週刊アスキー

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世界周遊と欧州周遊タイプのルーターを5ヵ国で試しまくる旅

2013年03月30日 13時00分更新

文● 中山智  編集●KONOSU

 デジタルトラベラー(もしくは旅バカライター)の中山です。

 今年もバルセロナで開催されたMWCを取材したわけですが、せっかくバルセロナまで行くのだから、すぐ日本に帰るのはもったいない! ということで、MWC終了後もあちこちフラフラすることにしました。

世界周遊2013MWC

 旅のお供に必要不可欠なのが、現地の通信手段として使用する周遊タイプのモバイルルーターです。今回はドイツ、スペイン、アンドラ、フランス、トルコと5ヵ国をまわる旅を計画。移動手段も飛行機のほか、バスや鉄道なども利用して国境を越えるため、テレコムスクエアの周遊タイプを選ぶことにしたんですが、ここで問題が。

 “ビジネス世界周遊”タイプの利用可能国をチェックするとアンドラがありません。アンドラでも利用できる“欧州周遊”タイプはあるんですが、今度はトルコが対応していません。

 価格も、データ通信量の規制が基本的にない1日2400円の‟世界周遊”に対して、データ通信量の規制が厳しめな‟欧州周遊”が1日1200円、と差があります。こうなったら両方のルーターをレンタルして、それぞれの通信速度や使い勝手などを各国でチェックしまくってこようと思います!

世界周遊2013MWC
↑左が“欧州周遊”タイプで、右が“世界周遊”タイプ。端末自体はどちらも同じで挿さっているSIMが違う。

■2月21日~22日:ドイツ(ミュンヘン)

 最初の訪問地はドイツのミュンヘン。バルセロナへは直行便がないので、ここで乗り継ぎ。そのまま乗り継ぐと、バルセロナ到着は深夜近くなってしまうので、ミュンヘンで1泊して、ソーセージとビールを食らおうという考えです。

世界周遊2013MWC
↑白ソーセージのヴァイスヴルスト。これにマスタードをつけるとおいしーい!!

 ミュンヘンは1泊だけ。SIMを購入する時間もなかったので、飛行機を降りてすぐ使えるレンタルモバイルルーターは便利でした。また、乗り継ぎで空港から出ないという場合でも、周遊タイプのルーターなら問題なく使えるのがいいです。

世界周遊2013MWC
↑空港での待ち時間で使用。無線LANサービスなどを探す必要もなく快適です。

 ミュンヘンでの通信速度は下記のとおり。上り、下りともに‟欧州周遊”のほうが好成績。とはいえ、体感速度としてはそんなに差はありませんでした。

ミュンヘン駅近くのホテル
●世界周遊タイプ

 1回目 下り:0.52Mbps 上り:1.46Mbps
 2回目 下り:0.70Mbps 上り:1.47Mbps
 3回目 下り:0.76Mbps 上り:1.39Mbps

●欧州周遊タイプ
 1回目 下り:7.34Mbps 上り:2.27Mbps
 2回目 下り:7.95Mbps 上り:2.27Mbps
 3回目 下り:7.82Mbps 上り:2.29Mbps

(※SPEEDTEST.NETにて計測。測定サーバーは現地から最寄りのポイントを選択。以降の測定も条件は同じ)

ミュンヘン空港
●世界周遊
 1回目 下り:0.61Mbps 上り:0.86Mbps
 2回目 下り:0.68Mbps 上り:0.46Mbps
 3回目 下り:0.42Mbps 上り:0.46Mbps
●欧州周遊
 1回目 下り:2.50Mbps 上り:0.8Mbps
 2回目 下り:3.15Mbps 上り:1.59Mbps
 3回目 下り:2.63Mbps 上り:0.79Mbps

■2月22日~3月2日:スペイン(バルセロナ)

 ミュンヘンのあとは、MWCの開催地バルセロナへ。今回も週アス取材チームはアパートメントタイプの部屋を借りて共同生活していました。アパートには無線LANサービスもあり、基本的にはこれを利用していたのですが、ごくたまに原因不明のエラーで接続できないことも。

 そこでモバイルルーターを試してみたのですが、‟欧州周遊”タイプのほうはすぐに通信量警告のメールが届きました! さすがにパソコン数台、スマホ&タブレット数台で写真や資料などのやりとりをすると、すぐに規定された通信量に到達してしまうようです。

