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真剣に宇宙人を探す科学者たち

2014年01月02日 19時00分更新

 われわれ人類はこの宇宙で孤独な存在なのか、それともどこかに知的生命体がいて私たちの呼び掛けを待っているのか?

――そんなことを考えたことはありませんか。今回は“宇宙人を探す話”です。

真剣に宇宙人を探す科学者たち
↑皆神龍太郎先生。疑似科学ウォッチャー。『と学会』運営委員にしてASIOS会員。日本最強のデバンカーと称される。


■宇宙人から電波ぐらいは出してもらわないと

皆神先生 宇宙人を真剣に探す計画として、最も知られているのは、いわゆる“SETI”でしょう。SETIは、Search for Extra-Terrestrial Intelligenceの略で、“地球外知的生命体探査”と訳されます。

――“知的”な生命体を探すんですね。

皆神先生 そうなんです。“Intelligence”の部分が大事なのです。というのも、地球外の生命体が使用している“通信”をキャッチすることで、生命体を探そうとしているからです。電波やレーザー光線を使えるぐらい技術的に進化していないと見つかりません。

 とはいえ逆に、外宇宙から知的生命体のほうが、地球に向けて電波をキャッチしようとアンテナを向けていてくれても、われわれの方が江戸時代の状態で、電波を出すすべももっていなかったら、そもそも見つからないわけですが(笑)。

――あれ? 地球に“知的”生命体はいないぞ、って(笑)。

皆神先生 そういうことになりますね。電波望遠鏡をターゲットの星の方向に向けて、電波を受信し、そこに何か自然には発せられないものがないか、知的生命体が発する人工的な電波はないかを解析する仕組みが必要なんです。

 実際、1960年には、世界で初めて『オズマ計画』と呼ばれる実験が行なわれました。ターゲットは、くじら座タウ星と、エリダヌス座イプシロン星。1.42ギガヘルツの電波が発せられているかどうかを調べたものです。

――最初からずいぶんピンポイントなんですね

皆神先生 すべての波長を調べるというのはさすがに無理ですので、宇宙人が地球に向かって通信しようとする際に何を使うのか、どんな波長を使うかをあらかじめ“想定”して、それをキャッチしようとしました。オズマ計画の場合は“電波”、そして“水素原子の出す波長”にターゲットを定めたんですね。

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(C)deathRS5

――バカですみません。水素って電波を出しているんですか?

皆神先生 はい、出しているんです。ちなみになぜ水素かというと、この宇宙では水素がいちばん多いんですよ。宇宙に存在する物質の9割が水素といわれていますから、宇宙人も、交信にその波長を使うのではないか、と、当時の科学者が“想定”したわけです。

 もっとも、いちばんありふれている物質だから、かえって使わないんじゃないの? という意見もあります(笑)。そこは難しいところですね。

――オズマ計画では、何か発見できたのでしょうか。

皆神先生 残念ですが、そのときは見つかりませんでした。でも、その17年後の1977年に、いて座の方向から強い電波が来たことを、オハイオ州立大学の電波望遠鏡がキャッチしています。この電波は『Wow! シグナル』と呼ばれています。関係者だったジェリー・R・エーマンが、観測のプリントアウトに“Wow!”と書き込んだので、そのまま呼ばれているんです。よほどの驚きだったのですね。

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↑Wow!シグナル。エーマンが驚きのあまり、Wow!と書き込んだもの。

――すごい! その後どうなったんですか?

皆神先生 それが、その後ぱったり観測できなかったのです。オハイオ州立大学も再観測しましたし、ほかの人たちも観測しようとしたのですが、やっぱりできませんでした。

――いったい……何だったんでしょうね。

皆神先生 今も謎のままです。でも、『Wow!シグナル』は観測者のみならず、世界中に希望を与えました。夢がありますよね。今でもSETIの活動は続けられています。

 同様に地球外生命体を探す探査活動に『OSETI』というものもあります。

■レーザー光線を探すOSETI

――おせち……ですか?

皆神先生 はい(笑)。SETIの前に“O”が付いていますが、これはOpticalの略で“光学的に”という意味ですね。つまり、電波望遠鏡で電波を捉えようとするのではなく、光学望遠鏡で“レーザー光線”を捉えようとするのです。

 日本では、兵庫県立大学西はりま天文台の鳴沢真也さんが有名です。西はりま天文台には、2メートル口径の『なゆた望遠鏡』がありまして、鳴沢さんは、なゆた望遠鏡を使って宇宙からのレーザー光線を捉えようとしているのです。

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↑西はりま天文台のなゆた望遠鏡と鳴沢真也さん。

――おお。なぜレーザー光線なのでしょう。

皆神先生 先ほどと理由は同じなのですが、“地球外生命体が地球に向かって、SHG-YAGと呼ばれる5320.7オングストロームの波長の緑色レーザーを発信している”と“想定”しているのです。

――なるほど。おせちはどの星をターゲットに?

