2013年08月13日12時30分

ドコモ ツートップ戦略インタビュー 秋モデルも「ツートップ」なのか?

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 夏モデルで導入された、ドコモの「ツートップ戦略」は様々な方面に波紋を広げた。ツートップ戦略とは、『Xperia A』と『GALAXY S4』の販売に重点を置き、プロモーションの量を増やした上で、毎月の通信料に対する割引も手厚くする施策のこと。店頭でもっとも目立つ位置を占めていたのも、このツートップだった。

ドコモ夏モデル発表会 ツートップ01

 7月26日に開催された決算会見では、Xperia Aが110万台、GALAXY S4が55万台と売れ行きも順調だ。ドコモの代表取締役社長、加藤薫氏も「ツートップ発売以降、ポートアウト(MNP転出)や解約率にも改善の兆しがある」と、一定の評価をしている。特にXperia Aについては、日本のAndroidスマホ史上、過去最高の販売数に達する可能性も見えてきた。

 一方で、NECカシオがスマホ事業から撤退したように、メーカーの統廃合の“引き金”を引いたという批判も根強い。「AQUOS PHONE ZETA」や「ARROWS NX」など、夏モデルには完成度の高いハイスペックなモデルが多い中、なぜこの2機種がツートップに選出されたのかといぶかしがる向きも少なくない。ドコモはなぜツートップ戦略を始めたのか。また、ツートップはどのように選ばれたのか。こうした疑問を、ドコモでマーケティング戦略を担当する、マーケティング部 プロダクト戦略担当 武岡雅則氏と同部マーケティング戦略担当の藤田武志氏にぶつけた。

※インタビューは2013年7月31日に実施したものです。
 

iPhoneと戦える状態になったからこその「ツートップ」

――最初に「ツートップ」とはどういう戦略なのかということを、改めて解説してください。

武岡氏 ご存じのとおり、スマホの世界には、大きくiOSとAndroidという2つのプラットフォームがあります。アップルは垂直統合的に、上手にビジネスを組み立てています。一方のAndroidは、彼らのビジネスモデルだけではなく、キャリアとタッグを組み、数(バリエーション)も含めた訴求をしています。世の中の見え方としては、「iPhone」と「その他のスマホ」になっているんですね。これはPCの世界と同じで、あちらにもMacとWindowsがあり、Windowsはラインアップが幅広い半面、コモデティ化しています。逆に、Macにはアップルの世界観がありますが、一方でシェアが取れていません。
 

 当初、スマートフォンはイノベーター層が多く、機能に飛びつく人が多くいました。ただ、今はフォロワー層の時代に入っています。スマートフォンはちょっと怖いけど、周りに持っている人が多いからなんとなく買うという時代が来ています。ドコモは、そこをAndoridで戦っていますが、商品なり、売り方なりを磨いていかなければいけません。

 端末の品質で言うと、確かに初期は粗いところがありました。しかし、ここ半年から1年にかけては商品性も上がり、不具合もきちんと抑えられています。パフォーマンスが上がり、電池の持ちもよくなったため、十分iPhoneと戦える状態になったと思っています。

 ただし、そこでお客様にどれでもご自由に選んでくださいと言うと、どれを選んでいいのか迷わせてしまいます。そこで、ドコモとしてきちんと自信を持ってオススメできると促すことで、フィーチャーフォンでいい、スマホを買ったけどうまく使えないという方にも、安心して買っていただけることを目指したのが、「ツートップ戦略」になります。


――MNPで“一人負け”といわれる状況が続いていますが、その原因のひとつと思われるiPhoneを意識した戦略ということでしょうか。

武岡氏 ドコモショップではiPhoneを取り扱っていませんが、片や併売店や家電量販店ではきちんと、どうぶつけていくのかを考えなければなりません。セールストークや価格面でも魅力を用意する必要があります。実際に、ツートップは料金も安く設定されていますし、買いやすい条件はすべてそろえています。
 

どれが「ツートップ」に選ばれても不思議ではなかった

――ツートップに『Xperia A』と『GALAXY S4』を選んだ理由をお聞かせください。

武岡氏 総合的に見たというのが、回答になります。

――もう少し具体的に教えていただけますか。

武岡氏 品質面だったり、使い勝手だったり、物自体の力がまずあります。また、スマホはメーカーのブランドを前面に押し出して戦っているところがあるので、その魅力も重視しました。あとは、調達価格も影響しています。そういうものを総合的に見て戦っていると判断したものを、お客様に絞って推奨しています。

