBeacon関連展示■

 「これだけ注目の技術ならばCES会場でも関連展示がたくさんあるだろう」と思うところだが、BLE技術の製品はウェアラブルやスマート家電関係で頻繁に見かけたものの、iBeacon/Beacon関連に関してはあまり見かけることはなかった。

 前述のように対応装置を導入するのは個人ユーザーではなく店舗や公共施設側のため、CESはその場ではないのかもしれない。今年は諸般の事情で取材を断念したが、毎年CES直後に米ニューヨークで開催されている米小売団体(NRF)主催のBig Show(外部サイト)では、このiBeacon、Beaconに関する展示が多数行われていた可能性がある。

 CESで見かけた展示としては、開催前々日に行われたUnveiledイベントに出展していたAllure Energyの『EverSense』(外部サイト)というサーモスタット製品がある。

 Beacon技術を使って、例えばiPhoneの専用アプリを使って設定された「自分に最適な温度」をサーモスタットのEverSenseデバイスへと転送し、自動的に空調の温度設定を行なわせることができる。

 この設定は部屋を移るごとにiPhoneを通じて各部屋のEverSenseデバイスに設定されるようになっており、Beacon技術を使って「近くにあるデバイスを認識して必要な情報を送信する」という仕掛けを実践している。

 このように展示こそ少なかったものの、今回のCESでは主催者自らが「Scavenger Hunt」というiBeaconを使ったちょっとしたゲームを用意しており、少しだけだがiBeaconの世界を体験できるようになっていた。

 これは宝探しゲームの一種で、あらかじめ指定されたエリアのどこかにiBeaconの位置情報を発信するチェックポイント(デバイス)が存在するので、iPhone片手にそれらを探すというものだ。

 規定のチェックポイントに到達するとバッジをひとつ獲得でき、これを集めるのがゲームの目的となる。iOS版のCES公式アプリにはScavenger Huntのメニューがあり、これを開いた状態でチェックポイントを探し出すという具合だ。

 なお、Androidも最新バージョンではBeacon利用に必要なBLE技術をサポートしているが、残念ながらAndroid版公式アプリにはこの機能は実装されていなかった。まだ利用可能な端末が少なく、より(利用可能な)ユーザー数が多くて実験がしやすいiOSにターゲットを絞ったのだと予想される。

 ゲーム自体は簡単だ。指定のエリアへと移動して公式アプリのScavenger Huntのメニューを開くと、チェックポイントからある一定距離に近付いた段階で目標までの距離がフィート単位で表示される。

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↑今年のCES 2014では、公式アプリを通してiBeaconを使ったちょっとしたゲームサービスを提供した。
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↑CES公式アプリのiOS版のみ「Scavenger Hunt」というメニューが存在する。これは宝探しゲームの一種で、指定されたポイントのどこかにiBeaconを発信するチェックポイント(デバイス)が存在するので、iPhone片手にそれを探索する。ポイントを発見するごとにバッジをひとつ獲得でき、これを集めるのが目的。

 

 これはiBeaconを発している装置(おそらくは小型のルータのような形状のもの)までの距離を意味しており、それがどこにあるかを探すわけだ。アプリでは現在の距離が表示されているが、更新間隔が1~数秒程度とリアルタイムではなく若干遅延があるため、少し動いてはメーターをチェックし、また少し動いては確認し……といった具合で探索を行なうことになる。

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 また、目標との最短距離しか表示されないため、動き回って数字の変化からおおよその位置を把握するしかない。そして一定距離内(30フィート以内)に到達した段階でバッジを獲得できる。

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↑まずはサウスホール2階にある3Dプリンターのエリアにチャレンジ。
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↑CESアプリのScavenger Huntメニューを起動した状態でチェックポイントに近付くと、画面がポイントへの距離を示すメーターに切り替わる。一定距離以内に近付くとミッションクリアということでバッジを獲得できる。

