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【私のハマった3冊】「退屈」についてじっくり考える 退屈している間のない3冊

2014年01月24日 15時00分更新

退屈している間のない3冊

退屈
息もつかせぬその歴史

著 ピーター・トゥーヒー
青土社
2310円

暇と退屈の倫理学
著 國分功一郎
朝日出版社
1890円

一言半句の戦場
著 開高健
集英社
3360円

「もう3日も寝てないよー!」「4時間しか眠れなかった!!」なーんて、忙しいアピールごとくの文言を耳にしなくなったのは、歳のせいでしょうか? ゴンチャロフの“オブローモフ”やチェーホフの“ラネーフスカヤ”のような、高等遊民や有閑階級にあこがれを抱いたのも遠い昔。思い返せば、退屈することを忌み恐れるかのように、予定を入れてきた20~30代だった。そこで、今回は“退屈”についてじっくり考えてみようと手にした本3冊のご紹介。

『退屈 息もつかせぬその歴史』は、そんな“退屈”を古今東西の文学や脳科学、動物行動学といった、ありとあらゆる事例を紹介しながら、“退屈”の正体を立体的にみせる“まったくもって退屈しない”一冊である。読了し、この流れにのって、長らく積読していた『暇と退屈の倫理学』をようやく手に取った。ものごとを楽しむためには、学業と同じように訓練が必要とされるのだと、痛快に教えてくれる。数々の思想を参照しながら、“退屈”について考察していくうちに、気がつけば“いかに生きるか?”を深く考えさせられてしまう不思議な本だ。

 おそらく、退屈を教養に昇華させて生きたのが開高健である。『一言半句の戦場』は、そんな開高健の、様々な媒体で書き、しゃべったエッセイ、コラム、インタヴュー、対談、推薦文などを一挙にまとめたファン垂涎の未収録作品集。引き出しの多さ、深さに触れ、多芸多才ぶりにあてられ、軽妙洒脱な世界へと誘われた次の瞬間には、ハードボイルドな世界へと連れて行かれるという、まさに退屈なんてしている間もない一冊である。

 長い年末年始のお休みで、ふとあくびなんかして手に取った3冊だけど、考えてみたら、読書しているときは退屈とは無縁よね。(ただし、退屈な本は別ですが)そろそろ、退屈することを前向きに考えて、肥やしに変える術を見つけるのも良い年齢にきているのかもしれません。
 

奥村知花
成城大学卒。“本しゃべりすと”として、新刊書籍のパブリシティに携わりつつ、書評エッセイなど執筆。

※本記事は週刊アスキー2/4号(1月21日発売)の記事を転載したものです。

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