GALAXY S4 SC-04E Black Mist正面
Xperia A SO-04E White正面

――なるほど。単なるスペックというわけではないのですね。

武岡氏 正直、どの商品も僅差で、どれがツートップに選ばれても不思議ではないという大前提があります。その中で、今回は最終的に2機種に絞られました。ひとつはハイスペックで勝負できるもの。イノベーターや他キャリアのユーザーを獲得しやすいという観点で選んだのが、『GALAXY S4』です。もう1つは、フォロワー層の方に好まれる、機能が高くてもサイズが小さく使いやすいもので、これが『Xperia A』になります。やはり、大きいと両手使いになってしまうため、それを嫌がるお客様もいますからね。

――ツートップではない端末のスペックが『Xperia A』より上回っている部分がありますが、そういう基準であれば納得できます。決算会見でも触れられていましたが、結果は予想どおりでしたか。

武岡氏 ある程度予想していたところではあります。ただし、当初ツートップに比率が寄ったのは、予想を超えるところもありました。今はだいぶ落ち着いてきています。

――Xperia AとGALAXY S4の比率はいかがでしょう。今のところ、ダブルスコアですが、狙いや価格差を考えると当然の差という気もします。

武岡氏 そうですね。5000円、1万円の価格差が効くということが、如実に表れた結果だと思います。特に『Xperia A』が幅広く買いやすい端末なので、フォロワー層に響きます。そういった意味で、『Xperia A』の方を安く設定しています。価格の後押しはあったと思います。

藤田氏 iモードユーザーを『Xperia A』に誘導しつつ、元々スマホを使っていた人の受け皿を『GALAXY S4』と考えていました。ターゲットに近い層にきっちり刺さっていると思います。
 

スマホになってガラッと変わってしまった。まずはV字回復。

――ただ、元々スマホを使っていたユーザーからの乗り換えを想定していたとすると、機種変更時の価格がツートップではない端末と比べ、あまり魅力的に見えませんでした。その条件だと、2つのキャンペーンのうち「はじめてスマホ割」も使えません。

藤田氏 2つのキャンペーンに関しては、機種変更の6割強のお客様が対応しています。

武岡氏 たしかに全部に割引をつけられればいいのですが、予算もあり、そうはいきませんからね。ただ、過去のGALAXYユーザーに限らず、個別にクーポンを送るなどして、適宜対応してきました。

ドコモ ツートップにははじめてスマホ割などが適用される

――なるほど。確かに、そういった施策があれば、機種変更はしやすそうですね。一方で、ツートップ以外の端末が、非常に厳しい状況になっています。

武岡氏 誤解のないようお伝えしたいのですが、キャリアが中心となってビジネスを主導するビジネスモデルが、スマホになってガラッと変わってしまったという前提があります。プラットフォームもグーグルやアップルといった、OSレイヤーが中心になっています。我々も課金やdマーケット、dメニューなどはやっていますが、昔のような垂直統合型ビジネスモデルは崩れています。

 つまり、ドコモ1社が頑張ってメーカーを支え続けていける環境ではなくなっていることも事実です。我々が早くV字回復をして、MNPの流出が続いているのを止め、きちんと戦って勝つフェーズにいかなければなりません。一方で隣の2社を見ると、iPhoneがあり、魅力的な価格戦略で売っています。その中で第一に考えるのがV字回復、それができて、初めて次の戦い方の議論になります。

 また、これも大事な観点ですが、初期にかなり積極的にスマホを売ってきた反動でもありますが、それが裏目に出ている部分もあります。スマホはよくなっています、今機種変更してもう一度スマホのよさを実感してほしい。既存のお客様を満足度の高い機種に誘導して、そういったことをお伝えするためにも、ツートップ戦略は意味があったと思っています。
 

「ツートップ」に入ることを目的にしてほしくない

――ほかのメーカーは、今後ツートップに入る可能性はあるのでしょうか。

武岡氏 まず前提として、ツートップを今後も続けるかというと、まだ未定です。状況に応じて戦い方は変えていきます。また、ツートップに入ることを考えて端末を作り出すと、本来の目的ではなくなり、お互いにとってもよくありません。いい商品と調達のしやすさを含め、どうすれば他のキャリアに勝てるのかという目線で見ているということです。ドコモの中で切磋琢磨し、キャリア間の競争で優位に立てるようにするのが本来の姿です。できるだけ、そういった形にはなっていきたいですね。