世界周遊2013MWC
↑MWC期間中の作業風景。SOHOの事務所みたいな雰囲気ですが、実はアパートのキッチンなんです。
世界周遊2013MWC
↑通信量が多すぎるから改めないと通信制限しちゃうぞ、と、登録しておいたメールアドレスに警告メールが。

 そのあとも、懲りずにルーターをつかってニコニコ生放送などをしてみたところ、再度、‟欧州周遊”タイプから警告メールが届きます。その点、‟世界周遊”タイプからはなにもなし。このことからも、通信量が多いユーザーは‟世界周遊”タイプがオススメですね。

 バルセロナでの通信速度は下記のとおり。スピードはこちらも‟欧州周遊”タイプが好成績。そのため、ついつい‟欧州周遊”タイプばかり使ってしまって、通信量が増えてしまいました。

バルセロナホテル(パラレル駅近く)
●世界周遊
 1回目 下り:0.49Mbps 上り:0.06Mbps
 2回目 下り:0.81Mbps 上り:0.04Mbps
 3回目 下り:0.71Mbps 上り:0.05Mbps
●欧州周遊
 1回目 下り:8.36Mbps 上り:4.31Mbps
 2回目 下り:8.08Mbps 上り:3.11Mbps
 3回目 下り:8.31Mbps 上り:2.66Mbps

MWC会場
●世界周遊
 1回目 下り:3.88Mbps 上り:1.17Mbps
 2回目 下り:8.00Mbps 上り:1.07Mbps
 3回目 下り:4.61Mbps 上り:0.73Mbps
●欧州周遊
 1回目 下り:8.18Mbps 上り:0.28Mbps
 2回目 下り:7.29Mbps 上り:0.18Mbps
 3回目 下り:4.05Mbps 上り:0.2Mbps

世界周遊2013MWC
↑バルセロナは海産物、特に甲殻類や貝類が豊富です。というわけで市場で海の幸プレートをオーダー。

■3月2日~4日:アンドラ(アンドララヴェリャ)

 MWC取材のお仕事を終え、これからは自分の旅の時間! というわけで、以前から興味のあったアンドラ公国に旅立ちます。スペインとフランスに挟まれた、ピレネー山中にあり、大きさは日本の金沢市程度。人口は7万人弱のミニ国家です。

世界周遊2013MWC
↑アンドラ公国は空港も鉄道の駅もないので、バルセロナからバスで移動することになります。
世界周遊2013MWC
↑Google Latitudeでの軌跡。バスでひたすら北上して、バルセロナから約3時間の距離。

 アンドラ滞在は2泊。旅行前は現地SIMを買って使うか、日本のキャリアでローミングするかのどちらかを考えていたのですが、現地SIMの情報はネット上で調べてもほとんどなく、日本のキャリアはどのキャリアも定額でのローミングサービスを行なっていないという現実がありました。実はそんな理由もあって‟欧州周遊”タイプのルーターを借りてきたんですが、実際アンドラについてみたら、これが大正解。現地のキャリアショップでは、SIMは通話用しか販売しておらず、データ通信不可でした。

世界周遊2013MWC
↑アンドラのプリペイドSIMは通話のみ。記念に買ってみましたが60ユーロ(約7400円)と高い!!

 アンドラでの通信速度は下記のとおり。‟世界周遊”タイプは圏外で使用できません。これまで好調だった‟欧州周遊”タイプも、ここでは下りが遅くなり不調。とはいえ、ホテルの回線も上下1Mbps出ない環境だったので、‟欧州周遊”ルーターに頼りっぱなしになってしまいました。

アンドラのホテル内(市街中心部)
●欧州周遊
 1回目 下り:8.36Mbps 上り:4.31Mbps
 2回目 下り:8.08Mbps 上り:3.11Mbps
 3回目 下り:8.31Mbps 上り:2.66Mbps

 さて、あまり日本人には馴染みのないアンドラ。夏は避暑地、冬はスキーやスノボといったレジャー地域としてスペインやフランス南部の住人から親しまれています。また両国よりも消費税などが安いため、ブランド品や電化製品など高価なものがおトクに買えるショッピング天国にもなっています。ただし、名産、特産品とっいったものはこれといってなく、おいしい名物料理もないのが残念なところです。

世界周遊2013MWC
↑街中では家電ショップも多く見かけました。消費税が安いので、近くの国より買い物は安くすむようです。

■3月4日~7日:フランス(トゥールーズ、アビニョン、ニース)

