2012年11月13日18時30分

112名の電脳高校生が激闘! パソコン甲子園2012完全レポート

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 11月10、11日、福島県会津若松市にて、高校生がパソコンを使った情報処理能力や表現力を競う『第10回全国高等学校パソコンコンクール(以下、パソコン甲子園2012)』の、全国大会が開催された。

“プログラミング”、“デジタルコンテンツ”、“モバイル”、“いちまいの絵CG”の4部門に対して、全国の高等学校や高等専門学校から、579チーム1770名が応募。予選を勝ち抜いた52チーム112名が会場に足を運び、火花を散らした。

 パソコンコンクールがスタートしてから10周年という記念すべき年に、見事、激戦を制したのはどのチームなのか? 今年の若き才能を目の当たりにして、審査員はどう感じたのか。2日に渡る会場の熱気をレポートしていこう!

パソコン甲子園2012 パソコン甲子園2012
↑会場は会津大学。高校野球の甲子園とはちょっと異なり、紅葉シーズンが過ぎ、コートなしでは肌寒いほど。 ↑競技の4部門のうち、今年からモバイル部門が新設。そのせいもあって大会の応募数は過去最高となった。
パソコン甲子園2012
↑開会式での選手宣誓。遠路はるばる飛行機と電車を乗り継ぎ、沖縄からやってきた高校生もいる。
パソコン甲子園2012
↑プログラミング部門を早稲田大学理工学術院の筧捷彦教授と、グレープシティアドバイザリースタッフの矢沢久雄氏の2名で審査。デジタルコンテンツ部門はタカギズムの高木俊光代表、ITジャーナリストの林信行氏、弊社角川アスキー総合研究所の遠藤諭の3名。新設のモバイル部門は審査員全員で行なわれた。

開成高校強し! プログラミング部門でトップ2をゲット

 プログラミング部門は参加者が最も多く、大会の中心ともいえる競技。10門の課題が出され、4時間の制限時間内に1チーム2名で、できるだけ多くのプログラムをつくるという内容だ。

 10問中、難問が3問(各13点)、やや難しいとされる問題が4問(各10点)、比較的やさしい問題が3問(各7点)となり、総合点が多いチームから順位が付けられる。プログラミング能力だけでなく、どれから先に解くのか、チーム内でどう役割分担するのかといった戦略も勝敗を左右する。

パソコン甲子園2012
↑↑32チーム64人が参加したプログラミング部門の様子。高校野球のように激しい動きはないものの、静まり返った講堂で4時間、ひたすらプログラムをつくり続ける知的バトルだ。
パソコン甲子園2012
↑問題に正解すると、難易度ごとに色の違う風船がチームの脇に運ばれてくる。さらに暫定1位のチームのところには、特大風船が。風船は終了30分前までアップデートされるので、他チームの状況を見て戦略を立て直すことも可能だ。

 見事グランプリを受賞したのは、開成高校の“stack~”チーム。準グランプリも同じく開成高校の“queue 進左派連合”チームと、強豪校ぶりを見せつける。3位は栄光学園の“UNAGEEL”チーム。審査委員特別賞は、筑波大学付属駒場高校の“訴訟 .begin()”チームに贈られた。

パソコン甲子園2012 パソコン甲子園2012
↑グランプリを獲得した“stack~”チームの北村寛さん(3年、写真左)と村井翔悟さん(3年、写真右)。 ↑北村さんが簡単な問題から、村井さんが逆に難しい問題から取りかかるという戦略で挑んだとのこと。村井さんは「今年の問題は解いていて楽しかったです」と堂々のコメント。

 実はこの村井さん、2011年のプログラミング部門において準グランプリ、2010年はグランプリを獲得している常連。国際情報オリンピックでも3年連続で金メダルを獲得しており、プログラミング界における“超高校級”選手だ。

 ちなみに純グランプリを穫った“queue 進左派連合”チームの笠浦一海さん(3年)と秀郁未さん(3年)、“UNAGEEL”チームの 劉鴻志さん(2年)は、今年の国際情報オリンピックで銀メダルを穫ったメンバーと、強豪揃い。