――ツートップがいかに安いとはいえ、iPhoneは逆に現金がもらえてしまう状況でもあります。そこでの戦いは厳しいのではないでしょうか。

武岡氏 そうですね。我慢比べの世界です。

藤田氏 割り引きキャンペーンは各社で実施されていますから。

武岡氏 お客様は安ければいいというご要望もある一方で、正直に、ウソのないように丁寧にやっていきたいと思います。

――ツートップ以外に目をやると、意外とハイスペックな全部入り端末が多かった気がします。ここがもう少し、個性重視の方向に変わっていくことはないのでしょうか。

武岡氏 全部入りを求める雰囲気や国民性はありますし、全部入りでもお求めやすい価格にすることもキャリアがやっています。ただ、大きいサイズ一辺倒でいくのかそうでないのかは、まだ定まっていません。『Xperia A』も、スマホがそろそろ大きくなりすぎたので、次はコンパクトでという理由で売れています。そういった意味では、デザインや画面サイズでバリエーションが出ていくと思います。

 また、別の軸として力を入れたいのがタブレットです。タブレットであれば、違う価値や使い方を提案できます。生活のスタイルが変わり、2台持ちにもなるので我々にとっても2回線目の獲得につながります。

dtab001

 タブレットは、スマホでクラウドを介して連携することで便利な端末です。場所によってスマホとタブレットを使い分ける。そんな利用シーンが考えれます。もう1つには『dtab』のような商品があり、イーコマースなどをお使いいただくことに特徴を寄せた製品です。我々の強みは、UIというフロントを持っていることです。分かりやすい、使いやすいものをプリインストールし、それを買っていただくことができます。そうすれば、シニアのように、Amazonや楽天を聞いたことがない方にも、お買い物をしていただけます。ドコモはスマホはスマホとしてがんばりつつ、PCを巻き取るという観点でタブレットの数を伸ばしていきたいですね。

――ツートップ開始以降、月々サポートの額にも若干の変更があり、『Xperia A』以外が安くなりました。その影響はありましたか。

藤田氏 数値としては、GALAXY S4の伸び率が上がってきています。割引額を増やしているのは「はじめてスマホ割」で、iモードユーザーの方に対してです。元々初期のスマホユーザーには一定の競争力を持っている中で、ハイスペックを求めるiモードユーザーの一部に効いています。
 

【ライター 石野純也の目】

ドコモならではの端末がなくなっていく? 「売り」はつくれたが舵取りの難しい戦略

 幅広いメーカーが参画し、バリエーションが広い端末が存在するのはAndroidのメリットでもあり、デメリットでもある。特に初めてスマホを購入するユーザーには、微妙なスペックの違いが分かりづらいことも事実だ。これに対して、ドコモツートップは一定の成果を出している。特にXperia Aは、110万台と販売は好調で、端末そのものもソツなく仕上がっている印象を受けた。

 一方で、元々スマホからの機種変更を狙いにしていたのであれば、『GALAXY S4』は最初からもう少し大胆な価格設定にしていてもよかったのではないかと感じている。『GALAXY S4』は本体価格が非ツートップの端末より高く、月々サポートで逆転する格好となる。ただ、約3万円という機種変更時の実質価格はこれまでのハイエンド端末とあまり変わらず、正直なところインパクトに欠けている。これは、月々サポート改訂後も同じだ。むしろ、他の端末が安くなったことで、差は埋まってしまった。

 また、夏モデル全体の状況を見ると、『Xperia A』と『GALAXY S4』に売れ行きが偏り過ぎている印象も強く受ける。ドコモとしては明確な売りをつくれた半面、メーカーにとっては厳しい状況と言えるだろう。ドコモはもともとAndorid端末で大きなボリュームを見込めたキャリアだけに、ツートップ戦略が続くと、リスクを分散化させるために、メーカーがフラッグシップ端末のマルチキャリア展開を進めてしまうシナリオも考えられる。そうなると、iPhoneがない中での“ドコモだけ”という端末がなくなってしまう。

 販売台数やポートアウトの抑制といった成果を上げたドコモのツートップ戦略は強力な武器だったが、これは舵取りの難しい諸刃の剣でもある。秋冬以降、どのような販売方法が採用されるのかにも、注目しておきたい。評価を下すのは、それからでも遅くはないだろう。

ドコモ夏モデルはツートップを含め合計11機種をラインアップ

●関連サイト
NTTドコモ

※(8月14日15時追記)冒頭の本文にて「プロモーションの量を増やた上で」とありますが「プロモーションの量を増やした上で」と修正いたしました。

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