2012年12月23日17時00分

エリクソンのコンシューマーリサーチトップが語る日本市場

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「ガラパゴス? いやいや、日本はとても成功しています」(注:コンシューマー専門家からみて)。Ericssonのコンシューマーリサーチトップが語った日本市場の成功とは。

「携帯電話をショッピングで利用するユーザーが増えており、10人に4人が支払いなどで利用している」と聞いて、驚いた方がどのぐらいいるだろう? これが日本でニュースになるとすれば、“携帯電話”の部分が“スマートフォン”に代わった場合だろうか。この調査はEricssonが11月にブラジルで開催した年次イベント『Ericsson Business Innovation Forum 2012』で発表したものだ。

Ericsson
写真:Ericsson提供

 EricssonのConsumerLabでこの調査を行なったMichael Björn氏(ConsumerLabのリサーチトップ)に話を聞く機会があったのだが、リサーチャーの目からみると「日本は成功した市場」という。ガラパゴスと嘆いてガラケーを手放す前に、ぜひBjörn氏の意見に目を通していただきたい。

 Ericssonは無線基地局やアンテナなどの通信インフラベンダーで、この分野では世界最大手(ソニーとともに、Sony Ericssonの親会社でした)。エンドユーザー側のトレンドを知ることは、ネットワーク側にとっても重要なこと。そんなことから、1995年にConsumerLabを立ち上げ、コンシューマー調査を行なっている。

 イベント中、Bjorn氏は最新のConsumerLabの調査として、ショッピングとスマートフォンに関するデータを披露した。ハイライトは以下のようなものだ。

・米国のスマートフォンユーザーの10人に4人が決済、バーコードスキャン、クーポンダウンロードなどショッピング体験の一部としてスマートフォンを利用している。各項目の内訳は、決済(46%)、バーコードスキャン(63%)、クーポン(52%)。

・消費者は製品カテゴリーにより、オンラインか店舗で購入するかを使い分けている。

・全製品カテゴリーにおいて、スマートフォンユーザーはスマートフォンを持たない消費者よりもオンラインで購入する比率が高い。

・ユーザーは頻繁にアプリを経由してネットにアクセスしており、アプリはショッピングの入り口になることができる。

 日本にはスマートフォン登場前からおサイフケータイがあり、モバイルSuicaでJRや地下鉄のゲートを通過できます。早くからカメラ付きの携帯電話を書店で使ったため、書店では利用禁止になりました。Googleがあれだけがんばっても、アメリカではNFC(Google Wallet)は(まだ)それほど普及していません。ということを強調するまでもなく、リサーチャーのBjorn氏はそんなわれわれの事情をよくご存知でした。以下が、Bjorn氏とのやりとりです。

Ericsson
写真:Ericsson提供

――ConsumerLabについて教えてください。Ericssonでどのような位置づけとなりますか?

 重要だと思うものをテーマに調査をします。シンクタンクなどの消費者リサーチ企業と共同で行なうこともあります。今回のショッピングについては、デンマークの非営利シンクタンクであるCopenhagen Institute for Futures Studiesと共同で行ないました。同機関の提案でショッピングを取り上げることにしました。日本では博報堂と共同でプロジェクトを展開したこともあります。

 共同リサーチ以外に、自分たちの判断で重要だと思うことを調べることもあります。Ericsson社内の人にテーマを持ちかけて意見を聞くこともあれば、Ericssonの各事業部が構成する運営委員会がわれわれに調査を依頼することもあります。

 調査内容は、Ericssonの顧客(オペレータ)とも共有しています。

――博報堂とも調査を行なったんですね。

 日本はリサーチにとって、とても重要な市場です。われわれは世界のいくつかの市場を“重要な市場”としており、日本はそのひとつです。重要かどうかの判断基準としては、おもしろいことが起こっているか、他の市場のコンシューマーに影響を与えるか、などです。ここから判断して、日本は重要な市場といえます。

 10年ほど前の『iモード』ブームの際には、われわれは日本でたくさんのリサーチを行ないました。いまスマートフォンで起こっていることをみると、iモードで起こったことと同じにみえます。技術ではなく、コンシューマーが携帯電話をどのように使うか、どのようにサービスを利用するか、という視点からみてです。

――ですが、日本の携帯電話業界はやや否定的な意味を込めて、自分たちを「ガラパゴス」と呼んでいます。携帯電話業界では米国のWebベンチャーがイノベーションの中心になり、日本企業は自分たちのビジネスアイディアやモデル、製品を日本国外に広げることができませんでした。NTTドコモのiモード国外展開は失敗しました。外部から、このような状況をどうみていますか?