 アンドラからはふたたびバスに乗り、ピレネー山脈を今度はフランス側へと下っていき、フランス南西部の街トゥールーズまで移動。さらにそこからTGVに乗り換え、フランス南部のアヴィニョンまで移動します。

 周遊ルーターのいいところは、国境を越えてもそのまま使い続けられるところ。地上移動なら、電波さえ届けば通信できるのも◎です。というわけで、TGVではPCを開いて仕事をすることにしました。

世界周遊2013MWC
↑こちらもGoogle Latitudeでの軌跡。バスと鉄道を使っての大移動となりました。
世界周遊2013MWC
↑TGVは電源が用意されている1等車に乗りました。

 トゥールーズ駅を出発したあとに計測した速度は下記のとおり。

TGV車内(トゥールーズ駅出発後)
●世界周遊
 1回目 下り:0.39Mbps 上り:1.22Mbps
 2回目 下り:0.29Mbps 上り:0.58Mbps
 3回目 下り:0.36Mbps 上り:0.72Mbps
●欧州周遊
 1回目 下り:1.35Mbps 上り:1.58Mbps
 2回目 下り:3.94Mbps 上り:0.68Mbps
 3回目 下り:0.89Mbps 上り:0.46Mbps

……ところが、しばらく走っていると通信速度が異様に重たくなるというか、つながらないこともしばしば。ルーターをチェックしてみると“2G”になっていたり、“圏外”になっていました。

 フランスって都会的なイメージがありますが、地方に行くと草原や農地が広がる結構田舎な国なんですよね。で、街は電波がよく吹いてますが、それ以外のところはあまり電波状況は良くないようです。海外に来てみると、改めて日本はケータイがどこでも良くつながる国だなぁというのが実感できます。

世界周遊2013MWC
↑TGVからの車窓。こういった人気のない風景を通り過ぎる際は、たいていの場合、通信できませんでした。

 フランスでは、まずアヴィニョンで1泊。夏には街のいたるところで大小様々な演劇や舞踏が公演される『アヴィニョン演劇祭』が開催される演劇の街です。とはいえ、冬はシーズンオフで静かな街でした。

世界周遊2013MWC
↑城壁に囲まれたアヴィニョン市街地。
世界周遊2013MWC
↑宮殿の隣には教会があり、頭の中にはドラゴンクエストのテーマ曲が流れます。
世界周遊2013MWC
↑(この石像は、話しかけると動き出して襲いかかってくるタイプのヤツや!)

 その後、TGVに乗り込んで南仏のリゾート地ニースへ向かいます。この時期はカーニバルが開催されていて、山車を使ったパレードが観られるとのこと。さらに最終日はその山車を海で燃やし、花火で祝うイベントが用意されています。当然このイベントを観るために来たのですが……残念なことに、パレードは雨で中止となりました。

 花火は翌日に延期されたようですが、フライトスケジュールもあるので観られず仕舞い……天候に左右されそうなイベントは、日程に余裕をもって観に来ないとダメですね。

世界周遊2013MWC
↑雨降るニース。街の電飾も、こうなると逆にもの悲しく見えます。気温も低くて寒いし……。

 ニースホテルでの通信速度は下記のとおり。ここでも‟世界周遊”タイプのルーターが遅めでした。欧州が苦手なキャリアのSIMを採用しているのでしょうか?

ニース市街地のホテル内
●世界周遊
1回目 下り:0.91Mbps 上り:0.7Mbps
2回目 下り:0.61Mbps 上り:0.78Mbps
3回目 下り:0.53Mbps 上り:0.63Mbps
●欧州周遊
1回目 下り:7.82Mbps 上り:2.26Mbps
2回目 下り:7.84Mbps 上り:2.25Mbps
3回目 下り:7.84Mbps 上り:2.27Mbps

 仕方がないので、鉄道で30分のモナコ公国へ遊びに行くことにしました。モナコのカジノでは100ユーロ勝って、雨の負けを取り返した感じ! 速度計測はしていませんが、ここでもどちらのルーターとも問題なく使用できました。

世界周遊2013MWC
↑モナコも雨でシーズンオフ感が半端なかったです。熱海っぽく見えてしまいました。

■3月7日~11日:トルコ(イスタンブール、カッパドキア)

 雨のニースから飛行機で次はトルコに。まずはイスタンブールに滞在します。イスタンブールといえば、東洋と西洋が交差する街。トルコは初めてですが、今まで訪問した国とは違った、異文化をビシビシを感じさせてくれます。

