週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

想いをつなぐ編集力

いいアイデアは200本ノックから生まれる――「悩まない思考法」

2013年01月28日 16時30分更新

 前回は、タイトルの付け方について考えてみました。ああいうテクニックは大事なのですが、実際に考えるときは、「どうやって考えるのか?」ということも重要です。今週はそのあたりを見ていきましょう。

 実際に、後輩などからタイトルについて相談されたとき、ぼくは「明日までに200個考えてみて」と言うようにしています。また、自分自身が考えるときも一人で同じことをしています。

 まるで「◯本ノック」のようで、一見すると意味のない「しごき」のようですが、このやり方はアイデアを出す方法論として有効だと思うのです。以下に、その理由や考え方をくわしく説明します。


■【第1段階】 200個のアイデアを書き出す

 明日までに200個考えなくてはいけない。こういうときには、思いついたことを全部、とにかく書き出すしかありません。書く場所は、紙でもPCのエディタでもスマホのメモ帳でも、なんでもかまいません。200個というとたいへんそうですが、慣れると数時間でできるようになります。

 でも、みんなこれが、意外にできないのです。よくあるのが、一晩うんうん悩んで、さえない案が10個くらいならぶという例。こんなひとがとても多いです。

 こうなる理由は、その人のアイデアが貧弱だからではありません。「いいアイデアだけ出そう」と思っているからです。

 「いいアイデア」は、そんなに簡単に出てくるものではありません。これは、だれでも同じです。以前、友人の有名コピーライターにいいコピーを書く秘訣を聞いたら「いっぱい考えます」という答えが帰ってきました。

 ここを誤解していると、アイデアを考えるという行為自体がつらくなります。だまって考えていて、浮かんでくるつまらないアイデアをボツにし続けると、だんだん自分がイヤになってきます。そんな精神状態だとさらにアイデアが浮かばなくなり、悪循環になります。

 正しいやりかたは、どんなにささいな案でも、イマイチな案でも、すべて書き出すことです。タイトルだったら、助詞とか語尾が変化しただけでも、書くといいと思います。視点を変えたり、具体性を持たせたり、極端なことを考えたり、やりかたはいくらでもあります。プライドは捨てましょう。出てくるものが今のあなたが考えたものです。

 200個の「たいしたことのないアイデア」を書き出すことができたら、第1段階は成功です。


■【第2段階】 さらに考えて、だめなら「棚上げ」する

 さて、ここからが本番です。

 200個のアイデアの中にすごく冴えている案があれば、それを使えばいいと思います。しかし、残念ながら、そんなにすばらしいことはあまり起こりません。

 じつは、第1段階でやったことは、よくある案やありがちな案を出しきる、ということなのです。頭のなかの凡庸なアイデアをぜんぶ外に出してすっきりして、それからはじめて、新しくておもしろい案を考えることができます。

 というわけで、また考えましょう。とはいえ、やりかたは変わりません。またひたすら書きだすのです。アイデアを出しきったあとなので、なかなか出てきづらくなります。とはいえ、ちょっとは毛色の違うものが出てきはじめるのもこのころです。

 1時間考えて思い浮かばなければ、他のことをするといいでしょう。いわば「棚上げ」です。でも、頭の片隅にはそっと、おいておきましょう。


■【第3段階】 生活の中で考え続ける

 頭の片隅においた問題でも、生活の中で考え続けることはできます。思考の濃度はさまざまです。ほとんど忘れているときもあれば、歩いている時やシャワーを浴びている時などに濃い目に考えたりもできます。ぼくの経験上、いいアイデアはこういうときに浮かぶことが多いです。

 ニュートンのリンゴが落ちるのを見て万有引力を思いついたエピソードや、アルキメデスのお風呂があふれるのを見たエピソードはこれと似た状態ですが、偶然ではないと思います。彼らは引力や重力について、さんざん考えていたわけです。それまでの思考を頭の片隅において生活していたら、ようやく正解にたどり着いたのです。


■「悩まない」思考法

 まとめましょう。

 第1段階では、つまらないアイデアもふくめて、短時間ですべて書き出します。第2段階では、空っぽになったあとにさらに考えて、だめなら棚上げします。第3段階では、生活の中で考え続けます。こういう方法論で、アイデアというものに向かっていきます。

アイデア出しの方法論

 このやり方で考えるメリットは「悩む」という状態に陥らないことです。悩んでいる状態というのは、思考がぐるぐる巡っているだけで、前に進んでいません。これを「書きだす」「棚上げする」「生活する」というふうに「行為」に落とし込むことで、解消するのです。考えるのが上手い人は、悩まないのです。

 というわけで、今週はこのへんで。

【筆者近況】
加藤 貞顕(かとう・さだあき)
株式会社ピースオブケイクCEO。最近、『がんばれ元気』を読み返しているんだけど、おもしろさが異常です。

■関連サイト
cakes(ケイクス) クリエイターと読者をつなぐサイト
cakes公式ツイッター:@cakes_PR
株式会社ピースオブケイク公式Facebookページ

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう