週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

enchantMOONがついにお披露目!「我々は紙を再発明する」

2013年04月23日 21時02分更新

■enchantMOONとはなにか?

 enchantMOONは、見た目はタブレット型のアンドロイド端末に見えるが、まったく別の概念の製品だ。enchantMOONは手書きメモを行なうための専用端末と言える。ちょうど、ノートパソコンとキングジムの『ポメラ』の関係に近い。ノートパソコンは汎用的でテキストファイルも作れるが、『ポメラ』はテキストファイルのみを作る専用端末。これと同じで、アンドロイドタブレットはアプリがあれば何でもできる汎用端末なのに対して、enchantMOONは手書きメモを行なう専用の端末だ。
 スペックを見ると、enchantMOONはARMアーキテクチャーを採用しているためアンドロイドに近い。しかし、OSはアンドロイドのコンポーネントを一部使用しつつも、UEIが独自に開発した『MOONPhase』を搭載している。

enchantMOON

 また、本製品が他のタブレットと違う最大の点は、ハードウェアを動かすためにOSやアプリがあるのではなく、OSとアプリ、つまり“デジタルノート”というUIとその仕組み実現するためにハードウェアが作られていること。ソフトウェアデベロッパーのUEIがこうしたハードウェアを開発したのは、まさに“理想のデジタルノート”というソフトウェア開発の理想を具現化するための手段なのだ。“パソコンの父”と呼ばれるアラン・ケイは「ソフトウェアに対して本当に真剣な人は独自のハードウェアを作るべきだ」という発言をしているが、UEIのソフトウェア作りへの真剣さが作り出したのがenchantMOONである。
 ハードウェアスペックから、enchantMOONは決して高性能ではないことがわかる。CPUはAllWinner A10 1.2GHzとシングルコアでクロック周波数は高くない。また、液晶もXGAとやや解像度は低め。MOONPhaseはアンドロイドOSのようにARMで動く汎用OSであり、必要とするハードウェアスペックも低い。これが意味するのは、低価格で手書きという直感的なインターフェースをもつ端末を比較的に簡単に作れるということだ。実際に、enchantMOONは大量生産を想定されていない製品にもかかわらず、その実売価格は3万9800円と一般的なタブレット端末として比較的こなれた価格だ。今後、UEIがビジネスとしてMOONPhaseを展開していく上で、この点は大きな武器になると言えるだろう。
 UEIの代表取締役社長兼CEO清水氏に伺ったところ、既にenchantMOONには数社から問い合わせが来ており、MOONPhaseを搭載した端末がどこかのメーカーから登場する可能性もある。

 

■enchantMOONの実機を触ってきた!

enchantMOON

 マルチタッチとデジタイザーペンに対応した8インチ液晶を搭載。ペンは電池を内蔵したアクティブ方式で、ペンの精度が高くなり、部品の価格も安くなるという。ペンにはボタンがついており、消しゴムの役割をする。本体にあるボタンは右上の電源ボタンのみ。

 

enchantMOON

 持ち運び用のハンドル部分には、デジタル一眼レフカメラ用のストラップが付けられる幅広のストラップホールがある。

 

enchantMOON

 フロントと上部に200万画素のカメラを装備。カメラが背面ではなく、上部についているのは、書いている姿勢のまま正面を撮れるようにこだわったとのこと。例えば、黒板の板書をカメラで撮りたい場合にはいちいち本体を掲げなくても良いのは便利だ。

 

enchantMOON

 インターフェースはACアダプターとイアホンジャック、USB接続用の専用端子。ACアダプターは急速充電用。USBからも充電できる。USBでPCと接続すると、マスストレージデバイスとして、USBメモリーやSDカードと同じ認識をする。このため、UEIの清水氏によると「コンビニにあるコピー機で書いたメモが印刷できる」とのこと。

