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MSX(と妹!?)が大活躍する新作ラノベ作者がハンパない件:MSX30周年

2013年07月02日 10時30分更新

MSX30周年スロット&スプライトロゴ

 ひとつの妖怪がラノベ界を徘徊している-----MSXという妖怪が……。MSXが出てくる小説といえば『中二病でも恋がしたい』、『化物語』、etc. マンガなどもそうだが、これまでにアニメ化された作品も少なくない。これはもうきっとMSXをちょっとでも出すと縁起が良くなるのだろう。そうに決まっている。というわけで今回は2013年登場のMSX大活躍の最新作ライトノベル『妹戦記デバイシス(スマッシュ文庫)』)の作者、日下一郎先生にインタビューを敢行したぞ!

MSX30周年記念_第4回
↑『妹戦記デバイシス』かつてこれほど重要な役割をMSXが担ったラノベがあっただろうか? と、MSXユーザーのOFF会で紹介された時、嬉々と裏表紙のあらすじを見て1秒後に絶叫してました。アラフォー脳だもの仕方ないよね。

 ……その前にこの作品の紹介を。難解で“理解不能”な設定かもしれないが、生暖かい気持ちでまずは読んでほしい。

 20XX年。異世界から出現した、謎の勢力“アウタ・シス”は人類の意識に侵入し、自らを“妹”として認識させる恐怖の侵略者だ。かわいい妹に攻撃などできない! 瞬く間に世界の半分を“妹”に制圧された人類。――あれから三年。追いつめられた人類は、ようやくアウタ・シスのテクノロジーの解析に成功、ついに反攻に転じた。そう、“妹”ならば“妹”を攻撃できる。人類は“妹力”で駆動する驚異の戦闘機“デバイシス”で反撃に出る。“兄候補生”の主人公は、世界中から集められた“妹候補生”たちと親密の度を深め、“妹軍(シス・フォース)”の一員となる。果たして人類の救世主となれるのか?

 …………おーい!大丈夫ですかー?付いてきてますかー?
 まあ、なんだかよくわからないかも知れませんが、高性能なコンピューターはみんな敵の影響を受けて狂ってしまうので、へぼい性能であるMSXを使って航空管制や戦闘機を動かしたりとMSXファン垂涎の活躍を欲望の赴くままに、そしてご都合主義的に展開させるMSXユーザー必見のライトノベルなのですよ。

ということで、日下先生よろしくお願いします。

MSXアソシエーション(以下、MSXA):まず、とにかくお聞きしたいのは、なぜこの作品にMSXをガンガン登場させたのでしょうか?

日下一郎:“高密度の集積回路は、異世界からの侵略者『異妹(アウタ・シス)』に侵食されてしまうため、低スペックであるMSXを使わざるを得ない”という設定ですが、もちろん趣味です(笑)。作品中の効果という意味では、“妹の力で飛ぶ戦闘機械”という荒唐無稽なテーマに、逆方向からリアリティを加えるギミックになるかと思いました。ウソに対してさらに大ウソをぶつけることで全体をケムにまこうという荒業ですね。危険ですので、みなさんは真似をしないでください。
 旧ソ連の戦闘機が核兵器の電磁パルスに備え、わざわざ真空管を使っているらしいというウワサ話や、同じく旧ソ連のミール宇宙ステーションがMSXを搭載していたというニュース。また宇宙探査機が、あえて搭載コンピューターのスペックを落として宇宙線の影響を防いでいるといったニュースあたりがネタ元となっています。

MSX30周年記念_第4回
↑「ソ連の宇宙ステーション・ミールにMSXが搭載されている」というウワサ話は前々からあった。写真はNASA提供のもので“ウワサは本当だった”のである。どうやらソニーのセパレートタイプのようだ。何に使ってたんだろう? (MSXマガジン永久保存版3より)

MSXA:MSXを出すことに編集側から反対とか無かったですか?

日下一郎:逆に担当編集さんとの打ち合わせで、妙にウケがよかったので、イケイケで盛り込みました。ひょっとして何かのフックになるかと思われたのかもしれませんが、これはその通りでした。ありがたいことです。後半にMSX2搭載の新型機が登場するあたりはもうノリノリでしたね(笑)

MSXA:みごとに釣られた訳ですね~(^^;。ところで、どの機種のユーザーでしたか?

