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やらない後悔よりもやって反省が基本ルール!――弥生株式会社社長 岡本浩一郎

2013年11月22日 11時25分更新

ルールを変えようキャンペーン

 中小企業、個人事業主向けの業務ソフト『弥生会計』『やよいの青色申告』などの『弥生シリーズ』で業界トップシェアを快走する弥生株式会社を率いる岡本浩一郎社長に、「ご自身のルール」についてお聞きしました。

やらない後悔よりもやって反省が基本ルール!――弥生株式会社社長 岡本浩一郎

 

■やらなかったら何が起こったのか永久にわからない

 

――きょうは「ルールを変える」というテーマなのですが、ずばり岡本さんにとってのルールとは何でしょう?

 

 座右の銘というわけでもないのですが、「やらないで後悔するよりもやって反省」というのが私自身の基本的な行動ルールです。
 やれることがあれば、まずやりましょうと。やらない理由はいろいろ出てきてしまうので、それを探してやらないよりも、リスクがあったとしてもまずやってみる。そういう姿勢はすごく重要だと思っています。

 

――それで失敗してもいいということですか?

 

 それは問題ないですね。やったことによる失敗は、必ず取り返せるんですよ。失敗したら失敗したで現実を直視して、それに対して最善を尽くせばいい。
 一方で、やらなかったときは何が起こったかというのは永久にわからないので、「あのときやっておけばよかった」という後悔は消えないんですよね。やって失敗したことは、リカバリーは可能だし、反省を次に活かすことができる。

 ただ、「失敗したときに周りにどういう影響があるだとか、相手に迷惑をかけるとか、そういうことは考えるべきじゃないか」と言われたこともあります。
 そういう観点も重要だと思います。何が起こりうるか、それによって誰かに迷惑をかけるのではないか、そういうことを考えることは必要だと思いますが、それを考え始めると動けなくなってしまうのも事実です。

 日本ではそういう部分が強く、起こりうる悪いことを考えて結局動けなくなることが多い。でもそれで自分の歩みを止めてはいけないと思いますね。

 

――10月1日の安倍総理の会見で、予定通りに消費税率を2014年4月から8%に引き上げるという表明がありました。10月18日発売の『弥生14シリーズ』は、新消費税にもいち早く対応しつつ、例年のシリーズよりも1か月近く発売日が早くなっていますね。

 

 消費税率の引き上げは、弥生のお客さまに大きな影響を与えます。去る9月に消費税率の引き上げについて小規模事業者の方にアンケートを実施したのですが、消費税率の引き上げによる特段の影響はないという回答も6%ほどあったものの、過半となる57%は影響がある、残りの37%はまだわからないという回答でした。一方で、まだ対策を検討したり、決めることができていないというお客さまが実に68%もいらっしゃいました。

 お客さまは、消費税率の引き上げを自社の売価にどのように反映させるのかを決めなければなりませんし、同時に、仕入価格がどのように変化するかを予測し、必要であれば交渉を行わなければなりません。さらに、弥生会計のような業務ソフトウェアの消費税率引き上げ対応も行わなければなりません。
 これらの準備に追われるお客様に少しでも力になれればと考え、発売日を早めました。

 弥生にとっては、大きな決断でした。仮定の話ですが、もし消費税の引き上げが見送りになっていたとしたら、引き上げに合わせてすべての開発をしていましたし準備もしていましたので、どれくらいの損失になっていただろうと思います。
 もうひとつのオプションとして、消費税引き上げの状況がはっきりするまで動かないというのもあると思いますが、そうすると、お客さまにご提供できるタイミングがものすごく遅れてしまうわけです。そこはある程度取らざるを得ないリスクで、取る意味があるものと考えています。

 

■同じことを続けていても成長できない

 

――10月7日の新製品発表会でも報告されていましたが、2013年度の業績も非常に好調でした。製品シェアが本数ベースで約6割まで伸びて、業務ソフトの分野では独走しています。2008年の社長就任からここまですべてが順調なのでは?

