2013年03月29日20時30分

ヤフーとNHN Japan 情報爆発時代の検索とキュレーションが拓く未来

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■“ヒト”によって検索精度を上げるというトレンド
 2013年3月28日、ヤフーとNHN Japanは、ヤフー検索とNAVERまとめに関して提携したことを発表した。

 ヤフーが日本最大のポータルサービスであることは改めて紹介するまでもないが、NAVERまとめも現在月間約12億2800万PV、4100万ユニークユーザーを抱える巨大なキュレーションメディアに成長している。その勢いは訪問者数でTwitterを、その増加数ではFacebookを上回るものだという。

 会見でヤフーの宮坂学社長、NHNの森川亮社長がそろって強調したのは、「人の手を介した情報の取捨選択の重要性」だ。ヤフーは創業来改良を続けてきた“YST(Yahoo! Search Technology )”から、2010年にGoogleの検索エンジンへの移行を行なった。現在その検索リーチは64%に達しているが、“課題解決エンジン”をスローガンに掲げるヤフーとしては、ユーザーが“答え”に辿り着ける精度(回答力)をさらに上げたいとする。現状でもNAVERまとめをクロールして検索結果に反映させることは可能だが、NHN Japanからまとめ自体の評価など内部データの提供も受けることで、より精度を高めることを狙い今回の提携に至ったという訳だ。

 NAVERまとめは、ユーザーに金銭でのインセンティブを提供するのが大きな特徴だ。そのインセンティブも単純にアクセス数の多寡を基準にするのではなく、品質を重視していると繰り返し表明されている。昨年12月にはインセンティブプログラムの大幅な変更も行なわれたのも記憶に新しい。

 グラビア写真の単なる転載や、人気まとめの“まとめ”はインセンティブ支払いの対象外になるなど、思い切った対応が取られている。つまり、4月以降ヤフーで検索を行なうと、該当するNAVERまとめが候補として表示されるのはもちろん、高評価のまとめが上位に表示されるようになるはずだ。

NAVERまとめでヤフー検索

 こういった取り組みは、実は今に始まったものではない。Googleは『Google+』によって、検索精度のチューニングを進めているし、Facebookもグラフ検索によってソーシャルメディア内の検索の改良に取り組んでいる。これらに共通するのは“ヒト”の介在だ。

 1994年に誕生したヤフーはまさにこの“ヒトの目と手を介したディレクトリ”の提供に特色があった(ヤフーではそのためのスタッフを“サーファー”と呼ぶ)。しかしネット上の情報が急速に増加する中、一企業がヒトの目で情報を精査し、インデックス化することは早々に不可能になり、2000年代以降のGoogleによるロボット検索にトレンドは移った。

 さらにソーシャルメディアの普及に伴う“情報爆発”はヒトが処理できる量をはるかに超え、ロボット検索もTwitterに象徴されるようなリアルタイム性への要求には答え切れていない。結果として、ロボットとヒトによる“ハイブリット型検索”(NHN Japan島村武志執行役員)に注目が集まっているという現状がある。

NAVERまとめでヤフー検索

 今回の提携によって、ヤフーは検索精度の向上をはかり、専用の検索エンジンの提供を受けるNHN JapanはこれまでNAVERまとめだけでは得られなかったユーザー層やそのニーズを掴むことを狙う。直接マネタイズにつながる提携ではないが、お互いにメリットがある取り組みだといえるだろう。

NAVERまとめでヤフー検索

■際立つNHN Japanのほうの“爆速”ぶり
“爆速”と言えば、昨年6月に経営体制を一新したヤフーの合言葉だが、本記事では敢えてNHN Japanにこの言葉を冠したい。

 パートナー戦略を推し進めるヤフーとしては、今回のNHN Japanとの提携のみならず、これまでもグリーやDeNA(たとえ同業で競合があっても積極的に提携している点も特徴的だ)など様々な企業と提携を進めている。ポータルとしての優位性が保たれ、トラフィックや手数料などの利益が得られるのであれば、自前のサービスにこだわる必要もない、というのが2008年にオープン戦略を始めて以来のヤフーの基本方針だ。

NAVERまとめでヤフー検索

 とはいえ、今回のような検索トレンドの変化や、LINEと競合するカカオトークが目指すスマホでのポータルとしてのポジション獲得など、重要な局面では主導権を握るべくヤフーは自前のサービスの構築に取り組んできた。古くは2006年の『Yahoo!360°』(のちに『Yahoo!Days』に改称し同年に終了)でソーシャル化を図ったこともある。今回の提携で思い起こされるのは、2011年9月に開始し、翌年7月に終了となったキュレーションサービス『Yahoo!くくる』だ。前述の“サーファー”がテーマ設定やコンテンツの収集に協力するという触れ込みだったが、NAVERまとめのような直接的なインセンティブが用意されることはなく、広く支持を集めることはできなかった。

 会見後の質疑応答でも質問があったのが、カカオトークとLINEの関係だ。ヤフーは、それまで進めてきた自前のメッセージングサービスの開発を止めて、“爆速”でカカオトークとの業務提携に至った。しかし韓国ではデファクトの地位にあるカカオトークも、国内では1000万人弱とLINEに追いついてはいない。ここに連想が及ぶのはやむを得ないところだろう。

NAVERまとめでヤフー検索

 宮坂社長と森川社長とも「今回の提携の範囲はあくまでヤフー検索とNAVERまとめに限ったもの」と強調する。しかし昨年“プラットフォーム”化を宣言し、国内4500万人、世界では1億2000万人以上のユーザーを擁するLINEも、海外での競争を勝ち抜くためには、若者に支持されるカジュアルなメッセージ交換やゲームといった機能、コンテンツだけでなく生活全般の情報サービスの基盤となる必要がある。

 一方、ヤフーには前述の通りオープン戦略によって国内有力のパートナー企業が集結している。筆者はこの領域でも両者が組む可能性も視野に入れておく必要があると考えている。

 このようにこの1~2年の両社の取り組みを振り返ると、NHN Japanがネットのソーシャル化に伴うキュレーションメディアの興隆や、スマホシフトに伴うメッセージングアプリの需要拡大といったネットの変化を、あたかもヤフーに先んじるかのように“爆速”で取り込んでいるようにここまでのところは見える。今回の提携をきっかけに、それぞれに異なる強みを持つヤフーとNHN Japanの関係がどのように発展するのか注意して見守っていく必要がある。

(2013年4月1日21時:初出時、御名前に1ヵ所誤りがあり、修正いたしました。)

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