日下一郎:1987年頃に、たしかまずカシオの『PV-7』。それから松下の『A1F』、『A1MKⅡ』(サブ機)、『A1WSX』、『A1GT』の順です。だんぜん松下派でしたね。2DDドライブの不調が悩みの種です。

MSXA:自慢の拡張機器などありますか(カートリッジなど)。

日下一郎:自慢できるほどではありませんが、カートリッジですと、今もコツコツ買い集めて、だいたい500本くらい所有してます。最近値が上がってきましたけど、一時期は叩き売り状態でしたので随分おいしい思いをさせてもらいました。拡張アイテムでは、HALSCAN、ソニーのビデオデジタイザ、外部フロッピーあたりかな?

MSX30周年記念_第4回
↑『HALSCAN』スキャナーはプリンターと並ぶ“家で使えるようになった夢の道具”のひとつだった。MSX用は安いのでこれで初めて見たり買ったりした人も多い。これは『HALNOTE』というGUIソフト専用品。

MSXA:500本はなかなか凄い。当時、『MSXマガジン』、『MSX・FAN』などのMSX専門誌は読まれていましたか?

日下一郎:そりゃもう。『MSX応援団』も愛読していました。あとディスクステーションですね。アドベンチャーツクール、吉田工務店、DANTE、DANTE2などいろいろお世話になりました。

MSXA:おお、応援団! それはマニアックだ。もう容赦はいらなそうですね。それでは好きなスクリーンモードは何でしょう。

日下一郎:やっぱりスクリーン2と5でしょうか。2は言わずと知れた横8ドット中2色というあの独特の色味。5はバランスがいいですよね。VRAMに4画面持てるので、7とか8に比べいろいろ遊べますし。10以降のYJKは結局使いこなせませんでした。もちろんおなじみスクリーン1.5も大好物です。

※SCREEN1.5とは:もちろん“SCREEN1.5”というモードが正規にあるわけではない。MSX-BASICではSCREEN2より1の方が扱いやすいが、キャラクターに使える色数が減ってしまう。そこで裏技を使ってSCREEN2の表現力をSCREEN1で使えるようにしたのが1.5。文字や絵をよりカラフルにできるので、「多色刷り」という別名もある。

MSXA:500本のコレクションの中から選ぶのは大変かと思いますが、思い出のゲームやゲーム音楽などあれば、タイトルとエピソードを。

日下一郎:変わった所では『R-TYPE』でしょうか。誰がどう見てもムチャな、「なぜMSX1で」という移植だったんですが、それなりに動いていて「MSXに不可能はない!」と感動しました。面が進むにつれだんだん「おじいちゃん、もうやめて!」みたいになってましたが(笑)。加藤直之先生のパッケージアートも貴重だと思いますね。音楽では定番としてコナミSCCシリーズ、SCCじゃないけど夢大陸アドベンチャーはどれも名曲ですね。ガルフォース、アシュギーネ(虚空の牙城)、ブラスターバーンあたりもお気に入りです。どれか一曲と言われたら夢大陸アドベンチャーの宇宙面ですね。

MSX30周年記念_第4回
↑『R-TYPE』MSX、MSX2兼用というのは珍しい。MSX2で立ち上げるとちょっとだけ画面が華やかになる。そのせいか3メガビットの大容量となっており、グラディウスとかの3倍だ。何かと規格外の無茶なソフトだった。

MSXA:なるほど。そんな著者のMSX愛がにじみ出ている『妹戦記デバイシス』ですが、読者からの反響はいかがでしたか? あと次回作については?

日下一郎:幸いにして、ちょこっと話題になったのですが、妹萌えの方々からは「妹の真髄がわかっとらん」と手厳しい評価もいただきました。これは悔しいので、ぜひリベンジを図りたいところです。その後、意外にもMSX方面で盛り上がっていただいてビックリしているところです。ありがとうございます。次回作については、これは皆様の応援次第といったところですので、ぜひプッシュをよろしくお願いします(宣伝)。

MSXA:あと、MSXっぽい画面のゲームを作られて動画を公開されていますが、これは何ですか? 完成予定はいつ頃になりますか?

