2013年09月27日18時30分

子供の力を借りて新型Macゲットなるか? 電子版我が妻との闘争|Mac

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 MacPeopleにて好評連載中のコラム「我が妻との闘争」。Macを愛し、毎夜ホームページ作成に挑むサラリーマン、呉エイジさん。新製品やOSを買いたい気持ちはやまやまですが、小遣いは月2万、加えてとにかく無駄使いを嫌う奥さまに「Macを卒業しろ」「金食い虫」「ダメ夫」と嫌みを言われる毎日。本作は鬼嫁の迫害に耐えながらMacを愛し続ける男の悲しい記録です!

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 すでに紙版で発売されている1〜4巻と、2009年1月号から2011年6月号までの全30話を収録した第5巻が9月26日に電子書籍で発売されました。ここでは、「第2巻 極寒の食卓編」から、「暗躍の代償」を丸ごと掲載しちゃいます。

暗躍の代償

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 残業で疲れ切った自分へのささやかなご褒美として、仕事の帰りにコンビニに立ち寄り、巨乳グラビアを悠然と眺めていたときのことである。突如頭に物凄いアイデアがひらめいた。これはもう「天啓」といってもいいだろう。

 いままでの私は何事にもひとりで頑張りすぎていた。涙ぐましい「頑張り屋さん」であり、そして愚かであった。

 それは巨大風車である嫁に竹槍で突っ込んでいくドン・キホーテのようなものだった。私の渾身の一撃であっても、嫁にしてみれば蚊に刺される程度にしか感じてはいない。私は虚しく空の彼方に吹き飛ばされ、星屑になるだけである。

 もっと早く「ひとりの力では到底嫁には勝てない」という事実に気がつくべきであった。

 一家の主というミジンコのごときささやかなプライドが邪魔をしていたのであろうか。複数の力で悪を倒すことは何も恥ずべきことではない。「秘密戦隊ゴレンジャー」だって公然と5人で闘っているではないか。

 私のDNAを忠実に受け継いだ愛する我が子たち……確かに危険な賭けではある。なぜなら子供たちは私のMac好きの要素も入ってはいるが、嫁の凶悪な要素も含まれているからである。

 しかし、長女と長男を見方につけた「3対1攻撃」でもしなければ、数年前から硬直している新型Mac購入計画は何の進展の兆しも見えてはこない。籠城ともいえる現状ではいずれ兵糧も底が尽き、ストレスのあまり私は干上がってしまうだろう。

 そうなる前に一国も早く手を打たねばならない。世のサラリーマンは出世のため、上司に中元歳暮を贈り、覚えをよくしているではないか。魚心あれば水心なのだ。明日は日曜日。作戦を決行するのは明日以外にない。

 「本屋に立ち読みに行ってくる。ついでに子供たちも一緒に連れていこうか?」

 部屋の掃除をしたがっていた嫁は大喜びである。さっそく子供たちを乗せて車を出す。

 「あれ~? パパァ、こっち本屋さんじゃないよ」
 フロントガラスに映る景色に異変を感じた長女が真っ先に口を開く。

 「いやぁ、いいんだ。パパはいつも仕事で忙しいだろう? そしてお休みの日はずっとMacを触っているだろう? だからいま日はみんなにサービスしようと思って。次はぁ~枡屋ぁ~枡屋ぁ~」
 嫁の車であるマーチの後部座席はすでにお祭り騒ぎである。マーチは勢いよく近所の喫茶店に滑り込む。

 長男は素早く車から飛び降りると、ガラスケースに頬っぺたをくっつけるほどの勢いでメニューをのぞき込む。あぁ、いままで私は子供たちにこれほどまでひもじい思いをさせてきたのか……。

 「パパァ~、僕ケーキセット。絶対ケーキセット」
 「わかったわかった。で、そっちは何にするか決まった?」
 私の問い掛けに一瞬、長女の顔が曇る。そして言葉に詰まりながら小声で話しかけてきた。

 「パパ。私、チョ​コレートパフェが食べたいんだけど……ちょっと高そうなの。お金大丈夫?」

 私は心の中で激しく泣いた。子供たちはママがお金を持っていて、パパがお金を持っていないということを当たり前のように思っている。

 お前たち、それは違うんだよ。ママの財布にお金が入っているのはね、パパが血と汗で稼いできた給料を巻き上げているだけのことなんだよ。

 テーブルにカラフルなケーキセットとチョコレートパフェが並ぶ。それを見て、嬉しさのあまり半泣きになる子供たち。

 「パパァ~、私パフェ久しぶりだよ~。超久しぶり~」
 長女のひときわ高い声が店内に響き渡る。浜崎あゆみに似たウエイトレスさんが信じられないような目で私を見る。

 「さて、お前たち。いま日はパパのお話を聞いてほしいんだ」
 「お話ってなあに?」

 「あのな。パパの持ってるMac、ずーっと同じMacやろ? もうだいぶ古いねん。でな、新しいの買ってほしいんやけどママが怒るやろ。そこで2人にパパの応援をしてほしいんや」
 「応援? でも怒るとママ怖いし……」