 そんな国際大会でも活躍するメンバーが相手となると、問題をつくる側も大変だったようで、審査員の筧教授は、「この10年で確実にみんなの実力が上がってきている。上位のチームが10問全部解き終わって時間を持て余さないように、難易度の調整が大変だった。今回は参考書を持ち込めたが、強豪校は大学生向けの『プログラミングコンテストチャレンジブック』を持参するレベルです」と解説してくれた。

 矢沢氏は「プログラミング部門は上位がハイレベルになってきている。勝つことが目的なら、企画力やプレゼン力も問われるモバイル部門に転向する戦略もアリかもしれませんね」とアドバイスしていた。

デジタルコンテンツを制したのは沖縄高専

 デジタルコンテンツ部門は、ウェブブラウザーで閲覧できるコンテンツをつくり、会場でプレゼンテーションする競技。高得点を狙うには、企画力、表現力、アイデアのおもしろさといった、さまざまな要素をバランスよく磨き上げる必要がある。

 今年のテーマは“スポーツ”。登場人物の心の動きを描いたり、自分たちで新しいスポーツを作ってみたりと、同じ題材でありながら、チームによってストーリーの組み立て方が大きく違っていて、とてもおもしろい。表現方法も、3DCGのほか手描きイラストをベースにした2Dアニメ、クレイアニメなどさまざまだ。

パソコン甲子園2012
↑デジタルコンテンツ部門の本選には、12チーム24名が参加。プレゼンテーションのあと、中央の大スクリーンに作品を映し出してみんなで鑑賞するというスタイル。

 グランプリは沖縄高専の“Numeric”チーム。準グランプリは愛知工業大学名電高校の“情報デザイン部”チーム、3位は静岡県立伊東高校城ヶ崎分校の“アレックス”チーム。審査員特別賞は、女子美術大学付属高校の“たこもみ”チームが獲得した。

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↑グランプリを受賞した沖縄高専“Numeric”チームの正木彩花さん(3年、写真左)と久松航平さん(3年、写真右)。作品名は『スポーツのすゝめ”』。 ↑主人公が姿の見えないライバルと走り高跳びで競い合うストーリー。3DCGを2Dアニメのように見せるタッチ(トゥーンシェーディング)が印象的だった。
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↑“情報デザイン部”チームの作品『various』は、ミクロの世界で微生物がスポーツする様を描く。微生物の造形や動きがかわいらしいのに加え、パステルっぽい色使いやアンビエントなBGMなど、世界観が美しく、つくり込みが素晴らしかった。 ↑“アレックス”チームの『ANNIE』は、主人公の女の子が連れて行かれた別世界でスポーツで勝負し、自分の家に戻るまでを描いた物語。過去の同部門では類を見ない、ゴステイストな手描きイラストがいい味を出していた。

 過去何度かパソコン甲子園を取材してきたが、特に今年は映像作品として引き込まれるような映像が揃っていて、審査員の遠藤も「史上まれに見る断トツの充実ぶり」と絶賛するほど。

 その中でも入選した4チームは、作り込みのていねいさが際立っていた。林氏は「今回は入選の4作品がスパっと決まった。ほかのチームはとりあえずできたところで終わった印象を受けたけど、入選したチームはそこがスタートラインで、ブラッシュアップに力を入れているのが伝わってきた」と語る。

 高木氏は、「上位4作品は愛情を持って作り込んでいる。最高だったのは『スポーツのすゝめ』で、ちょっとした映画を見せられたぐらいに気持ちが動いた。彼らに技術的な質問をしてみると、ていねいさが伝わってきた」と感想をコメントしていた。

新設のモバイル部門も沖縄高専が奪取!

 モバイル部門は、1チーム3名でAndroidアプリを制作し、その魅力を会場にアピールするという競技。企画、プログラミング、デザイン、プレゼンなど多岐にわたる才能が求められる、陸上の五種競技のような過酷さを持っている。

 こちらも“スポーツ”がテーマ。身近な運動をサポートするアプリを作ったり、スマートフォンをからめた、まったく新しいスポーツを自分たちで作り出したりと、いくつかのアプローチが見られた。