 30フィートというと約9メートル程度だが、半径9メートルというのはけっこうな広さだ。ここからひとついえるのは、「iBeaconでの距離測定は意外と大ざっぱ」ということだろう。アプリで表示されている距離も実際とは異なり、厳密に2~3メートル以内とかの水準に設定すると、誰もチェックポイントが発見できなくなる可能性があるのだと考える。

 実際の利用にあたってはひとつのポイントから発せられるBeaconのみに頼るのではなく、複数箇所に設置されたBeaconデバイスやWiFiなどの信号情報を組み合わせることで、より正確な誤差数十センチ~1メートル程度の位置情報検出が可能になると思われる。

■Apple StoreのiBeaconサービスを試してみた■

 今回CES取材で滞在したラスベガスには、目抜き通り沿いの中心部だけで2つのApple Store店舗が存在する。そこでAppleが昨年末に導入したというApple Retail StoreでのiBeaconサービスがどのようなものなのか実際に試してみることにした。

 AppleがApp Storeで配布している『Apple Store』(外部サイト)はオンラインストアでの買い物だけでなく、リアル店舗の情報や、店舗内で商品のバーコードをスキャンしての直接購入などが可能になっている。

 このアプリを使ってApple Storeを訪問することで、iBeaconを使った顧客誘導システムが利用できるというわけだ。

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↑ラスベガスの目抜き通りであるストリップ中心部にあるForum Shopsモール内のApple StoreにiBeaconを試しに行く。

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↑Apple Storeアプリでは、オンラインで販売している商品や特定店舗の情報の確認のほか、実際に店舗でアプリにバーコードをかざすことで自分自身で決済が可能な仕組みが提供されている。アプリの最新バージョンではさらにiBeaconに対応し、店舗に近付いたユーザーにその旨の通知を行なう機能が用意されている。

 アプリを起動した状態でApple Store店舗に近付くと、その店舗の情報が自動的にポップアップしてくる。ただし注意するのは、アプリの位置情報サービスが有効な状態でないとこのポップアップウインドーが表示されないという点だ。

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↑店舗に近付いた際の情報通知機能は位置情報サービスを有効にしないと動作しないので注意。

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↑モール内のApple Storeに近付いた段階で店舗情報のウインドーが出現する。

 

 「これはiBeaconではなく、単にA-GPSの位置情報で該当店舗を検索しているだけなのではないか?」という疑問が沸いてきたので、試しにBluetooth機能をオフにしてみると、画面のような警告メッセージが表示された。

 どうやら、位置情報の正確さを向上させるためにBluetooth(つまりiBeacon)を利用しているようだ。ちなみに、先ほどの警告を無視してBluetoothをオフにしたまま店舗に入店すると、やはり店舗情報のウインドーがポップアップする。

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↑なお、iBeacon関係なしに単純にA-GPSの位置情報に基づいて通知を出している可能性もあるため、念のためBluetoothをオフにした状態にするとこのような警告が出現する。もっとも、Bluetoothをオフにした状態でも店舗情報のウィンドウがポップアップするため、Bluetooth(iBeacon)は純粋に位置情報の正確さを向上させるためだけに利用されているようだ。

 

 位置情報サービスが有効である必要はあるものの、Bluetooth(iBeacon)はあくまで補助的な役割のようだ。iBeaconで店舗誘導を行ない、iTunesに登録されたクレジットカード情報で買い物を行わせるというのは、NFCのような「タッチで決済」とはまた異なるシステムといえるかもしれない。

 実際にiBeaconを通して提供されているサービスは位置情報だけではない可能性も高いが、今回Apple Storeで実験した範囲ではそれら機能を見ることはできなかった。

 CESのScavenger Huntと合わせ、まだ初期段階のちょっとショボい印象のある機能プレビューとなったが、来年のCESまでにはより面白い仕掛けが多数登場して、いろいろ来場者を楽しませることを期待したい。

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