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ロシアの検索市場でグーグルを圧倒するYandex、次にGoogle Playを狙うワケ

2013年05月09日 11時30分更新

Androidアプリストアを展開する“ロシアのGoogle”、Yandex――その狙いは?

 検索といえば世界的にGoogleが大きな地位を占めるが、Googleがナンバー1ではない市場がいくつかある。成長市場のロシアもそのひとつだ。ロシアで検索トップを占めるのは、地元企業のYandex。1997年に創業したネットベンチャーで、Google同様、検索以外にさまざまなインターネットサービスを展開する。そのYandexが、先にAndroid向けアプリストア『Yandex.Store』を開設した。

Yandex
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 Yandexはロシアの検索市場で60%を超えるシェアを持つ。中国のBaiduなどGoogleがトップではない数少ない(が、地域としては大きい)市場のひとつだが、特筆すべきはGoogleが利用できない中国とは異なり、ロシアではGoogle検索が利用できるという点だ。Yandexは本拠地のほか、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンの旧ソビエト連邦諸国で展開、2011年にはトルコに進出した。現在、世界の検索市場ではGoogle、Baidu、Yahooに次ぎ第4位、僅差ながらMicrosoftのBingを上回っている。

 先にはブラウザーも発表するなど、ロシアと欧州では注目を集めているYandexに、Androidアプリストアを中心に話を聞いた。取材に応じていただいたのは、アプリストアを率いるAlexander Zverev氏(Yandex.Storeトップ)、広報を統括するVladimir Isaev氏(インターナショナル・メディアコミュニケーショントップ)の両氏だ。

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↑Alexander Zverev氏(左)とVladimir Isaev氏。「Yandexの強さの秘密は?」との質問に、「天才集団だから」とキッパリ。

――Yandexについて教えてください。なぜロシアなど一部市場ではGoogleよりも人気があるのか、その秘密はなんでしょう?

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 Googleの1年前にスタートしたという理由もあるが、Yandexは才能やスキルの高い人ばかりが集まった集団だ。4000人を超える社員がいるが、社風はいまでもベンチャー的でチーム単位で作業しており、常に新しいアイディアが生まれている。

 検索はAlta Vistaなど第一世代の検索サービスがキーワード検索であるのに対し、コンテキスト(文脈)ベースに移った。ロシア語はコンピューター検索にとって難しい言語で、ロシア語向けに優れた検索技術を提供するのは簡単なことではない。我々はしっかりとした研究開発を行なっている。土台にあるのは独自開発した数理言語学技術で、言語の意味、ユーザーの意図を正確に理解できるアルゴリズムを持つ。ロシアは国土が広く、たとえばユーザーが「海」と入力した場合、バルト海なのか日本海なのか黒海なのか、場所によって異なる。Yandexはユーザーの位置から「海」が何を意味するのかを探ることができる。

 このような独自技術により、ロシアではYandexがGoogleよりも優れた検索サービスであることは、Googleのシェアが25%程度で頭打ちになっていることから明らかだ。ユーザーはYandexを選んでいる。

 中国(Baidu)、韓国(Navar)などGoogleが独占していない市場があるが、Googleは世界的にみて独占プレイヤー。我々はGoogleが好きだし、一方で競合が必要だと思っている。トルコに進出したのは、トルコ語はコンピューター検索からみて難しい言語だからだ。ロシア人と考え方がまったく異なる市場だが、トルコの人々に優れた検索サービスを提供するために研究開発を重ねている。

Isaev 我々が目指すのは、単に答えを返す検索エンジンではなく、ユーザーの問題を解決するサービス。「タクシー」と入力したとき、単にタクシー会社の電話番号を表示するのではなく、ボタンをクリックしてタクシーを呼ぶことができる選択肢が必要だと考えている。そういった戦略もあり、先にホームページをリニューアルした。ユーザーの問題に近づき、解決案を提示するサービスに近づいたと自負している。

 Yandexはロシアでは、かっこいい、クールなどのイメージをもたれている。我々はテレビコマーシャル、スポンサー活動などさまざまな方法でユーザーとコミュニケーションを持っており、エンターテイメント企業を目指している。

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――検索エンジンを主力とするYandexが、なぜAndroidアプリストアに進出するのですか?

Zverev いくつかの理由がある。最大の目標はYandex検索を(モバイルにも)広げること。Yandex.Storeによりデバイスメーカーに近づくことができる。ロシア市場ではまだフィーチャーフォンが主流だがスマホが普及しつつあり、中でもAndroidは年4倍ペースで成長している。AndroidでYandexサービスを提供するというのが我々の目標だ。

 だが、現実問題として、AndroidでYandexをデフォルトの検索エンジンとしてプリロードしてもらえる可能性はゼロだ。一方で我々は地図、リアルタイム交通情報、電子メール、ブラウザー、音楽などモバイル製品を持っており、ユーザーがスマートフォンで必要とするサービスはほぼ網羅している。OEMはYandexのアプリストアを利用すれば、必要なモバイルサービスを提供できる。

 次にAndroid端末の上で提供されれば、アプリやゲーム開発者を引きつけることができる。Yandex.StoreはAmazonの『Appstore for Android』と同じで、Androidアプリがそのまま動くし、Google Playに提出したアプリを簡単にYandex.Storeにも提供できるよう、移行プロセスも容易にする。ここでは、Yandex.Storeは(Yandex検索を広げる目的とは別の)独立したグローバル製品としての重要性を持つ。

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↑Android向けアプリストア『Yandex.Store』。50万以上のアプリを揃える。

――現時点では、OEMとキャリア(事業者)向けが最優先課題になりますか?

Zverev Yandex.Storeをプリインストールをしてもらうことが最優先なので、エンドユーザーよりもOEMやキャリアがメリットを感じてもらえる機能にフォーカスしている。現在50万以上のアプリを揃えており、人気ゲーム『Cut the Rope』、ソーシャルサービス『Foursquare』などが含まれている。

 キャリアやOEMの中には独立したアプリストアを求める動きがある。我々はすでに複数の契約を獲得しており(Yandexは2月、中国のOppo、スイスPocketBookなどメーカー7社との提携を発表した)、中にはデフォルトのアプリストアとしてYandex.Storeを提供するところもある。また、ロシアの3大キャリアのひとつであるMegaFonはYandex.Storeを自社ブランドで提供する。このように、ホワイトレーベルでの利用にも応じる。有料アプリは開発者と売上を7対3で共有するが、我々のストアを提供するメーカーやキャリアとも売上を共有する。

Isaev 中国のデバイスメーカーの場合、Androidでスマートフォンを作成するにあたって、Google Playはインストールしたいが、Google検索は不要という事情がある。もしGoogleとGoogleサービス提供に同意しなければ、Androidエコシステムを活用できないことになる。Yandexはそのようなニーズにも応えられる。

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↑ロシアの大手キャリアMegafonは自社ブランドでYandex.Storeをプリインストールする。

――Yandex.Storeでアプリを提供してもらうための開発者向け戦略は?

Zverev 世界の開発者にアプリをアップロードしてもらうため、言語はロシア語、英語、ドイツ語など8言語に対応する。対応言語は今後も拡大する予定だ。

 Yandex.Storeを搭載してくれるキャリアやOEMが増え、ダウンロードが増えるとアプリも増える。最初にフォーカスする地元ロシアではGoogle Playに競合できると見ている。(ロシアの)エンドユーザーはYandexのモバイルアプリを使いたいと思っており、OEMやキャリアはそのニーズを知っているからだ。

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