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YMCK「絶望でも希望でもない世界を表現したかった」4年ぶりアルバムを語る

2013年10月03日 14時00分更新

 8ビットポップユニットYMCKが実に4年ぶりのアルバム『FAMILY DAYS』を10月2日にリリース。彼らが過ごしてきた日々の葛藤と、現在の思いをそのままパッケージした新作についてじっくりお話を伺いました。また、インタビューとともに『秋に聴きたい曲』と愛用品もご紹介。実りの秋にふさわしいボリュームたっぷりの内容でお届けします。

YMCKインタビュー

僕らが過ごした日常そのまま

――4年ぶりの新作。アルバム名『FAMILY DAYS』も含め、YMCKの日々が反映されている作品だと感じました。

除村 そうですね。割と辛い4年間でした。思うように活動ができませんでしたし、自分たちが動かないと何もかもが止まってしまう、外的刺激もなくなるのだと肌で感じたんです。それに、かなり音楽業界全体を取り巻く状況や、雰囲気に飲まれていた部分があったと思います。

――音楽が売れなくなっている昨今の状況は、アーティスト側にも深い影を落としたのですね。

除村 音楽は売れない、だから作品をつくってもしょうがないって。でもこれは隠すことではないし、今更声に出して言うことでもないと思います。皆が知っている事実ですから。でも「これじゃいけない!」と考えて「つくれば何か動き出すのではないか」と。販売枚数は以前ほど動かなくとも、それはそれ。とにかく止まっているYMCK自体を動き出せる状況にもっていくべきだと思ったんです。

――その意思表示が今作だと。だからこそ、その状況や思いが込もったリアルな世界が楽曲のなかに広がるのですね。

栗原 今までも、言いたいことは入れてはいましたが、世界観をガッチリつくって、結果的にファンタジーに落とし込む方法を選んでいました。でも、新作はリアリティーをかなり追求し、言いたいことをそのままストレートに出したんです。それに、最初から“シリアス”な作品をつくろうという意志もありました。

除村 だからといってアルバム全体が暗いわけでもありません。“シリアス”はひとつのキーワードであって、楽曲をよく聴くとそれだけではないこともわかると思います。悲観や、現実逃避している部分もあれば、逆に少し前向きな部分もある。本当に僕らが過ごした日常そのままというか。「辛いよな……だからどうしようか」でもなくて、「まぁいいか」と思ってしまう感情さえも隠さずに入っていますから。

スーッと入って染みこんだあとにフワッと抜ける

――歌詞は直接的ながら、答えをあえて出さないスタンスなのだと思いました。

栗原  “絶望でも希望でもない世界”を表現したかったんです。キレイな言葉を並べて、「頑張ろう」と言うのではなく、だからといって「おしまい」とも言わない。ただ淡々とした日々を並べましたね。

除村 答えを言わないのもそうですが、感情を淡く淡く表現することも意識しました。それによって、曲ごとの微妙な感情の揺れや、違いが伝わるようになったと思います。

――淡いからこその聴きやすさも今作にはあると感じました。

中村 肩の力を抜いて聴けると思いますね。スーッと入って、染みこんだあとにフワッと抜けていく感じでしょうか。自然に聴いていただける気がしています。

除村 確かに、リラックスしたアルバムにはなっていますね。力んでいないし、あっさりとしています。曲の構成もギチギチせずに、メロディーを生かしていますから。

栗原 結果、ポップスに振り切った、いいアルバムになったと思うんです。

――たくさんの場所で鳴る気がするいい作品だと個人的にも思います。制作したことで、当初の思惑通り、現状の打開にいたったのでは。

除村 そうですね。今の技量で納得いく、いいものをつくれたことで、僕ら自身が歩き出せました。本当に、いいきっかけになりましたし、エンジンがかかって、車輪が回ってきたと思います。

中村 悶々とした部分を抱きながら、いろいろな紆余曲折を経て、やっと抜け出せました。そして、その先にはいろいろな課題があることが見えたんです。新作は本当に、僕らの4年間をそのまま具現化しています。だから、聴いてくださる方も、このアルバムで、もやもやした気持ちを一度リセットして、これからどうするかを考えてもらえたら嬉しいですね。僕らと同じように、何か動き出す、そのきっかけにして頂けたらいいなと思います。

今回インタビューの際にプレイリストも制作していただきました。YMCKの3人が秋に聴きたくなる、とっておきの曲とは!?