 「ほーら、ほら。そのチョコのついたバナナ、おいしいから先に食べなさい。なんならおかわりしてもいいぞ。応援なんて簡単だ」

 2人で『パパっていつもお仕事頑張ってるから、ご褒美に新しいMacかってあげてよ』って言うだけでいいんだ。

 「『買ってあげないとパパがかわいそう』って泣いてみせるのも効果的だな」

 「でもママがお風呂で言ってたよ。Macがあるから階段のあるおうちに住めないって。おうちが買えないのはみんなパパのMacのせいだからねって。私、階段のあるおうちに住みたいし……」

 「(話を遮るように)ジャンジャンジャーン。お楽しみサービスデーはこれだけでは終わりません。食べ終わったらみんなで『トイザらス』に行きましょう。2人はいっつもイイ子だから、パパが好きなオモチャを買ってあげよう」

 「パパ、いいの? クリスマスでもお誕生日でもないのにオモチャ買ってもいいの?」
 長男の声が店内に響き渡る。子供たちよ、頼むから声のボリュームは落としてくれ。

 トイザらスに着くと、子供たちは元気よく店内を駆け抜ける。お目当てのオモチャは決まっているようだ。

 「パパァ。私、この折り畳みミニパソコンがいい」
 長女が選んだのはノートパソコンに似たオモチャであった。

 特価5980円なり。かなり痛いなり。

  なんとか手持ちの軍資金で収まりそうだ。しかし喫茶店代をオモチャ代でかなりの出費である。月末まで大丈夫なのか? イヤ、いかん! そんなケツの穴の小ささでどうする。先行投資だ。今回だけは絶対にエビで鯛を釣らねばならないのだ。

 「いいか、忘れるなよ。パパを応援してくれる約束で買ってあげるんだからな。わかったならレジ行ってらっしゃい」
 「でもねパパ、この前『ガオエレファント買って』ってママに頼んだら『クリスマスまで待ちなさい』って怒られたよ」

 「だからママにはオモチャを買ったこと内緒だってば。パパが先に玄関に入るから、オモチャはうしろにでも隠してサーッと奥の部屋に行きなさい。そして素早くオモチャ箱に入れてわからなくするんだ。わかったな」

 その言葉に安心したのか、子供たちは順番争いをしながらレジまで走っていった。

  県住に着き、階段を登るたびにうつむきがちになる子供たち。心配ない、パパの味方に着けば大丈夫ーーそう心では思いながらも、ドアノブに伸ばす自分の手が震えていることに気づき愕然とする。勝たねば……勝負には勝たねばならん。

 「ただいまぁ~」
 牛の死骸のごとく、テレビの前に寝そべりながらワイドショーを観ている嫁のおなじみの光景が目に飛び込む。

 「アンタ立ち読み言うてたけど、えらい長かったやないの」
 「いや、面白い本があってな。買おうかとも思ったけど節約して立ち読みで済ませてきた」

 オーバーアクションで嫁の注意を引きつける。子供たちは私のうしろを小さい歩幅で通り抜ける。

 「チョット待ちな!」

 嫁の怒声に凍りつく長男。腹にオモチャを隠しているので、シャツが異様に盛り上がってバレバレである。

 「何シャツに隠してるねん。そっちに逃げんと言うてみ」

 震える長男。見つめ合う父と子。嫁と私の顔を震えながら交互に見比べる。長男の緊張はついに限界まで達した。

 「ママ、聞いて。僕な、別にいらん言うたんやけどな。パパがな、味方になったらオモチャ買ってあげるって」(号泣)

 巨額の軍資金をかけた作戦はわずか30秒で崩壊した。長男は徳川軍の威嚇射撃で簡単に寝返った小早川軍状態である。振り返り、頼みの綱である長女にアイコンタクトを送る。

 長女はうつむいたまま何も言葉を発しようとはせず、これも関ヶ原の合戦で味方につくと言いながらも最後まで動かなかった毛利軍状態であった。いわば、全軍総崩れである。

 「ははぁ~ん、オモチャで釣ったわけか。私が日ごろからオモチャは誕生日とクリスマスだけってしつけてきてるのに。アンタは子供の前で平気で無駄遣いして見せるんか。わかった。そんな余裕があるなら小遣いカットして家計にまわしても全然問題ないな。来月からそないさしてもらお」

 敗北を喫した石田三成の心境もこうであったか……。
 鮮やかな夕焼けの中、何重にもエコーする町内放送だけが虚しく響いていた。

これを読んでいる独身者諸君……心して耳を傾けてほしい。
根回しする場合は時間をかけるべし
と、ひと言いっておきたい。

このほか、第2巻では、お風呂の追い炊きをさせてもらえない呉さん、歯を磨くときに水を出しっぱなしにして怒られる呉さん、インターネットのやりすぎでMacを燃やされかける呉さん……のエピソードが収録されています。ぜひ全編お読みください!

 「我が妻との闘争」1〜5巻は、「BOOK☆WALKER」で9月26日から発売開始。1〜4巻は300円、5巻は800円。iBookstoreやAmazonをはじめ、各電子書籍ストアでの発売は10月10日以降。配信が決まり次第、お知らせいたします。

●関連サイト
BOOK☆WALKER 
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