日下一郎:これは小説の番外編にあたるゲーム版『デバイシスプラス』です。鋭意開発中ですので、こちらもどうかご期待ください(宣伝)。“妹力”で飛翔する戦闘機械“デバイシス”の戦いを題材とした縦スクロールシューティングゲームとなります。

↑YouTubeで公開されている『デバイシスプラス』デモ画面。MSXテイスト満点のグラフィックとサウンド。

MSXA:沙羅曼蛇の縦スクロール面っぽい雰囲気のシューティングですね。完成がとても楽しみです。オープニングデモはコナミへのリスペクトを感じますね~。こだわりが凄そうです。

日下一郎:グラフィック素材は、MSXによって制御されている「デバイシス」を模して基本的にMSX準拠(横8ドット中2色、パレットはV9958準拠)。複数台のMSXによって構成される“DSX”システムということで、画面解像度は320×480ドット、スプライトは単色、しかも倍サイズ扱いという、ムダにマニアックな仕様となっております。もちろん自機は原作同様、ニカやロナ、ランの搭乗する試作6、7、8号機。妹波メーザーや反妹子爆弾を装備し、原作に登場する“イヒカ”や“ホノオ”と言った個体アウタシスもステージのボスとして登場する予定です。

MSX:純粋な原作ファンも不純なMSXユーザーも満足できるゲームになりそうですね。

日下一郎:ここまでMSXグラフィックにこだわったゲームというのも、なかなかないと思いますので(もちろんそれによって稚拙な開発力を誤魔化せるからですが)ご期待を頂ければ幸いです。ちなみに、仕事の片手間に作ってますのでなかなか進みませんが、今年中には完成させたいと思っています。また、現状PCベースでの開発ですが、できればPCだけでなく、AndroidやiPhoneなどでもリリースして、作中の侵略者“アウタ・シス”のように最先端ハードウェアをMSXグラフィックで侵食したいと夢だけはどんどん膨らませておりますので、かつてのキャッチフレーズにあわせ「夢をのせて」MSX30周年ということで、引き続きどうか応援よろしくお願いします!

MSXA:では最後にファンの皆様へ一言お願いします。

日下一郎:『妹戦記デバイシス』スマッシュ文庫様より好評発売中ですので、どうかよろしくおねがいします!(電子書籍版もあるよ)

(関連サイト)
『妹戦記デバイシス』(スマッシュ文庫)

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ここからはおたよりコーナーです。

@TAOMAN26さん
MSXって今みると結構筐体にもデザインセンスあるね。東芝のパソピアは憧れのブランドでした。横山親子のCMが懐かしい。

---たとえばPV-7とか意外とかっこよく見えちゃうのはノスタルジーだけじゃないと思うんですよね。MSX規格で統一されたとは言え、各社バラバラだったときの気分のようなものが残ってて個性的なデザインが多いのかもしれません。

@Ti_kittyoさん
MSXは日立のテープ付64KB機、2か2+か忘れてしまったがFD付パナ機を持ってたなぁ。

---日立のMSXというと、持ち運び用の取っ手が付いていた『H1』、いや、データレコーダー内蔵なので『H2』ですね。やはり女性アイドルが広告に起用されていました。

@visavis_miyavixさん
僕はCF-3000だった。謎のデュアルスロットww

---松下が“アシュギーネ”の前に使っていた“キングコング”をイメージキャラとしたマシンですね。しかもキーボード分離タイプの。って、スマホのケースや保護シートで有名なミヤビックスさんじゃないですか。いつもお世話になっております。

@msugayaさん
MSXには『ゲームセンターあらし』も『こんにちはマイコン』も、お世話になりました

---すがやみつる先生! 『MSXマガジン永久保存版』ではお世話になりました。すがや先生はMSX誕生以前からパソコンを啓蒙してきた大ベテランです。先生のマンガでパソコンを覚えたMSXユーザーもたくさんいます。これからもよろしくお願いします。

 ということで、今回のようなインタビュー記事はいかがでしたでしょうか。今後もディープなMSX系著名人にインタビューしていこうと思います。もしこの人の話が聞きたい!とか、この作品にMSXが出ているのを見た!とかありましたら下の“ツイートする”ボタンを押して教えてください。また、いつも通りMSXの思い出なども募集中です。この場でご紹介させていただくかもなのでヨロシク!

 

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