お題
『秋に聴きたい曲』
選曲:YMCK

秋は過ごしやすい季節ですね。木枯らしも吹いたりしますが。ちょっと切ない系の曲を選びました。(除村)
僕にとって秋は大好きな冬に向けての準備期間です。(中村)

【1曲目】
ミシェル・ルグラン
『マクサンスの歌』
(アルバム『ロシュフォールの恋人たち — オリジナル・サウンドトラック (LES DEMOISELLES DE ROCHEFORT)』収録)

とっても、おフランスな曲です。冒頭から落ち葉が舞う印象がします。ちょっと寂しさを漂わせながら大通りを歩く雰囲気があります。(除村)

【2曲目】
坂本真綾
『紅茶』

(アルバム『Lucy』収録)

音がとても切ない感じがして、まさに秋を感じる曲です。時計台など歌詞に出てくる言葉にも寂しさがあります。(栗原)

紅茶 - ルーシー

【3曲目】
明和電機
『お陽さまみえたらふとん干して』

(アルバム『地球のプレゼント』収録)

秋のポワーンとしたイメージがうまくまとまっている印象です。それに、明和電機さんの楽器のカラクリの音が気持ちよくて、聴いていると眠くなってしまうんですよ。

【4曲目】
PRETTY MAIDS
『Please Don't Leave Me』

(アルバム『It Comes Alive - Maid in Switzerlandf』収録)

いわゆるメタルバンドの正当派バラード。割と秋晴れの日に近所の路地など人通りの少ない場所を聴きながら歩くのがオススメです。サビの、ちょっと懐かしい雰囲気がイイんですよ。

Please Don't Leave Me - It Comes Alive - Maid in Switzerland

【5曲目】
ringo(susumu yokota)
『Renkon』

(アルバム『Plantation』収録j)

根菜なので秋冬かなぁと。アルバムに収録されている曲名が、全部植物の名前でおもしろいんです。テクノで、音もホワホワしていて大好きです。

【6曲目】
Bo(上保徳彦)
『クロト(テーマ)』

(アルバム『コラムス・コラムス2/セガ』収録)※App Storeにゲームあり

教会音楽のようで、神秘的な要素がいろいろ混ざっている音がします。とても中毒性のある曲で、オルガンの透き通った音色も心地よく、この曲が流れていると眠くなります。秋は僕にとって眠りの季節なのかもしれませんね。

コラムス - SEGA CORPORATION

愛用の機材もご紹介頂きました。気になる製品は……コチラ!?

レトロ調デジタル対応 USBゲームパッド『BGCFC801RDA』

スペア用のコントローラーです。十字キー部分が他社に比べて滑らかでタッチ感がいいです。もっと使い勝手をよくするためには、純正のコントローラーを分解して、ゴムを入れ替える方法があります。僕も入れ替えた経験が!

YMCKインタビュー

【ニューアルバム】
YMCK
『FAMILY DAYS』

YMCKインタビュー

8ビットサウンドが静かに心を浄化する

人生で必ず経験する悲しみ、苦しみ、そしてその状況を打開するかすかな光を8ビットサウンドに乗せ淡々と綴る新作。アルバムが進むにつれ、ゆっくりながら前に進める気がしてくる。
● 10月2日発売 ●1800円 ●not records

【プロフィール】
除村武志(作曲、作詞、編曲、サウンドプロデュース、映像)、栗原みどり(作曲、Vo.)、中村智之(作曲、映像)による8ビットポップユニット。今年で活動10周年となる。音楽活動ととも映像提供や、アプリ、プラグインの開発など幅広く活動している。10月12日には代官山LOOPにて初のワンマンライブを行なう。

●関連サイト
 YMCKオフィシャルサイト
 

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