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ニコニコ技術部を育んだ“Make”というイベント【ニコ動今昔物語】

2013年04月04日 20時00分更新

 週刊アスキーの連載ページ『ネット早耳かわら版』に掲載している“ニコニコ動画 今昔物語”クロス連載。週刊アスキー4月16日号(4月2日発売)では、“ニコニコ技術部”カテゴリーを始めとする“つくってみた”の最終回を取り上げます。ゲストは、ニコ動発の同人イベント“ニコつく”を運営する八田大次郎さん、ニコ動運営の伊予柑(伊豫田旭彦)さん。さらにチームラボでMake部を企画している高須正和さんにご出演いただきました。

ニコ動今昔物語つくってみた編

 ニコニコ技術部や手芸部などの“つくってみた”ムーブメントは、niconicoや初音ミクによってクリエイターが集まってきて後押しされた部分が大きいです。ニコつくやコミケ、“デザイン・フェスタ”などのイベント、“NT”と名付けられた技術部主催の展示会などが、創作意欲と出会いを生み、よりカオスな作品が世に出てくることになりました。

 ただ、この動きはニコ動の中だけで起こっているわけではなく、米オライリーメディアの電子工作ホビー誌『MAKE Magazine』からの潮流も外せません。同誌は米国では'06年から、日本では'08年からイベントを実施しています。ここにニコニコ技術部の投稿者も参加して、“技術のムダづかい”を大いにアピールしていました。

 八田さんはMakeを見に行き、「自分のやりたいことと似ている。電子工作系も、手づくりモノもあって、初見の人でも宝探しをする感覚で楽しめるなと。ワークショップもあって、これがニコ動というカオスな空間で展開できたらどんなに楽しいだろう」と夢見たそうです。伊予柑さんも初回のMakeを見に行き、2回目から出展していたとのこと。

 高須さんはMakeが始まった理由について、「メカは実際に見ないとわからないし、見たら絶対にグッとくるから、それまで機械を見たことのない人を呼び込める」と語っていました。つくってみた作品のおもしろさは、雑誌の文章や写真ではなかなか伝わりにくいものです。現物の動きを見て、つくった人とコミュニケーションできる場があることでグッとくるわけです。

 このコミュニケーションというのが重要で、Makeが出てきたことで、自分が見たいからつくるのではなく、誰かに見せてよろこんでもらうために制作するという文脈が始まりました。しかもニコ動はYouTubeに比べて画面のコメントでコミュニケーションできるので、その傾向がより顕著。コメントでもらった「こういうものが見たい」という声が次の創作につながることも多いです。

 高須さんは「ニコつくにあってMakeにないものは、“悪魔の格好をしてベーコンを焼く人”(Dark=kochang)とかですよね」と具体例を上げていました。「ひとりで無人島にいたら、つくらない感じ。みんながいる場所でわかってくれる人間がいると絶対つくりたくなる」と解説します。

 Makeのよさは、見る側だけでなく、同好の士と話せるところにもあります。初めて会う人でも、話が弾む可能性が高いし、勉強にもなる。「会話しているだけで、勝手に技術のレベルが上がっていくのというのはあると思います。やたら研究してレベルを上げる方法もありますが、つくったものを同じような趣味の人にほめてもらったり、スゴい作品を見て、真似してみようと取り入れる」と高須さん。

「日本でこうしたジャンルが好きなのは、例えば100万人いても1%ぐらいじゃないでしょうか。Makeの会場には1万人しかいないんですが、その人たちが死ぬまで友達だとしたら僕はすごくうれしい」と熱く語っていました。

 4月28日、幕張メッセの“ニコニコ超会議2”内で実施する“ニコつく3”には、チームラボのMake部も出展するそうです。「とにかく出すことが目的。つくったものを出し、他のブースを見るのがレクリエーションなんですよ。あの場にいるのが楽しい」と笑顔を見せてました。

 筆者も昨年、超会議を取材しましたが、非常に楽しかったのがニコつくのブースでした。IT系の展示会で言えば、参考出品ばかりがずらりと並んでいるようなスゴいものばかりです。常設展示なので、今まで興味を持つきっかけがなかったという人も、ぜひ訪れるべし。

ニコ動今昔物語技術部編

↑超会議のニコつく2に展示していた“スケルトニクス”。パワードスーツのような見た目だが、四肢の動きを拡張するだけという代物だ。動きが「なんだこれ!」と思うほどカッコいい。

ニコ動今昔物語技術部編
ニコ動今昔物語技術部編

↑痛化したPCやフィギュアなどクラフト系も充実。

ニコ動今昔物語技術部編
ニコ動今昔物語技術部編

↑謎の技術(?)を使った立体ディスプレーなども出展していました。

■関連サイト
週刊アスキーチャンネル(ニコニコチャンネル)
ニコつく3

■週刊アスキー 連載ページ『ネット早耳かわら版』
 リニューアルしてパワーアップしたネット情報満載の連載ページ。SNSを使いこなすテクニックやウェブアプリやサービスの紹介、ソーシャルメディアの話題など、盛りだくさんの4ページでお届けしている。

■著者紹介-広田稔
 ウェブサイト“ASCII.jp”でMacやネットサービスなどのネタを担当。初期からニコニコ動画を取材し、2007年には笛のお兄さんの「Fooさん」を取材(関連サイト)していたりして、有り体にいえば“ニコ厨”(ニコ動好きな人)、好きが高じて『ニコニコ動画めもりある ~ニコニコ大会議編~』という書籍を執筆。

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