 

enchantMOON

 enchantMOONは、いわゆるiOSやアンドロイドのようにホーム画面というものがない。まっさらな画面に手書きの文字を書くことでメモから設定コマンドまで実行できる。文字を丸で囲むとその文字に対して、別のメモのリンクを張ったり、ウェブ検索を行なえる。また、ウェブページの好きな部分を囲んでスクラップ帳のように貼り付けられる。さらに設定面では“invent”と書いて文字を丸で囲むと文字と背景の白黒が反転するなどの機能がある。なお、認識する言語は日本語と英語、英語の筆記体となる。なお、フォントはNASAが用いた書体の“Futura”を採用。

 

enchantMOON

 書いたメモはEvernoteとの連携して、Evernoteのメモとしても保存できる。写真はEvernoteに転送中。画面のメモがEvernoteマークに吸い込まれていくアニメーションが表示される。

 

enchantMOON

 実際に画面に文字を書いてみたところ、「紙に近い反応速度を目指した」というだけあり、ペンの運びと画面に現われる線の遅延はほとんど感じず、まさに紙に書いているのに近い感覚だった。UEIによると最短反応遅延は0.05秒。書いたときに表現される線はアンチエイリアスが効いており、見た目にも滑らかで綺麗だ。また、筆圧検知を搭載しており、微妙な力加減がキチンと反映されていて書いていて気持ちがいい。試しに米粒大の“あ”という文字を書いてみたが、文字が潰れずに書け、しかもそれをOCRで文字として認識出来ていたのに驚いた。なお、液晶の解像度はXGAだが、デジタイザーペンの解像度は800dpi。画像と記録されるデータも800dpi相当となり、印刷物以上の解像度の手書きが可能だ。

 

enchantMOON

HTML5+JAVA Scriptベースのゲーム開発エンジン『enchant.js』をベースとしたゲーム開発ツール『MOONBlock』を搭載。プログラミング関数を視覚的にブロック化し、変数パーツを組み合わせるだけで小学生でもゲームが作れるようにしている。なお、この開発にはタミヤで『ミニ四駆』の普及を担った経験のある、UEIチーフホビーオフィサーの前田靖幸氏が行なっていく。ミニ四駆を子供達に広めたのと同じように、enchantMOONを子供達がプログラミングに親しむためのデバイスとして普及していきたいという狙いがあるようだ。

 

enchantMOON

 UEIの代表取締役社長兼CEO清水氏は内覧会でenchantMOONを「手書きは思考のための道具」と語った。例えば、何かアイデアやメモをまとめる場合、キーボードで文字を打つのと手書きで文字を書くのでは、キーボードの表現力は低すぎる。手書きならではの文字を囲んだり、数式を書いたりという表現がキーボードでは難しい。そのため、紙と同じレベルの表現力を保ったままコンピューターとしての情報共有と検索を実現できるデバイスの必要性を感じたとのこと。
 さらに、スティーブ・ジョブズのiPhoneの発表のときの言葉「我々は電話を再発明する」になぞらえて「UEIは紙を再発明する」と語った。
 なお、enchantMOONの1号機はシリコンバレーのコンピューター歴史博物館に寄贈されるとのこと。

 なお、enchantMOONは一般販売店での取り扱いはなくネット販売のみとなる。現在、アスキーストアーにて予約受付中だ。



enchantMOON SPEC

CPU:AllWinner A10 1.2GHz
メモリー:1GB(DDR3)
ディスプレー:8インチフルカラー液晶(1024×768ドット)
ストレージ:16GB
入力方式:静電容量タッチパネル + デジタイザーペン(アクティブ方式)
通信方式:WiFi(802.11b/g/n)
カメラ:200万画素CMOSセンサー
本体材質:マグネシウム合金
バッテリー容量:5000mAh/3.7V
サイズ(評価機実測値):180(W)×13(D)×280(H)mm
重量:約699g

■関連サイト
enchantMOON
株式会社ユビキタスエンターテインメント

AppStore アプリをダウンロード

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう