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【私のハマった3冊】人と味さえ残れば復興は可能 ツマミにしたいうまい話

2013年08月03日 13時00分更新

941BOOK

復興グルメ旅
著 復興グルメ取材班
日経BP社
1365円

きぼうのかんづめ
著 すだやすなり、絵 宗誠二郎
ビーナイス
1260円

おかみのさんま
著 斉藤和枝
日経BP社
1470円

 東日本大震災から2年と数カ月。被災地のことについて、だんだん人々の口の端にのぼらなくなってきた。頭の片隅にはうっすらと残ってはいるが、“復興支援”とか“ボランティア”とか、ずいぶん大仰で自分からは遠い世界のことのように感じてしまう。みんな、何かしたほうがいいと思っているはずなのに、腰を上げるきっかけが見当たらない。そんなときに役に立つのが今回紹介する復興グルメ本だ。

 まずはズバリ、『復興グルメ旅』。「とにかく東北に行ってわいわいゲラゲラ食べて帰ってくる。それだけでいいと思う」という佐藤尚之(さとなお)の序文がすべてを言い表している。地元の魚を使った石巻『すし寶来』の握り、気仙沼『大漁丸』のマグロ鍋、『あまちゃん』フィーバーで沸く南三陸『シーサイド』のウニ丼など、どれも美味いに決まってる50店の名物メニューがそれぞれの復興エピソードとともに紹介されている。ああ、今の締切地獄から脱したら、この本を片手に北へ旅してうまいものを食べ漁りたい! それで復興になるんだから、こんないい話はないですよね。

『きぼうのかんづめ』は、いわば復興グルメ絵本。津波で甚大な被害をこうむった石巻市の水産加工会社、木の屋石巻水産の工場跡の泥の中から出てきた数万缶の缶詰を、東京・経堂の人たちと石巻の人たちが手をとりあって希望に換えていく。中心にあるのは、木の屋の美味しい缶詰。サバ缶が絶品なのです。

『おかみのさんま』は、“金のさんま”で知られる気仙沼の水産加工業・斉吉商店3代目のおかみ、斉藤和枝による復興の記録だ。工場が全壊する中、流されてしまった“返しだれ”の真空パックが見つかって、ようやく復帰のめどが立つくだりはグッと来る。同じようなエピソードは『復興グルメ旅』にも見られるが、つまり人と味さえ残れば、復興は可能になる。僕はそんな話をツマミにうまいものを食べに行きたい。
 

大山くまお
8月19日に『中日ドラゴンズあるある2』が出ます。イラストは河合じゅんじ先生です! よろしくね。

※本記事は週刊アスキー8/13-20-27合併号(7月30日発売)の記事を転載したものです。

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