世界周遊2013MWC
↑イスタンブールのB級グルメといえばサバサンド。
世界周遊2013MWC
↑焼きサバのサンドイッチです。レモン汁をたっぷりかけて食べるんですが、これがバカうま!
世界周遊2013MWC
↑飛んでイスタンブールの世界遺産スルタンアフメト・モスク。
世界周遊2013MWC
↑世界でいちばん美しいモスクとも言われており、内部の装飾も非常に繊細で幻想的。
世界周遊2013MWC
↑アジアとヨーロッパをつなぐイスタンブールのボスポラス海峡をクルーズ。海の上でも電波をキャッチ。

 イスタンブールでの通信速度は下記のとおり。当然ながら欧州周遊ルーターは圏外。世界周遊は1Mbpsを越えることもあり、まずまずの速度。

イスタンブール(新市街)のホテル内
●世界周遊
 1回目 下り:1.98Mbps 上り:1.33Mbps
 2回目 下り:1.35Mbps 上り:1.38Mbps
 3回目 下り:0.76Mbps 上り:0.82Mbps

イスタンブール空港
●世界周遊
 1回目 下り:0.83Mbps 上り:0.77Mbps
 2回目 下り:1.14Mbps 上り:0.62Mbps
 3回目 下り:0.71Mbps 上り:0.56Mbps

 トルコの世界遺産といえば、もうひとつ有名なのがカッパドキア。こちらもトルコ国内線を使って行ってきました。見渡す限りニョキニョキとはえた奇岩だらけの光景は圧巻。洞窟を使ったホテルなどものあり、観光地としてはかなりおもしろいところです。

世界周遊2013MWC
↑“妖精の煙突”とも呼ばれる奇岩があちこりにあり、ほかの惑星と言われても信じてしまうような風景。
世界周遊2013MWC
↑カッパドキアで人気の気球ツアー。160ユーロ(約2万円)とお高いですが、飛んでみる価値は確かにあります。
世界周遊2013MWC
↑気球からニコニコ生放送もしてみました! 
世界周遊2013MWC
↑飛行中も3Gで接続。動きはカクカクしていたものの、きちんと中継できていたようです。
世界周遊2013MWC
↑宿泊した洞窟ホテル。岩山を掘って部屋にしているため、とてもカッコイイのですが、部屋の奥は電波が届きません(笑)。

 カッパドキアでの通信速度は下記のとおり。現地ツアーで近郊もまわりましたが、ほとんどの地点で3Gでの接続だったので、電波状況はかなり良いです。

カッパドキア(ギョレメ)のホテル内
●世界周遊
 1回目 下り:1.03Mbps 上り:1.3Mbps
 2回目 下り:1.15Mbps 上り:1.22Mbps
 3回目 下り:1.33Mbps 上り:0.49Mbps

(※ホテルが洞窟のため室内ではなく、テラスで計測。)

 以上で、今回の旅程は終了。日本発着も含めると全部で20日間。ルーターのレンタル料はこうなりました。

 ‟世界周遊”プラン:2400円×20日=4万8000円
 ‟欧州周遊”プラン:1200円×20日=2万4000円

 日程が3週間近くだったので、かなり高額な印象を受けますが、全日程を国内キャリアのローミングで使うとなると、現地滞在が19日(日本発着のフライト時間を除くため)になって……

●ローミング:2980円×19日=5万6620円

 世界周遊で1万円弱、欧州周遊では約3万円の節約となります。バルセロナでは週アス取材チームで共用したりしているので、その期間をみなで分け合って支払うと考えると、かなりオトクな計算。もちろん現地SIMを購入したほうが通信費は格安ですが、今回のアンドラのように旅行計画に現地SIMが使えない国がある場合には、周遊ルーターがあると気がラクです。

 さて。気がかりだった欧州周遊タイプの通信量制限なんですが、通知メールは来たものの速度が実際に制限されることはありませんでした。また、スマホやタブレットだけ使っていたり、動画のストリーミングなどを行なわなければ、通知メールも送られてくることはないようです。

 一般的な観光旅行でヨーロッパに行く場合は、欧州周遊タイプで十分。ビジネスや動画配信などちょっと大きめのデータを扱いたい場合だけ、世界周遊タイプと旅の目的に合わせてチョイスするといいのかな、と思いました。

 さて、次はどこに行きましょうかね。

■関連サイト
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