皆神先生 20.5光年先の、てんびん座にあるグリーゼ581という恒星などです。この恒星には惑星が発見されています。

――ずいぶん細かいですね。先のオズマ計画のときは、惑星まで言及しませんでしたが。

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↑グリーゼ581と太陽系の比較を現わしたイメージ図。
(C)Zina Deretsky, National Science Foundation

■ほかの惑星の発見は最近のこと

皆神先生 実は、そのグリーゼ581に本当に惑星があるのかどうかわかったのは、最近のことなんですよ。星として見えるのは、当然光を放っている恒星ばかりです。ですが、恒星の周りを回っている惑星は光を出していませんから、当然見ることはできません。ですので、それまでは、惑星があるんじゃないかなあ、という想定で望遠鏡をそちらに向けて観測していたわけです。

――調べてみたら惑星はなかった、ということもありうる……と。

皆神先生 はい。系外惑星というのですが、他の太陽系にある惑星が発見されたのは、ここ20年ほどのことです。現在では加速度的に発見が増えて、1000個以上の惑星が発見されています。

――では、知的生命体がいそうな惑星を、ターゲットに選びやすくなってきた、というわけですね。

皆神先生 “ハビタブルゾーン”という概念がありましてね。生命が存在するのに適した領域といった意味です。例えば、水が生命の存在に不可欠な存在だと仮定して、水が沸騰してもダメ、凍ってもダメ……と考えると、おのずと水が存在できる惑星の、恒星からの距離が出ます(恒星の温度に左右されます)。

 太陽系にも、もちろんハビタブルゾーンがあって、地球はそこにドンピシャな位置にあるわけですね。最近では、観測技術の進歩で、水のあるなしも見分けられるようになっていますが。

■発見するのは時間の問題?

――とすると、意外と簡単に宇宙人が見つかりそうな気がしてきますね!


皆神先生 まあ、そう簡単にはいかないんですがね(笑)。というのは、いくつかの条件をクリアーできていないと、われわれはキャッチできないですから。

1、知的生命体が地球と通信できる技術レベルにあること。
2、地球に向けて電波、レーザー光線などを発していること。
3、その電波、あるいはレーザー光線の波長を、こちらが正しく想定できていること。

――うーん。知的生命体が地球に向けて発信する……という条件がいちばん厳しいように思うのですが。

皆神先生 そうですね。たとえば世界最大のアレシボ電波望遠鏡と同じものがよその星にあったとして、それであちこちに電波を発信していたとします。

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↑プエルトリコのアレシボ天文台にある、世界最大の電波望遠鏡。
(C)Arecibo Observatory, a facility of the NSF

皆神先生 われわれ地球人のアレシボ天文台と、宇宙人の電波望遠鏡が偶然ぴたりと方向が合って、信号をうまく受信できるには、確率的に200万年くらいかかるかもしれないと計算されています。

 もっとも「早ければ来年にもETが見つかる」という人もいたりして。いずれも仮定なので、仮定や計算方法を変えれば結果はどのようにもできちゃうわけですけど。

――200万年は……長いですね。地球に向かって発信していなくても、たとえばその知的生命体がテレビを見たり、ラジオを聞いたりする、その日常生活で漏れ出てくる電波なり、レーザー光線なりをキャッチすることはできないのでしょうか。

皆神先生 それができればいいのですが、残念ながら、よっぽど近くまで来て自然に発信してくれない限り、今の観測技術では難しいでしょうね。本当の『Wow!シグナル』をキャッチするにはかなりの幸運に恵まれないといけないでしょう。

 でも、SETI、OSETIといった活動には夢があります。われわれと同じような知的生命体がどこかにいるのではないかと探すことは、とりもなおさず人類とは何か、そのアイデンティティーを探すことでもあるのではないでしょうか。

 西はりま天文台の鳴沢さんは、子供たちに向けてOSETIを公開したりしていますが、その際には本当に子供たちの目が輝いているそうです。なかなか見つからないかもしれない、でもこのような活動は非常に意義深いものだと私は思います。

――はい。どうせなら日本の鳴沢さんにファーストコンタクトが訪れてほしい。それは、明日かもしれませんよね!



※鳴沢真也さんの最新著作『宇宙人の探し方 地球外知的生命探査の科学とロマン』(下記リンク)。宇宙人を探すことについて、素人にもわかりやすく書かれています。ぜひ読んでみることをオススメします。

■関連サイト
と学会公式HP
SETI

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