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戦後最大のメディアの椅子取りゲームとケータイ難民の引き受け先

 週刊アスキー本誌では、角川アスキー総合研究所・遠藤諭による『神は雲の中にあられる』が好評連載中です。この連載の中で、とくに週アスPLUSの読者の皆様にご覧いただきたい記事を不定期に転載いたします。

戦後最大のメディアの椅子取りゲームとケータイ難民の引き受け先

 1億2000万の契約数に対して、'12年は約3000万台のスマートフォンが売れた。ニュースで流れている数値だがそのインパクトは想像以上に大きい。

戦後最大のメディアの椅子取りゲームとケータイ難民の引き受け先

'10年末と'11年末の比較では、テレビ、PCからのネット利用、携帯電話の利用も、それぞれ始まって以来の大幅減となった(各17.9分減、22.1分減、9.1%減)。それに対して、'11年末と'13年初の比較となる今回は、テレビとPCネット、ゲームは下げ止まり(食いつくし)、もっぱらスマートフォンへは携帯電話から流入している(タブレットに関してはベースの数値が小さいので注意が必要=米国並みに売れるには少し時間がかかりそう)。日本人は、メディアのアクティブ消費層とそれ以外に大きく2つに分かれるが、すでに前者のスマートフォンへの移行は完了しているか。角川アスキー総合研究所『MCX 2013』(調査実施'13年1月下旬から2月上旬、N=10,027)による。

 グーグルが日本法人を作って、アマゾンが日本向けサービスを開始して、ヤフーBBがADSLモデムを駅前で配りまくりはじめたのが'00~'01年。'04年にグリーとミクシィが相次いでスタートして、'05年にYouTube、'06年にニコニコ動画が始まった。そして、'08年にiPhone(日本向け)が発売されて、'10年にはiPadが登場、その間にツイッターとソーシャルゲームがきて、フェイスブックがきて、'12年にLINEがきた。

 要するに、日本では、ここ10年ほどの間にネットが浸透して、我々は、たかだか5年ほどの間に生まれたライフスタイルのなかで暮らしている。

 ネットやスマートフォンに関しては、だからまだわからないことも多いし変化も続いている。たとえば、ミクシィやツイッターによって、瞬間的に盛り上がる“フラッシュマーケティング”が注目された。ところが、株式会社ニワンゴの杉本誠司社長によると、ソーシャルでは時間もかかるが息も長いという。フラッシュというのは、先っぽを見ていただけで、本質は、それよりあとのボリューム感にあるというわけだ(初音ミク『千本桜』を見てほしい)。

 角川アスキー総合研究所で、今年4回目となるネット時代のライフスタイルに関する1万人規模の調査を実施した。これのコンセプトは明快。5年前までの調査では、性別・年齢・職業・居住地・年収などのデモグラ(人口統計学的属性)が大きな意味を持っていたが、いまはネットをどう使っているかや好きなコンテンツのほうが見えるものがある。ネット上の居住地、モノよりコンテンツの世代の指標だが、サイフの紐をほどくのもネット上になってきている。

 昨年、この調査をもとに“戦後最大のメディアの椅子取りゲームがはじまっている”というインフォグラフィックス(のようなもの)を作ったら、これが業界仲間のセミナーから米金融系シンクタンクまで参照してくれた(コンサル案件にもつながりました)。'10年末と'11年末のメディアの利用時間などを図示したものなのだが、今回の調査結果でもそのアップデート版を作ってみた。

 なんといっても、スマートフォンの利用率が300%、タブレットは500%というバカみたいなインフレな伸び率。要するに、ケータイからスマートフォンへの“民族大移動”が佳境にさしかかっている。誰もが予想できたことなのに、大量発生した“ガラケー難民”をLINEくらいしかシッカリすくえていない。昨年9月のLINEの利用率9.8%に対して、今回は21・8%。LINEのために10代のスマートフォン所有率もグングン伸びている。

【筆者近況】
遠藤諭(えんどう さとし)
角川アスキー総合研究所ゼネラルマネジャー。元『月刊アスキー』編集長。元“東京おとなクラブ”主宰。コミケから出版社取締役まで経験。現在は、1万人調査“メディア&コンテンツサーベイ”のほか、デジタルやメディアに関するトレンド解説や執筆・講演などで活動。東京カレーニュース主宰。TOKYO MX TV 毎週月曜日18:00からのTOKYO MX NEWS内“よくわかるIT”でコメンテーターを務め、『週刊アスキー』で“神は雲の中にあられる”を巻末で連載中。
■関連サイト
・Twitter:@hortense667
・Facebook:遠藤諭

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