 

 就任した5年前というのは外から見れば絶好調だったと思いますが、内部的には大変でした。私が就任する前は、会社法の改正等々の外的要因があって事業は急成長していましたが急成長の歪みが積もっていて、その歪みの部分をあるべき姿に軌道修正していくことが必要な苦しい時期でした。

 今はいい状態ですが、同じことを続けていて維持できると思っていません。ビジネスモデルをさらに進化させるべきタイミングだと考えています。やはりひとつの企業が同じことをして成功し続けるというのは難しいですね。ひとつのビジネスモデルの賞味期限はどんどん短くなってきていて、昭和の時代であれば20年くらいはやっていけたかもしれませんが、今は本当に数年の世界だと思います。

 自己変革、やめるべきものはやめて変えるべきものは変えていかないと、この先もまた成長していくのは難しいと思っています。

 

――PCソフトは、パッケージモデルじゃなくてクラウドモデルがそろそろくるんじゃないか、といった声もありますけども?

 

 あると思います。ただある日を境にパッケージからクラウドにスパッと切り替えるという話ではなく、パッケージでもクラウドでも、お客さまからすればどちらも手段に過ぎませんので、どちらかが圧倒的にいいという話ではないと思います。

 既存のパッケージとともにクラウドベースのものも用意する、お客様に選択肢を提供して、さらにそれをハイブリッドにしていく……クラウドの良さとパッケージの良さをうまく組み合わせていく、ということはやっていかなければならないと思っています。

 

■事実を突きつけるだけでは人間は動かない

 

――岡本さんはもともとコンサルタントをされていて、何かを変えるというのは得意なんじゃないかと思います。就任時にまず取り掛かられたことはありますか?

 

 まずは会社の実態をきちんと理解するということです。事実をベースに議論しなければ話はかみ合わないので、今何が起きているのかという事実を掘り下げていくということは、当然やらなければいけません。
 ただ同時に「事実はこうなんだよ」って突きつけても、人間はなかなか素直には受け止められないですし、社長と部下という立場的には上下だったとしてもお互い人間なので、やはり信頼関係がベースになければいけないと思いますね。
机上の空論では人はついてこないので、自らが率先してみんなを引っ張っていく、自らがやる姿勢というのはすごく重要だと思います。

 外部から来てコンサル出身というと、人並み以上にそこは意識して努力をしないといけません。「ロジックだけで人の感情がない」とか、「うちの会社のことを何もわかってない」とか、そういう目で見られがちだからです。少しでもポジティブなほうに持っていこうとしたら、まずはちゃんと行動で示す必要がありました。

 私が就任したのは5年前の4月ですが、その年の夏前に、家電量販店の店頭に、一日、営業で立たせてもらったことがあるんです。
最初にその話をしたときは「え?社長が何言ってんですか」と真に受けてもらえなかったので、しつこく「店頭に立ちたい!店頭に立ちたい!」と繰り返したところ、これは本気なのかなとようやく理解してもらえました(笑)。
 リテール営業の若手についてもらって二人で量販店の店頭に立ちました。たぶんそれが、口でどうこう言うだけではなくて、「あ、この人は本当にこの会社を理解しようとしているんだな、自分で身を張るんだな」と思ってもらえたきっかけになったのではないかと思いますね。

 

岡本浩一郎(おかもとこういちろう)

弥生株式会社代表取締役社長。1969年横浜生まれ。東京大学工学部卒。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)経営大学院修了。野村総研を経てボストンコンサルティンググループで経営コンサルタントとして活躍、その後自ら立ち上げたコンサルティング会社を経て、2008年から現職。著書に『会計ソフトだけではダメ! 本当の会計の話』(PHP研究所)。趣味はカヤック。

■関連サイト

Twitter@kayokamoto

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