 ガラパゴスと呼んでいることは知っています(苦笑)。消費者リサーチを専門とするコンシューマーリサーチャーとしての見解をいうなら、日本は失敗しているのではありません。日本のユーザーがずっと前に携帯電話でやっていたことが、いま世界の他の市場で起こっています。使い方とか行動という点では、日本は大きな影響力を持つ市場なのです。

Ericsson
写真:Ericsson提供

――Appleのビジネスモデルは、NTTドコモを研究しているといわれています。日本市場の行動で、他の市場に影響を与えているもの、与えそうなものが他にありますか?

 携帯電話をどのように利用するか、この10年で大きく変わりました。10年前、携帯電話からインターネットにアクセスするということはほぼありませんでした。インターネットへのアクセスは、まずコンピュータの前に座ることから始まっていました。人々はインターネットを使うという目的を持って、PCの前に座ったのです。

 ですが、同じ頃、日本はすでに携帯電話ユーザーの半分が携帯電話からインターネットを利用していました。他の市場では、やっといま現実になりつつあることなのです。

 これだけではありません。日本のユーザーは早くからさまざまなシチュエーションで、一日に何度も携帯電話を利用していました。このような行動は技術からみても簡単ではなく、消費者が容易に利用できるようにするにはたくさんのものが組み合わさる必要がありますが、日本では数年前から当たり前でした。世界ではこれからです。

 数年前、スマートフォンが登場する前のことです。日本で鉄道を利用しているとき、電車が遅れると人々はみんな自分の携帯電話を見始めました。駅構内のアナウンスが流れる前に、何が起こったのか携帯電話で情報を得ていたようです。たしか「ジンシンジコ」だったと記憶しています。これも、世界的にみると、いま起こり始めた行動です。

 2011年の東日本大震災後、わたしたちは社会文化的な影響を調べました。そこで、震災を境にSNSの利用が急増したことがわかりました。理由はたくさんありますが、最も大きいものが安否の確認や非常時のやりとりに(SNSが)有用だということがあります。

 調査中、震災でビルにひとり取り残されたという人に聞き取り調査をしました。その人はビルにあるテレビのニュースで、自分ひとりがビルに取り残されていることを知ったそうです。ですが、ニュースでは取り残された自分にどうすればよいかを教えてくれない。つまり、取り残されたことがわかっても、その情報をどうやって活用すればよいのかわからないのです。このままとどまるのか、逃げるのか、どうすべきかわからない。ですが、SNSではアドバイスが得られたそうです。

 多くの人にとって、SNSによりニュースが改めて問われているようにみえます。SNSは単に友達を持つだけでなく、正しいニュースや正しい情報をテレビよりも早く得られます。デマや誤報もありますが、正しい情報もあります。これは東日本大震災が与えた大きな影響だと思います。

 10月末にニューヨークを襲ったハリケーン(Sandy)でも、同じような影響があったのではないかと思います。正式な調査はしていませんが、その前にニューヨークで地震があったとき、人々はソーシャルメディアに向かいました。ハリケーンでもTwitterやFacebookがライフラインだったという記事を目にしました。

――今回、ショッピングの調査を発表しました。NFC決済は世界では普及がなかなか進まないようです。これも、日本と同じで最終的に広まるのでしょうか?

 数年前、ショッピングでのコンシューマーの二ーズを理解するために、日本でおサイフケータイについて調査を行ないました。結果として、おサイフケータイは複雑だということがわかりました。新しいサービスはまず若い人々に受け入れられることが多いが、日本ではクレジットカードが必要などの条件が原因でしょうか、若い人々ではない人が使っていました。会社員が主なユーザーで、ボーナスポイントにメリットを見いだしていたようです。モバイルSuicaはとても使い勝手があると感じましたが、おサイフケータイについては分厚いお財布がすべて携帯電話に入ればよいが、その問題は解決していないようにみえました。

 私の見解では、日本のライフスタイルは、いまでもとても先進的なものだと思います。世界の文化に影響を与えています。漫画、ゲームなどにより、若い人々は日本をエキゾチックな国とは思っていません。世界の子ども、若者は日本のポップカルチャーに慣れ親しんでいます。このように、コンシューマーリサーチャーの私からみると、日本はとても成功しているなのです。

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写真:Ericsson提供

 インタビューが終わった後、Bjorn氏は急に日本語で、実は日本に住んでいたことがあり、筑波大学で博士号を取得したことを教えてくれました。早く言ってくださいよ~。

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