パソコン甲子園2012
↑モバイル部門の本選には8チーム24名が参加。ステージでのプレゼンのあと、展示ブースで来場者に解説するという2段構えで望む。

 グランプリは、沖縄高専の“フレッシュクオリティ”チーム。沖縄高専はデジタルコンテンツ部門に次いで2冠を達成した。準グランプリは富山高校の“T-skynet”チーム、3位は久留米工業高専の“くるメン!!”チーム、審査員特別賞は長野県松本工業高校の“チーム「絆」”チームが受賞した。

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↑沖縄高専“フレッシュクオリティ”チームの照屋大地さん(3年、写真左)、呉屋寛裕さん(3年、写真中央)、西原希咲さん(2年、写真右)。アプリ名は『RUN RUN RUN ♪』。 ↑“フレッシュクオリティ”チームは、ランニングをサポートするアプリ。ユーザーの練習量に合わせてアバターが変化したり、ライバル登録したほかのユーザーと走行距離で勝負できるなど、やる気を維持する仕組みを取り入れたアプリ。
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↑“T-skynet”チームの『Response Timer』は、ランプが光った部分をタッチすると得点が入る反射神経ゲーム。ランプの制御や得点の管理にAndroidアプリを使っている。外部ハードを使うのがユニーク。 ↑“くるメン!!”チームの『Dash for 奪取』は、2人でネットワーク対戦する陣取りゲーム。Android端末を振りながら動き回ると、その軌跡をGPSが拾って仮想の地図上に色が塗られる。塗り替えを繰り返して、最終的にどちらが多く確保したかで勝敗を決めるというゲーム。

 モバイル部門は、昨年の試験的な導入(事務局招待の6チームが参加)を経て、今年から正式種目に昇格。過去10年間やってきたプログラミングやデジタルコンテンツの部門では、勝つためのノウハウが学校ごとにたまってきているが、まだ若いモバイル部門は手探りな部分も多かったようだ。

 審査員の高木氏からは「まだジャンルが成熟していない。昔のデジタルコンテンツ部門も何をやったらいいかわからずに“ツールに使われている”状態だったが、3年前ぐらいから大きく変わってきた。」と、次大会への期待が語られた。

「大人が考えつかない驚くようなアイデアがなかった。正直、“グランプリなし”という選択肢もあり得たが、その中でもアバターが成長するなどの要素をソツなく盛り込んだ沖縄高専が選ばれた」と、遠藤。

 筧先生は、「プレゼンやブース展示で、自分たちが何を作ったのか、何ができるアプリなのかをすぱっと言えると、作品をもっとアピールできると思う。制作に苦労しているのはわかるけど、それは後回しで、おもしろさを伝えるのが第一」とアドバイスする。

 林氏もプレゼンについて「みんな“続きはブースで”という風に振っていたのが残念だった。ステージ上だけで引きつけられなかったら、ブースも見に来てくれないぐらいの覚悟でやらなければいけない」と指摘。「プレゼン、プログラミング、企画など、最初にどんな人材をチームに入れるかというとこから競技は始まっている」と参加者を奮い立たせていた。

パソコン甲子園2012
パソコン甲子園2012
↑いちまいの絵CG部門は、本選前に審査が終了。優秀賞は開成高校の金井啓太さん(3年)が描いた『Sporty Ladybugs』。野球やバスケのコートのように描かれた水彩用パレットの上を、ボール柄のてんとう虫が遊んでいるというファンタジックな作品。

大いに盛り上がったパソコン甲子園2012

 筆者的が取材した範囲で印象に残ったのは、モバイル部門に参加した久留米高専の生徒が、沖縄高専に負けて悔しがっていたということ。同じ高専としてライバル視していて今まで勝ってきたのに、今年は2部門でグランプリを奪われてしまったのが心残りだったようだ。

パソコン甲子園2012
↑学校同士で交流できるレセプションも毎年用意されている。ここで知り合って、SNSやTwitterでつながって仲良くなるという流れもあるようだ。

 参加する高校生にとっては、副賞も魅力かもしれない。グランプリを獲得すれば、30万円の奨学金、30kgの米俵などが進呈される。準グランプリは20万円、3位と特別賞は10万円。高校の授業や部活でパソコンに触れているなら、ぜひ出場してその実力を試さない手はない。今年のログはUSTREAMに残ってるので、来年参加したいという人は要チェック!

■関連サイト
パソコン甲子園2012
パソコン甲子園Ustream
 

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